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知って得する鉄道旅行術

鉄道ライター/安城学園高校教諭
山盛 洋介

第29回 快速「ムーンライトながら」が大きく変わる

長年、JR東海道線の「夜の主役」として活躍し続けてきた、夜行快速「ムーンライトながら」(東京~大垣間)が、09年3月14日(土)のダイヤ改正により、毎日運転の定期列車としての歴史に幕を閉じ、臨時列車へ格下げになります。
かつては乗車券だけで乗れる普通列車として、新幹線の最終に乗り遅れたビジネスマンや格安旅行を楽しむ若者でにぎわった列車で、「大垣夜行」などの通称で親しまれてきました。96年からは特急型車両を使用した全車指定席の快速「ムーンライトながら」(以下「MLながら」と略)として運転されてきました。とりわけ、JR全線の快速・普通列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」の利用期間中には、格安に東京~名古屋・関西方面を移動できる列車として、連日満席状態になっており、根強い人気がありました。
しかし、新幹線のスピードアップや増発、さらに格安な夜行高速バスやツアーバスの台頭、安価で泊まれるビジネスホテルの増加もあり、「青春18きっぷ」の利用期間以外は乗客が決して多いとはいえず、人件費や運行コストなどの面を総合的に検討した結果、多客期のみ運転する臨時列車に格下げすることが決定されたものとみられます。

では、現在の「MLながら」とどう変わるのか、具体的にみていきます。

(1)運転日が限定されるので要確認
これまでは毎日運転されていましたが、3月14日(土)以降は設定された日以外は運転されません。時刻表などで事前に運転日を確認し、指定席券を確保したうえで乗車することになります。
なお、当面の運転日は、下り(大垣行き)が東京発3月14日~4月9日、上り(東京行き)が大垣発3月14日~4月10日です(なお、上下列車とも3月13日以前は現行通り運転)。

(2)ダイヤが大幅に変わり、停車駅削減
3月14日以降の臨時「MLながら」は、現行ダイヤよりも停車駅が大幅に減らされています。停車駅は、東京・品川・横浜・小田原(下りのみ)・沼津・静岡・浜松・豊橋(上りのみ)・名古屋・岐阜・大垣で、それ以外の駅には停車しません。これまで、尾張一宮・金山・大府・刈谷・安城・岡崎・蒲郡などで乗降されていた方はご注意ください。
運転時刻も変更されています。下りは東京23時10分発→名古屋5時25分着→大垣5時55分着、上りは大垣22時48分発→名古屋23時20分発→東京5時05分着となっています。

快速「ムーンライトながら」の新ダイヤ

(3)「青春18きっぷ」での利用法
運転時刻・停車駅の変更にともない、「青春18きっぷ」で「MLながら」に乗る場合の対応が若干変わることになります。
「青春18きっぷ」を利用し、深夜に旅行を開始する場合を考えます。この場合、0時を過ぎて日付が変わる駅までは普通乗車券を買い求め、その先の区間を「青春18きっぷ」利用にすると、「青春18きっぷ」の1日分を有効利用できます。
現行ダイヤでは、下り列車(東京発)では小田原(0:31発)が"日付変更駅"となりますから、乗車駅から小田原まで(東京からだと1,450円)の乗車券を、上り列車(大垣発)では大府(0:08発)が"日付変更駅"となりますから、乗車駅から大府まで(名古屋からだと320円の乗車券を別に買い求めれば良いことになります。
これが、改正後の新ダイヤでは、下りの日付変更駅は小田原(0:31発)で変わりないものの、上りでは停車駅削減の影響を受け、豊橋(0:17発)となります。例えば、名古屋から乗る場合、これまでは大府まで320円の追加出費で良かったものが、改正後は豊橋まで1,260円の乗車券が必要となり、大幅な負担増となります。もちろん、乗車には指定席券(510円。閑散期は310円)が必要となりますので、「青春18きっぷ」を使って、名古屋から東京まで「MLながら」に乗ると、「青春18きっぷ」1回分相当額(2,300円)と豊橋までの運賃(1,260円)、「MLながら」指定席料金(510円または310円)が必要となり、合計4,000円前後の出費になりますから、廉価化している夜行高速バスとそう大差がないともいえます。

以上が主な変更点ですので、ご利用の方はご注意ください。
ともあれ、寝台特急「富士・はやぶさ」の廃止とあわせ、愛知県内から定期運行の夜行列車は全廃となり、実に寂しいものです。

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