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古美術・骨董の愉しみ方

日本骨董学院・学院長
東洋陶磁学会・会員
日本古美術保存協会・専務理事 細矢 隆男

いま外人たちが注目する日本の『骨董』1

今回は少し視点を変えて外人たちが注目する日本の美術や骨董について考えて見ましょう。もともと日本の古美術が外人たちに高く評価されたのは、浮世絵や仏像、武具甲冑、根付、印籠といったジャンルからでした。あまり知られていないことではありますが、アールヌーボーの旗手であるフランスのガレなどに、実は非常に強く影響を与えたのは日本の真葛香山などの陶芸家たちでした。
真葛香山は日本の陶芸には珍しく、鳥や蟹、動物の彫刻を陶磁器の壷の上や側面にきれいに絵付けして貼ったのです。すなはち今までの日本にはあまり類例を見ない美しい立体彫刻を陶磁器の世界に持ち込んだのでした。まったく斬新ともいえる新しい作風を考え出したのです。

こうした彼の新しい作風が海外で認められて、ヨーロッパで開催された万国博覧会で評価が上がりはじめました。そうした海外での日本美術の評価と浮世絵が評価される時期は時間的にも極めて近いのです。ともに1880年代ということになります。

伊万里の磁器が海外で評価を高めるのは、17世紀の中ごろと少し早いのですが、伊万里は中国陶磁器の延長線上で人気を博しています。柿右衛門などのように、かつて中国陶磁器では見られなかった独自の空間処理や繊細な色絵などで評価を高めた場合もありました。最近ではその当時と同じように、日本の古美術を見直そうという動きが出てきてます。数年前にニューヨークのメトロポリタン美術館で桃山時代を中心とした「織部展」が開催されてから、織部に対する人気がアメリカ人の間で急速に高まってきているといいます。

16世紀から17世紀にかけて織部のような斬新な文様が日本では流行しますが、アメリカのように歴史が200年そこそこの国にとっては驚くべきことであり、大変うらやましいかぎりなのです。

国内事情では美濃のやきものは、もう10数年前から上がるといわれてきましたが、未だ大きな値動きは見られませんが、最近やや上昇傾向に転じたかとおもわれます。もっとも渋い好みといわれる六古窯の作品も全体的に値上がりに転じてきているとも思われます。愛知県渥美半島で焼成された「渥美」や石川県能登半島先端の珠洲市近辺で焼成された「珠洲」などは特に品薄であるだけに、いつ急上昇してもおかしくありません。

外人の注目する日本の骨董品は、1番が浮世絵、2番が根付 3番印籠 4武具(刀・鍔・兜・鎧)といったところでしょうか。これからですと武具がおもしろいと思います。

浮世絵の人気については、有名なところではゴッホ、セザンヌ、ルノワール、モネ、マネなどの後期印象派の画家たちに多大な、というより圧倒的な影響を与えたところから、ヨーロッパでは非常に評価が高いのです。特に広重や英泉、写楽、北斎、歌麿、国貞などの人気が高いようです。したがって有名なオークションにこうした作家たちの作品の中から程度のよいものが出ますと、驚くような値段で落札されます。特に写楽の評価はずば抜けて高く、世界の3大肖像画家(ベラスケス・レンブラント・写楽)として評価されているほどなのです。

根付と印籠に付きましては、浮世絵の人気や伊万里焼などの豪華な作品が人気を博すとともに、ジャポニズムの一環で人気が高まった作品群といえます。

その緻密な仕事振りがヨーロッパにおいて王侯貴族たちから驚異の目で見られ、かつ高い評価を得たのです。今でも根付、印籠については世界的なコレクションがヨーロッパやアメリカにあり、多くの外人コレクターや研究者によって愛好されています。

また最近では武具・甲冑はヨーロッパ人に特に強い人気があります。イギリスには「イギリス刀剣会」という日本刀の研究会があるほど高い人気があります。

鍔や刀装具・鎧兜も世界的に人気が高まり、多くの愛好家によって研究が進んでいます。黒澤明監督の映画作品やトム・クルーズ主演の「ラスト・サムライ」や、最近では「ハンニバル」の影響による人気の高まりも大きいと推測されます。

かれら外人たちはオークションを通じて日本の古美術を購入しますが、一番人気のサイトはE−BAYでしょう。今後ヤフーオークションから海外サイトに進出する日本の業者が多くなることが予想されます。

日本の古美術・骨董は以上述べてきたように、海外では大きな評価と実績を残してきています。19世紀の後期印象派やアールヌーボーに圧倒的な影響を与えてきたし、世界の美術に与えた影響も大変なものがあると思います。われわれ日本人だけが、海外での日本の評価を知らないのではないかと思うことがしばしばです。もっともっと日本人は自信をもって、われわれの先祖がなした偉業を知り、海外への日本の持つ底力を知らしめる必要があるのではないかと思うことしばしばです。

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