文化講座
やきものの鑑定入門4 『さまざまな形、特徴をみる習慣をつける』
やきものに共通しているものは「口」と「底」です。このもっとも見やすい箇所である口と底、すなはち高台というところの形の変化を、時代の変化の中にも見いだすことができます。
須恵器以後の比較的一般的に入手できる器種である「碗」や「山茶碗」にみられる高台の特徴を考えてみたいと思います。
碗型高台という底の台のすがたの特徴は次のように変化します。
- 【奈良時代の特徴】
- 全体的に丸みをおびた美しいふくよかな感じを出しているのが奈良時代の作品に多くみられます。この高台の形にもそれがよくあらわれていて、高台そのものも丸みをだし、優雅さを感じさせます。高台の高いものは比較的身分の高い人たちが使ったものに多くみられます。
- 【平安時代の特徴】
- 平安時代は中国や朝鮮半島の影響から脱して、日本独自の文化を形成しようという、いわゆる「国風文化」の形成期になります。しかし奈良時代の影響は大きく、全体的には優美なふっくらした感じは変わりませんが高台にはシャープな感じが見て取れるようになります。直線と曲線のバランスとでもいいましょうか、優美でいながら軽やかな風情があります。
- 【鎌倉時代の特徴】
- 質実剛健の鎌倉武士が築いた文化が鎌倉時代で、平安の優美さは次第になくなってゆきます。武士の生き様のように現実的で合理的な美意識に変わってゆきますので、高台の形も装飾的な雰囲気がなくなってゆきます。
- 【室町時代の特徴】
- 鎌倉時代後期から戦乱の時代に入りますが、最も戦乱に明け暮れる室町時代から戦国時代までは世情が乱れて大変な時代でした。やきものの流れは農業の発展とともに一般農民を中心とした庶民が対象となるものが多くなり、従って作行きも粗雑な傾向になります。高台も省略されるものもあらわれ、時代性をよく表しています。しかし室町時代といいましても茶道の茶碗などの影響などで、必ずしも一定のものではありません。
- 【江戸時代の特徴】
- 桃山後期から江戸時代にわたってのものには、図のように下にすぼまった形が主流になります。特に伊万里磁器には皿もふくめてこうした高台のすがたが主流になります。しかし茶道の茶碗など、土物には例外があります。
まずその時代の形の大まかな特徴をつかみ、それを手がかりに例外などの細部をつめるという作業になります。