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マモさんの里山講座

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

身近な里山[Ⅱ]里山の一例

中央自動車道の恵那インターチェンジを出て、 左折して30分程行ったところに、飯地町(いいじちょう) という小さな町があります。そこは、まさに里山です。
恵那インターチェンジから5分程で木曽川に架かる笠置橋(かさぎばし)という橋を渡ります。
笠置橋から5km程の間を木曽川に沿って西へ走るときの、その何とものどかな光景。木曽川から別れて急な山道を6km程走って飯地町へ向かうときに、ところどころに目にする栃久保(とちくぼ)、烏帽子岩(えぼしいわ)、福原尾(ふくわらび)などという地名。それらを目にしただけでも、そこには里山だと直感的にそう思います。

飯地町は、木曽川岸から標高差約400mを一気に登った、 標高約600mの台地状の町です。台地状の地形は天に近く、そういうところは、降り注ぐような星空に出会うことがあります。
飯地町には、いわゆる名勝や旧跡地といった観光要素はほとんどなく、あるといえば飾り気のないキャンプ場が夏場に開かれる程度です。平凡な山並みと、洞々に点在する家々、それに家の周りに広がる田畑のみが飯地町という里を構成しています。

幾度となく訪れたこの里で、ある時、ふと気付いた事があります。車で走る道という道に"四つ辻"というものが無いことを。ほんのささいなことかも知れませんが、四つ辻交叉点というのは、街区を整備したことによって生じた開発の証のようなものです。

自然地形をそのまま利用しようとしますと、二又、つまり三叉路の別れ道が自然に出来上がります。 このような小さな発見が里山の楽しみを倍加させてくれるものだと、自分自身に感心したことがあります。
6月初旬のある日、軽トラック用につくられた田んぼ道を歩いていると、丸まった背中に背負い式の草刈機を操って、畦の草刈りをしているおばさんに出合いました。エンジン音のために声を出さずに頭だけを下げると、わざわざエンジンを止めて「こんにちは」と返してくれた。

「どこから、えも(どこから、何をしに来たの?という意味だそうです)」というやわらかな方言に答えると、ちょうど一服するから家へ来ないかという誘いを受け、ありがたく家へ上がらさせていただくことにしました。「神経痛でヨー」というおじいさんも笑顔で迎えてくれました。

「長男は東京、次男は外国、娘二人はとっくに嫁いで、家にはばあさんと猫だけがいる」そうで、「田んぼは、ガマな(たくさんの)草で!」。
そんな話を聞きながら、昼食までご馳走になり、とうとう3時のお茶まで長居してしまいました。「草刈りなら、街の衆にボランティアを頼めば来てくれますよ」という私の提案に「"ポ"ランティアかね」といって、その後の話は続きませんでした。
帰り道に、湿地や森の様子を覗いて見ましたが、"荒れている"という感想でした。

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