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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

北海道を鉄道で旅する(1)

誰もが一度は憧れる北の大地、北海道。アイヌの文化に触れたり、新鮮な海の幸に舌鼓を打ったり、溢れんばかりの大自然と戯れたり・・・。その楽しみ方は無限大です。

豊かな自然が待つ北海道(大沼公園から眺める駒ヶ岳)

今では手軽なパックツアーが多数出ていますので、さほど苦労しなくとも道内各地を巡ることができますが、ここはぜひ自らの手でプランを組みながら、誰にも真似のできない自分だけの旅をつくってみたいところです。そのとき、強力な助っ人となるのが、鉄道です。

北海道は広い。それは「内地」(=本州のことを北海道ではそう呼びます)の人間にとっても共通認識でしょうが、実際に訪れてみると、想像以上に広いことを体感します。たとえば、札幌から旭川までは、北海道の地図を大雑把に眺めているだけだとまあ1時間もあれば着いちゃうかな、とタカをくくりそうですが、実際には約130kmあります。これは名古屋から大津(滋賀県)までの距離に匹敵します。それから、函館から札幌まで。これも意外に近そうだと思いがちですが、約280km。名古屋から小田原(神奈川県)までと同じ程度の距離です。よく、レンタカーで道内を周遊する観光客の方が「なかなか目的地に着かなくて、観光もできず移動だけで旅が終わってしまった」と溜息をついていることがあります。「内地」の距離感では、狂いが生じるのです。
前置きが長くなりました。列車の長所は、移動の所要時間が読めることですから、綿密なプランを組むことで、無理なく、無駄なく、道内周遊を楽しめるはずです。それに、レンタカーなどで道内を移動するのに比べれば、移動の疲労は断然軽いですから、快適な旅を楽しむことができましょう。
札幌を起点に、稚内・旭川・網走・釧路・室蘭・函館へと各方面に特急列車が運転されており、スピーディーな移動が可能です。釧路へは夜行特急「まりも」の設定もあり、翌朝早くからの観光が楽しめます。

鉄道の旅ならではの味わいを楽しむためには、ぜひ特急から各駅停車に乗り継いでみてください。道内の鉄道路線は、最盛期に比べると半分以下に縮小されてしまいましたが、それでもローカル線で1両だけの列車に乗り継ぐと、ぐっと旅情が増します。特急に乗っていては気づかないような、小さな駅に止まり、アイヌ語に由来する独特の駅名に接するだけで、北の大地を旅している実感が湧いてきます。どこまでも広がる草原で、乳牛や馬が草を食んでいるようすが見られるのも、北海道ならではです。

のんびり旅が楽しめるのは各駅停車の魅力(根室本線・上尾幌)


アイヌ語が語源の駅名を眺めるのも北海道ならでは(宗谷本線・雄信内)

そして、ぜひ「最果て」をめざしてみたいもの。稚内や根室をめざす宗谷本線・根室本線の旅は、終点に近づくにつれて沿線の風景も寂莫としてきます。稚内の手前で一瞬だけ眺められる利尻島や、根室の手前で海岸沿いに見える落石岬の風景は、はるばる旅してきた疲れを吹っ飛ばしてくれる「絶景」です。そして到着する稚内・根室の町は、やはり最果てだけあって他の道内の町にはない雰囲気を持っています。たまには、こういう町で眠る夜があってもいいものです。

根室に着く手前で車窓から眺められる落石岬
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