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インターネット公開文化講座

文化講座

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喫茶の話題

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

日本のグローカル文化と日本画家小山硬、陶芸家加藤景徳

グローカル文化はローカル性とグローバル性、つまり地域特性と国際性の両面を持っていることが重要だ。哲学者谷川徹三の言う特異性と普遍性を持った文化だ。
我が国の文化をローカル性の立場から見ると、四季折々の自然との共存、共鳴をしながら生まれたものが多い。日常生活の在り様そのものが文化的に育てられたのだ。それ故に日常茶飯の文化と呼べる。
代表は何と言っても日常茶飯を文化的に高めた喫茶の様式、茶の湯である。その極みが茶道なのだ。
日常茶飯に過ごす家にあって、絵画も陶磁器も生活環境、食文化を調えるためには不可欠のものだ。
私は家とはポルトガルのロドリゲスが「日本教会史」に記したような「市中の山居」を良しとする。「市中の山居」とは西行法師のような人里離れた庵ではなく、市中にあっても山居感が感ぜられる家をさす。
私は「市中の山居」に、習俗の中で生活をしていても脱俗感のある時間と空間で夢想や且坐喫茶するを楽しみにしている。

「市中の山居」に会っては、小山画伯の大和絵の伝統技法と滅筆表現による「気韻生動」に気品と尊厳ある「余情残心」漂う作品が必要だ。特に、利休ねずみを感ずるプラチナムグレイによる水墨調の作品が好きだ。水墨画の伝統を発展させた新しい水墨画の創造と言える。そこに、ローカル性とグローバル性有する絵画を感ずる。残念ながら私はまだ持っていないが空想して楽しんでいる。
陶芸家加藤景徳は、陶芸における日本的色彩の魔術師だ。勢い、ダイナミック、大胆さを感じさせる造形にあって繊細さが際立つところがたまらない。壺、茶花器、食器、オブジェいずれにあってもその感性がすばらしい。

岡倉天心が「茶の本」で指摘した「不完全性」の美、赤瀬川原平の日本美と言える「ハッとして、ドキッとする」一回性の緊張がある作品だ。
食器にあっては用の美を忘れていない。鉄釉によるステーキ皿は私の愛用品だ。
洋の東西いずれであっても使用可能な作品だ。つまり、グローカル性があるということになる。
小山硬、加藤景徳の両作家は創造意欲盛んであるが、自然界のワイルド食品、つまり、魚を釣り、鹿、イノシシ、ウサギ等をワイルドに食べるのが大好きだ。
獲物を炭火で焼きながら自然界や市中の山居で直心の会話と且坐喫茶する姿があればこそ、グローカル性を持って人間の心に訴える作品が生まれると判る。

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