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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第44回 鉄道好きなら一度は乗りたい! オーストラリアの鉄道(1)

日本人の海外旅行先として根強い人気を誇るオーストラリア。日本との時差が少なく、旅行しやすいことや、比較的治安が良いこともありますが、なにより独特の生態系による固有動物との遭遇、先住民族文化との出会いなど、旅人を惹きつける要素にあふれています。
そのオーストラリアに、鉄道好きが憧れる列車が走っています。大陸横断鉄道「インディアン・パシフィック」と大陸縦断鉄道「ザ・ガン」がそれです。広大な平原をひた走る列車の力強さは、日本では決して味わうことができません。日本とはスケールの違う汽車旅にご案内します。

まずは、「インディアン・パシフィック」に乗ってみましょう。この列車は、オーストラリアの南西に位置するパースと、首都シドニーとの間を3泊4日、約67時間かけて走ります。
パースは「世界で最も美しい都市」ともいわれ、スワン川沿いの市街地の夜景は一見の価値あり。そして「世界一孤立した都市」とも言われ、西はインド洋、東は広大な砂漠によって隔たれています。西オーストラリアは訪れる日本人も比較的少なく、「非日常」を味わうにはもってこいの町です。その町外れにあるイースト・パース(East Perth)駅が「インディアン・パシフィック」の始発駅。週2日しか発車しないので、運転日には注意が必要です。

イースト・パース駅で発車を待つシドニー行き「インディアン・パシフィック」

駅の窓口で大きな荷物を預けてチェックインし、いよいよホームに上がると、お目当ての「インディアン・パシフィック」が待っています。30両ほどもある長い編成で、この時点で日本とは桁が違います。
「インディアン・パシフィック」には、大きく分けて3種類の客車があります。一等個室寝台は「ゴールドカンガルー」と呼ばれます。二等車「レッドカンガルー」には個室寝台車と座席車があります。最も値の張る「ゴールドカンガルー」の場合、個室料金のほか車内での食事やラウンジカーでの飲み物も料金に含まれています。今回は、「ゴールドカンガルー」の旅をご紹介しましょう。

クルーの出迎えを受け、チケットを見せて部屋に案内してもらいます。部屋は、機能的なつくりで、思ったよりも広い印象。二人用の個室にはトイレとシャワーも完備されています。

軽快なBGMの流れるなか、イースト・パース駅を発車した列車は、パース市域を抜けると、放牧地の広がる平原へと駆け出していきます。そのころ、ラウンジカーに乗客が集められ、クルー主催のウェルカムパーティーが始まります。みんなで乾杯したあと、列車に関する簡単なレクチャーが行われます。もっとも、英語が聞き取れなくても、自室にあるメモ(毎日、その日のスケジュールが更新されて配布される)を、辞書を引きながら読み取れば、理解できるようになっています。

ラウンジカーでのウェルカムパーティー

レストランカーでの食事は、他の乗客と相席となりますが、ウェイターに案内されるままに着席すると、毎回、違う乗客と相席になるので、いろいろな人と話ができるのも楽しみです。片言の英語(というより単語を並べているだけですが)で会話をしているうち、誰もがこの列車に乗るのを「手段」ではなく「目的」としていることがわかってきます。外国人が多いのかと思いきや、意外にもオーストラリア人が多く、会社をリタイヤした人が、あえてゆっくりと旅をするために、と乗車しているようです。「狭い日本、そんなに急いで・・・」とよく言われますが、それは広いオーストラリアでも同じのようです。

夕日を平原の向こうに見送ると、明かりのない闇が車窓を支配し始めます。夜も更けたころに到着するのがカルグーリー。ゴールドラッシュに湧いた町で、今でも金鉱を採掘しています。ここで「オフトレインツアー」なるものが行われます。列車が給水などのために停車している間に、乗客が市内観光を楽しめるというもので、車内で申し込むことができます(別料金)。
駅前から観光バスに乗って、Super Pitと呼ばれる金鉱へ向かうと、深夜にもかかわらず採掘を行っている様子が見学できます。バスは、ゴールドラッシュのころに繁栄した町並みを一回りして駅に戻ります。こうでもないとなかなか訪れることのない町を、手軽に散策できるのはうれしい限りです。

カルグーリーで停車中の「インディアン・パシフィック」
金鉱の採掘が見学できる

列車に戻り、床に就きます。日本の寝台列車と比べて揺れも少なく、安眠できそうです。

(第45回につづく)

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