文化講座
第8回:魚介類について学びます(魚介類博士になる!)
前シリーズでは「世界のとっておきグルメ」と題し、伊藤華づ枝が世界各国を食べ歩いて感動した料理や店をご紹介しました。
今シリーズでは、「お料理博士になろう!!」というテーマで、読者の皆様に食材や食卓の基礎知識をより詳しく学んで頂きます。米、小麦、野菜などの食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しています。
第8回目のテーマは「魚介類」。
日本の食卓には欠かせない魚介類の栄養素、種類、調理法等について、魚介類の美味しいレシピとともにご紹介します。
1. 魚介類とは?
魚介類とは、水中に住む水産動物の総称で、魚類、貝類、軟体動物(いか、たこ)、甲殻類(えび、かに)、棘皮類(うに、なまこ)など多くの種類があります。
漁港で収穫体験する筆者
手に持っているのは「なまこ」です
日本は四方を海に囲まれ、日本列島が寒流と暖流が行き交う優れた漁場であるため、古くから魚介類を多用してきました。魚介類は種類が多く、旬があり、新鮮なものを入手しやすく、消化もよいので多くの日本人に好まれ利用されてきました。魚介類は種類が豊富で、その成分や性質は非常に複雑です。例えば魚類は、タンパク質が約20%で、残り80%は主に水分と脂質で、脂質は魚種、季節、年齢、天然か養殖かなどにより、また同一個体内でも部位により大きく変動します。
調理法も豊富で、さしみにして生食したり、焼く、煮る、蒸すなどに加え、干物、塩蔵、燻製、練り製品など加工品も多いです。
~「オールフォト食材図鑑」より抜粋~
2. 旬
- 多くの魚介類は産卵期の前に活発にえさをとり、グリコーゲンや脂質とともに遊離アミノ酸などを多く蓄えます。この時期が旬にあたります。
- 産卵期を過ぎると産卵のために消耗するため味が落ちます。
3. 赤身魚と白身魚
赤身魚とは、血液中の赤血球に含まれる色素たんぱく質「ヘモグロビン」や筋肉色素たんぱく質「ミオグロビン」という赤い色素の量が多く、血合筋の多いものをさします。血合筋は普通、筋の表面、特に側線の真下に多く存在し、活発に遊離する魚は血合筋が発達しています。
白身魚は回遊しないので、赤身魚のように筋肉には色素たんぱく質の量が多く含まれておらず、身が白いのです。ちなみに鮭の赤い色は、ヘモグロビンやミオグロビンではなく、エビやカニにも含まれるアスタキサンチンによるものなので、白身魚に分類されます。
4. 構成たんぱく質
- 魚肉たんぱく質は、畜肉たんぱく質同様に筋原線維たんぱく質、筋漿たんぱく質および肉基質たんぱく質に大別されます。
- 魚肉:畜肉に比べ、筋原線維たんぱく質が多く肉基質たんぱく質が少ないため、軟らかく、刺身に出来ます。
- 魚介類に含まれている遊離アミノ酸の一種であるタウリンは、動脈硬化を防ぎ、血圧を下げるアミノ酸として注目されています。
5. 魚介類の脂質
魚の脂質は多価不飽和脂肪酸として、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が多く含まれていますが、コレステロールの抑制、心血管系患予防や治療に効果があります。
6. 魚のうまみ
魚のうまみは、グルタミン酸とイノシン酸の相乗作用が主体です。
7. 魚臭の原因
鮮度の低下とともに魚臭が強くなります。
この成分をトリメチルアミンといいます。
魚臭の除去方法
食塩、調味料、香辛料、牛乳等と調理すると魚臭を除去、抑制できます。
8. 魚の食べごろ
魚肉は一般に死後硬直前や硬直中の新鮮なものを食べますが、まぐろやふぐなどは、硬直期を過ぎて自己消化を始めたころが美味とされています。
魚の新鮮度チェック
- 目が澄んで生き生きとしている。
- 魚体全体がみずみずしく、光沢がある。
- 腹部がしまっていて、排泄口付近が汚れていない。
- えらが鮮紅色である。
- 筋肉に弾力がある。
- 不快な魚臭がない。
9. 生魚の調理法
刺身
刺身は、鮮度の高い生の魚介類を食べやすい形に切り整え、しょうゆなどの調味料をつけて食べる料理。
刺身(造り)
- 引き造り
- 刺身の中で最も基本的な切り方。まぐろやかつおなど、ねっとりとした口当たりを賞味する
左上から時計回りに中トロ・赤身・真鯛・カンパチ
- 細造り
- 筋の多い魚を造るときに用いられます
アオリイカの細作り・梅肉仕立て
- 薄造り
- フグ、スズキ、平目、カレイなどの白身魚のお造りによく使う方法
- たたき
- 生きの良い魚を細かく切って、薬味などと一緒に混ぜて盛りつけます。
細かくたたき切ることが本来の意味です
アジのたたき・磯辺巻き
~伊藤華づ枝作~
酢じめ
魚の下ごしらえの方法で塩でしめてから酢に浸すことによって、魚の味やテクスチャーが向上するとともに保存がききます。
焼き鯖ずし
サバを酢じめにしてから焼いて使用した棒寿司
~伊藤華づ枝作~
塩じめ
魚肉に食塩を加えてよくすり混ぜると、弾力を形成することをすわりの現象といいます。この現象を利用した料理がはんぺんです。
はんぺんのルーツ
はんぺん:昔「半片」「半平」などと記されていました。
魚のすり身をお椀のフタで半円形にかたどって作られたので、はんぺんと言われた、料理人の半平が魚のすり身でやわらかな料理を作ったからその人の名をとってはんぺんと名づけられたなど、様々な説が残っています。
はんぺんやちくわ(魚肉練り製品)
10. 魚の調理法
煮魚の調理法
- 主としてしょうゆで味付けします。青皮魚や脂肪の多い魚は、味噌煮などにもします。
- 魚のエキス成分を煮汁に溶出するのを防ぐため、煮汁の量を少なくし、加熱も短時間で行います。
- 魚のエキス成分の溶出を防ぐため、煮汁を沸騰させてから魚を入れます。
- 落し蓋をすると、煮崩れ、調味のムラを防ぐことができます。
- 煮汁に加えるしょうが、しょうゆ、味噌、みりん、酒なども魚臭を抑える効果があります。
~伊藤華づ枝作~
焼き魚の調理法
- 高温で加熱することによって、適度の焦げと香ばしい香りを生じ、魚臭を消去します。
- 強火の遠火がよいとされています。均一な強い火力で、熱源とは一定の距離があったほうがよいでしょう。
アジを串打ちして塩焼きしたもの
~伊藤華づ枝作~
魚介類を使用した料理~すべて伊藤華づ枝作~
とり貝とうどのしょうがソースがけ
イカとセロリのピリ辛炒め
アサリと春野菜のペペロンチーノ
カニのかき卵スープ
カツオの手こね寿司
アジの南蛮漬け
サワラのアクアパッツァ
タコの柚子こしょうサラダ
マグロのモロヘイヤ和え
魚介類を使用した加工品
煮干し
小アジのみりん干し
するめ
魚介類を使ったおいしいレシピ
ヒラメの九条ネギとホタルイカの熱々ソースかけ
エネルギー193kcal、たんぱく質21.8g、脂質7.1g、塩分2.3g(1人分)
材料 | 2人分 | |
---|---|---|
ヒラメ切り身(骨付き・ぶつ切り)1切れ100g | 2切れ | |
A | 塩 | 小さじ1/2 |
酒 | 大さじ1 | |
B | 九条ネギ(白い部分・斜め切り) | 20g |
ショウガ(薄切り) | 10g | |
C | 酒 | 大さじ2 |
水 | 100ml | |
D | パプリカ(2色あると良い・赤・黄など・せん切り) | 15g |
九条ネギ(青い部分・小口輪切り) | 30g | |
油 | 大さじ1~2 | |
ゴマ油 | 大さじ1/2 | |
ショウガ(みじん切り) | 大さじ1(5g分) | |
E | 水 | 50ml |
オイスターソース | 大さじ1~1・1/2 | |
ホタルイカ(ボイルしたもの) | 10尾(70g) |
作り方
- ヒラメ(他の魚でも可)にAをふりかけ、10分程おいて下味をつけます。
- Bを平鍋に並べ、Cを入れてその上に1.をのせます。
- 2.を沸騰させ、中火でフタをして魚に火を通します(10分程蒸し煮します)。
- 器に3.とDを盛ります。
- フライパンに油とゴマ油を入れ、みじん切りのショウガをじんわりと香りが立つまで炒め、Eを加えます。目とカラス口を取ったホタルイカも加え、ソースを作ります。
- 熱々の5.を、4.の上からかけます。
鯛めし
エネルギー444kcal、たんぱく質17.2g、脂質6.7g、塩分1.9g(1人分)
材料 | 4人分(実習分量) | |
---|---|---|
鯛の切り身 | 200g(100g×2切れ) | |
A | 塩 | 小さじ1/2 |
酒 | 大さじ1 | |
油あげ(7cm角) | 3枚 | |
B | しょうゆ | 大さじ1 |
酒 | 大さじ2 | |
みりん | 大さじ1・1/2 | |
塩 | 小さじ1/3~1/2 | |
米 | 2カップ | |
昆布水 | 600ml | |
桜花の塩漬け(あれば) | 適量 | |
木の芽 | 適量 |
作り方
- 鯛に(A)をふり、30分おきます。
- 油あげは熱湯で油抜きをし、冷めたら細かく切り、しっかりと水気をしぼり、(B)を混ぜます。
- 1.の鯛はペーパータオルで水気をふき取り、熱したフライパンに少し油(分量外)を敷き、皮目から中火でこんがり焼きます。
- 米に昆布水を入れ、1時間程浸水してから、2.と3.をのせて炊きます。
- 4.が炊き上がったら鯛を取り出し、皮と骨を取って細かくして混ぜ合わせます。
- 器に盛り、あれば塩漬けした桜の花と木の芽を添えます。
エビかつ
エネルギー170kcal、たんぱく質9.2g、脂質9.1g、塩分1.0g(1コ分)
材料 | 4人分・12コ分 (実習分量) |
2人分・6コ分 (参考分量) |
|
---|---|---|---|
エビ(殻付き) | 560g | 280g | |
A | 酒 | 大さじ2 | 大さじ1 |
塩 | 適宜 | 適宜 | |
B | 卵白 | 1コ分 | 1/2コ分 |
ドライパン粉 | 大さじ8 | 大さじ4 | |
塩 | 小さじ1/2 | 小さじ1/4 | |
牛乳 | 大さじ2 | 大さじ1 | |
白こしょう | 少々 | 少々 | |
片栗粉 | 大さじ4~5 | 大さじ2~3 | |
玉ねぎ | 1/2コ(120g) | 1/4コ(60g) | |
サラダ油 | 適宜 | 適宜 | |
薄力粉 | 適宜 | 適宜 | |
溶き卵 | 適宜 | 適宜 | |
パン粉 | 適宜 | 適宜 | |
揚げ油 | 適宜 | 適宜 | |
キャベツ | 200g | 100g | |
オクラ | 8本 | 4本 | |
レモン | 1/2コ | 1/4コ | |
さくらんぼ | 適量 | 適量 | |
ソース | |||
C | 水 | 80ml | 50ml |
トマトケチャップ | 大さじ4 | 大さじ2 | |
ウスターソース | 大さじ1・1/2 | 小さじ2 | |
固形スープの素(刻む) | 1/8コ | 少々 | |
塩 | 少々 | 少々 | |
バター | 10g | 5g |
作り方
- エビの殻をむき、背を開いて背ワタを取ります。(A)でよくもんで洗い流し、ペーパータオルで水気を取ります。半量は1尾を6等分程度のぶつ切りにし、残りは粘りが出る程度まで細かくたたきます。ボウルに入れ、(B)を加えて混ぜます。
- 玉ねぎはみじん切りにし、サラダ油でしんなりするまで炒めます。
- 1.に2.を入れ、混ぜ合わせます。
- バットに12等分(2人分は6等分)にし、小判型に形作り、薄力粉、溶き卵、パン粉の順に衣を付けて180℃の油で揚げます。
- 小鍋に(C)を入れて煮つめ、塩を加え、火を止めてからバターを入れてソースを作ります。
- 器にソースを敷いて4.を盛り、せん切りにしたキャベツと茹でたオクラ、レモン、果物を添えます。
※付け合わせの野菜には、お好みでマヨネーズやドレッシングをかけます
サーモンのリエット
エネルギー184kcal、たんぱく質10.2g、脂質11.3g、塩分1.1g(6人分としたときの1人分)
材料 | 4~6人分 | |
---|---|---|
スモークサーモン | 60g | |
A | 水 | 70ml |
白ワイン | 50ml | |
セロリの葉 | 少々 | |
生鮭(加熱用・アトランティックサーモンなど) | 160g | |
B | クリームチーズ | 40g |
バター(有塩・室温) | 30g | |
新玉ネギ(みじん切り) | 小さじ1 | |
ケッパー(あれば・みじん切り) | 小さじ1 | |
レモン汁 | 大さじ1・1/2 | |
塩 | 小さじ1/3 | |
白こしょう | 少々 | |
グリーンアスパラガス | 4本 | |
ロメインレタス | 2枚 | |
ルッコラ | 適量 | |
セロリ(スジを取って棒状に切る) | 40g | |
ラディッシュ | 4個 | |
フランスパン | 4切れ |
作り方
- スモークサーモンは細かく刻みます。
- 鍋にAを入れ、4~5切れに切った生鮭を入れて蒸し煮します。
- 2.をザルに上げて汁気を切り、鮭の皮と骨を取って細かくほぐします。
- 大きめのボウルにBを入れ、泡立て器で練り混ぜ、1.と3.を加えてしっかり混ぜます。
- アスパラは色よく茹でます。ロメインレタスは食べやすい大きさに切ります。ルッコラは半分の長さに切ります。
- 小鉢に4.を盛り、野菜やパンを添えます。