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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第45回 鉄道好きなら一度は乗りたい! オーストラリアの鉄道(2)

シドニー行き「インディアン・パシフィック」の旅2日目。モーニングコーヒーが部屋に配られるころ、眼を覚まし、窓の外を見ると、思わず絶句してしまうことでしょう。
「・・・・何も・・・ない!」

ナラボー平原の車窓

地平線まで見渡す限りの大平原。列車は、ナラボー平原をひた走っています。これこそ、「インディアン・パシフィック」ならではの風景といえます。砂漠気候の乾燥地帯で、灌木が時折見えるほかは、草がうっすらと生える程度の赤茶色の大地。30分経とうが、1時間、2時間経とうが、半日経とうが、どこまで行ってもほとんど変化のない景色。ここまで来ると、もはや「風景を眺める」という概念を超越して、地球の壮大さと対峙している感さえあります。

お昼ごろ、列車が小さな駅に停まります。クック(Cook)で、客扱いはしませんが、給水作業などでしばらく停車します。乗客も、列車の外に出て散策ができます。とはいえ、砂漠の真ん中。夏は40度を軽く超え、灼熱の世界です。そして、こんなところに駅があるのか、と思えるほどの無人地帯。なんでも、ここクックの人口は鉄道関係者の老夫婦が2人とのこと。日本ならさしずめ「秘境駅」として、鉄道ファンには重宝されそうです。
そして、このクックまでの478km区間が、世界最長の鉄道直線区間。名古屋駅を起点に考えると、山陽本線河内駅(広島県)までひたすら直線ということです。日本最長の直線区間が北海道・室蘭本線の沼ノ端~白老間(28.7km)ですから、まったく比になりません。運転士さんは退屈しないのか、気になります。

クックで停車

この「インディアン・パシフィック」、一等車「ゴールドカンガルー」に関して言えば、居住性はなかなか良く、2段ベッドの部屋も昼間はソファーとなり、夕食・朝食の間に係員がベッドの設営と撤収をやってくれます。全区間乗ると4日間住む「家」になりますから、狭いところに閉じ込められてしまっては苦しいですしね。シャワーのお湯も使い放題なので、日本の個室寝台のようにお湯の使える時間が限られているようなこともありません。

機能的なツイン部屋

クルーが親切なのもこの列車の特色で、困っていることは何でも相談にのってくれます。「インディアン・パシフィック」の旅を心から楽しんでもらおうという気持ちが乗客にも伝わってきます。オージーはやはり陽気な人が多く、乗客とも気さくに会話を交わして、仲間のような存在にも思えてきます。私たちが乗車したときには、折り紙を持参し、ラウンジカーで鶴を折って他の乗客やクルーに披露すると、いたく喜んでくれました。

クルーも陽気な人ばかり

私たちは、シドニーまで乗車せず、3日目の朝、途中のアデレードで下車しました。本当ならシドニーまで全線乗りたかったのですが、この次のスケジュールがあるからです。まだ鉄道の旅は終わりません。

(第46回につづく)

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