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骨董で贋作をつかまないシリーズ

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

自分が納得できないものは買うな

古美術、骨董の勉強の仕方にはいろいろあります。今までにたくさんの方々の買い方を見てまいりましたが、いろいろな本をたくさん読まれてから購入する方、どんどん買うことによって勉強する方、友人の先輩についてきてもらってアドバイスしてもらいながら買う方、私の学院で勉強してから買う方などさまざまです。

私は18歳から古美術・骨董に親しんできましたが、どちらかというと自分がこれはいいなと思った分野にかなり集中するタイプのように思います。そして書籍や実際の勉強をある程度済ませると、その勉強過程で気がついた次ぎの美術品のジャンルに興味が移るという傾向があるようです。それが今まで続き、いろいろな方向に興味が移りました。その間、贋作を買うのはいやですから、徹底して勉強します。そして長い間かかって得た結論は、自分が感動したり、欲しいなぁと素直に思う品物を買うということ、これに尽きます。当たり前のように思われることなのですが、これがなかなか出来ないのが古美術・骨董の不思議なところなのです。
美というものの見方については前にお話いたしましたが、多くの美しいとされている作品をできるだけたくさん見ることです。そのなかから自分だったらこれが一番欲しいと思う作品を毎回考えることです。展覧会などを見た後に、1点だけあの中から買えるとしたら、どれを買うだろうかと考えることです。実際は博物館に展示してある作品は買えないのが原則ですが、そう考える。それを毎回繰り返していると、自分の好きな作品が自然にわかってきます。それが美意識を育てる唯一の方法といえます。

ですから今回のタイトル、これは非常に大切なアドバイスなのです。私もずいぶんと昔のことになりますが、東京銀座に店を出している古美術商の友人から聞かされた話です。何かを買うときに、1箇所でも自分がおかしいと思う点があったら買ってはならないと言われました。ちょっとおかしいなと思っても、中にはこういうものもあるかもしれないといい方向に解釈してしまう場合です。
どうしても欲しいと「あばたも笑窪」で、良く見えてしまいます。またいい方向に考えてしまいます。欲得がらみの場合も同じです。これはきっといいものに違いないと思うと、冷静さを欠き落とし穴にはまってしまいます。ですからそれと同時に疑う心も必要です。疑うと同時に、そこにはある程度の鑑定知識も必要となります。

また業者市で品物を競っているときに、名のある業者さんがセリに参加してきた場合など、これはいいものだからあの有名な業者さんが買いに参加してきたのだから、自分も買ってみようなどと「相乗り」を考える場合がそれに当たります。人間は善意の方に考えがちですが、これには注意しろとその友人は教えてくれました。 仲間と組んで買うポーズを見せて相手に買わせるテクニックもあるからです。買うときは自分に妥協してはいけないということです。
好きではないものを買ってはいけません。あとで損するのは自分だからです。欲得がからむので、強い自制心が必要となるのです。

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