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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第38回 午後の汽車旅(1)

 この日は仕事だからと、あきらめていた週末。予定していた仕事が午前中で終わり、午後がふいに空いてしまった。そんなこともあるものです。せっかくの時間を有効に使ってみようではありませんか。
 今回からは、名古屋を起点に、午後からでも楽しめる鉄道の旅をご紹介していきます。遠くに行くだけが旅ではありません。

(1)東海道線の「終着駅」へ ~東海道線・美濃赤坂駅~

 東海道線というと、東京・名古屋・大阪を結ぶ大動脈のイメージが強く、鉄道の旅情とは無縁と思われがちです。しかし、そんな東海道線に乗って「終着駅」の旅情を味わいに出かけましょう。
 名古屋14時45分発(土曜・休日)の新快速で大垣に向かいます。30分ほどで大垣に着いたら、3番線ホームへ移動します。場所が少し分かりにくいですが、2番線・4番線のホームの米原方に切り欠けホームがあり、ここが3番線です。15時22分発の普通・美濃赤坂行きに乗り込みます。

大垣駅3番線から美濃赤坂行きに乗る

 さて、美濃赤坂ってどこだ?と思われる方もおられることでしょう。路線図を見ると、大垣から垂井・関ヶ原・米原方面へと向かう東海道線のほかに、まるで盲腸のように枝分かれしている路線が見つかりませんか。これも、れっきとした東海道線。とはいえ、運行はローカル線そのもので、この電車が実に2時間半ぶりの運転なのです。地元ではもっぱら「赤坂線」と呼ばれているようです。
 大垣を発車し、大垣車両区を横に見ると、まもなく南荒尾信号場に差し掛かります。ここは駅ではありませんが、垂井方面に向かう線路と、垂井を通らず北側に迂回しながら緩い勾配で関ヶ原に向かう線路、さらに美濃赤坂に向かう線路が分かれます。私たちの乗っている美濃赤坂行きは一番右の線路に入って行き、ほどなく荒尾に到着します。片面ホームだけの無人駅で、これまでとのギャップに驚きます。
 荒尾を出ると、車掌さんが回ってきて、乗車券を回収し始めます。終着の美濃赤坂も無人駅だからです。このあたり、東海道線とは思えないローカルさです。単線の線路をさらに進み、徐々に速度が遅くなって、15時28分、ゆっくりと終着・美濃赤坂に到着します。大垣からわずか6分のミニトリップです。

美濃赤坂に到着した電車

 美濃赤坂駅の構内は意外と広々としていますが、これは貨物列車の発着があるからで、この先も貨物専用の西濃鉄道の線路が続いています。北方にある金生山が石灰石の産地であり、ここから愛知県東海市の新日鐵名古屋工場へ製鉄原料である石灰石を現在も輸送しています。

木造の美濃赤坂駅駅舎

 木造の駅舎を後にし、少し歩くと、中山道にぶつかります。ちょうどこのあたりが中山道の赤坂宿であったところで、江戸日本橋から58番目の宿場で、ゆるやかに曲線となっている道やうだつのある家並みが往時の雰囲気を漂わせています。幕末、皇女和宮が降嫁となったとき、宿をとったのがこの赤坂であり、その際に多くの家が整えられたといいます。今でも、毎年11月の「中山道赤坂宿まつり」では、和宮降嫁の様子が再現され、当時を偲んでいます。
 東海道線に乗って中山道の宿場町を訪れるというのも妙な話ですが、東海道は宮(熱田)から海上を桑名へ向かってしまっています。岐阜から草津までは、東海道線は「中山道線」なのです。
 ひと通り散策を終えたら、再び駅に戻って、帰途に就きましょう。列車の本数が少ないので、事前に時刻は要チェックです。(土曜・休日ダイヤの場合、美濃赤坂発15:43・16:51などあり)

中山道赤坂宿のたたずまい
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