文化講座
身近な里山[Ⅰ]理想の里山
中部地方は里山の宝庫であると私は考えます。
里山の活動をするに適した候補地がたくさんあって、持山を提供していただける人があったり、自治体で歓迎していただけるところがあれば、今日からでも里山の活動をはじめることができます。
里山の活動をするにあたっての理想として、三つほどの条件があります。
- .都市を感じさせない自然があること
- 人々の暮らしの場であること
- 地権者(持主)が好意をもって提供してくれること
そして、里山づくりを行うあたり、さらに三つほどの条件が必要になります。
- .場所ごとの目的をはっきりすること
- 参加者の意識レベルを高めること
- 将来までの継続性をもたせること
その上で、もう少し細かな約束ごとを述べておきます。
- 里の人が大切にしている伝統を崩さないこと
- その里にマッチしない構造物(建築物、看板など)を設置しないこと
- 地元の方々との交流を活発にすること
- 許可を得ることなく採集などをしないこと
少し窮屈な印象を与えるかもしれませんが、里山が、単なる流行として取り上げられるに終わることなく、あるいは低レベルな里山づくりが行われて里が俗化地することのないようにするためには、このような最低限の約束事を大切にしながら、
- 自然を残し
- 伝統文化を残し
- 心に残る
[里山づくり]を提唱していく必要があると考えています。
平成の期に入ってから、日本にもアウトドアの時代がやってきました。
キャンプ場をはじめとする野外施設が多く出現し、それにともなって急激なアウトドア志向者の増加がみられたものです。
アウトドアブームと呼ばれたその現象は、今ではすっかり鎮静化して、平成初年度頃の水準にまで下がってきています。
利用者が減少したということだけでしたら、いずれまた本格的な時代を迎える時が来ると思いますが、問題は、アウトドアブームというせっかくの時代に、人々が自然に親しむチャンスを「人と自然の文化的な何か」として残せなかったことにあります。その原因は簡単です。
日本のアウトドアは、国際的なアウトドアの最低原則である
- ネイチャー・キープ
- クリーン・キープ
- サイレント・キープ
が守られていないからです。
都会の人が、都会生活の憂さを晴らすための里山づくりに警鐘を鳴らしておきます。