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インターネット公開文化講座

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中国茶

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

茶の味は水が引き出す

美味しい茶の味は水が命。中国故事、伝説から水の大切さを伝えるものを紹介する。中国十大銘茶に上げられる緑茶の龍井,黄山毛峰に纏わる伝説は水の重要さを伝える。

中国の茶聖陸羽は「茶経」で、水について説く。陸羽が如何に水を鑑定する味覚を持っていたかを伝える故事がある「煎茶水記」。

陸羽を尊敬していた李季卿が揚子江の天下の名水、南零水でお茶を点てて貰おうと思った。部下に南零水を舟で汲みに行かせた。瓶に入れて持ち帰った水を陸羽は汲み「この水は揚子江の水だが、南零水ではない」。そして、瓶の半分の水を捨て、その水を「南零水だ」と言ったそうだ。水を汲みに言った部下は「南零水を汲んだ帰り、舟が揺れたために半分がこぼれたので、岸辺の水を汲み足した」と謝った。つまり、陸羽は水の味を聞き分けたと言うことになる。しかし、瓶の中の水は揺れてミックスした可能性もある。オーバーに思えるが陸羽の味覚の鋭さを語ると言えよう。

龍井茶は虎ホウ泉と呼ばれる水で点てると色も香も素晴らしくなると言う。この虎ホウ泉は二人の兄弟が杭州の虎ホウに来た時、飲み水に不自由をした。ある夏、日照りで飲み水が干上がった。そこで、二人の兄弟は南岳衡山にある「童子泉」を杭州に移そうと二頭の虎となって移したと言う。それゆえに、虎が掘った泉として虎ホウ泉と呼ばれるようになったのだそうだ。今でも、虎ホウの茶室で、虎ホウ泉で点てた龍井茶が飲ませてもらえるそうだ。

黄山毛峰は黄山の泉水で点てると白い蓮の花のような輪が空中に上昇すると言う。その花のような輪は雲霧に溶け、熱気が散ると微香が漂うそうだ。ただし、黄山の泉水を用いないと白い蓮の花は現れないのだ。その例として、太平県知事が黄山毛峰を皇帝に献上し、その蓮の花の出現を見せて、ごまをすろうとした。しかし、知事は黄山の泉水を用いなかったために蓮の花は出現せず、献茶で恥をかいたと言う。

陸羽、龍井茶、毛峰黄山、いずれの故事、伝説も美味しい茶を点てようとすると良い茶葉に加えて、水がポイントとなることを示している。

また、碧螺春の伝説では、若い善良なる女の子、碧螺の愛と誠意によって銘茶になったと伝えられる。

いずれにしても、茶葉、水に加えて、慈しみの心が銘茶を味わうために必要のようだ。

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