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信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

リバティー・バランスを撃った男

最近NHK BS2(8月12日)で「リバティー・バランスを撃った男」を学生時代を思い出しながら久方ぶりに観た。当時、気が付かなかった面白さも認識した。
西部劇は米国の西部開拓時代の白人とインディアンとの対立、早撃ちや無法者の伝記物語、開拓農民と牧場主側との対立、開拓民の自由と市民社会の確立過程、南北戦争と米国統合過程等をテーマとする。

「リバティー・バランスを撃った男」では荒くれ西部の開発と市民社会成立過程での人間の表裏を話題とする。西部男でジョン ウェイン演ずる早撃ちトムとジェームス スチュワート扮する東部教養男の弁護士で西部市民社会発展を意欲するランスとの話。
荒くれ無法者軍団のボス、リバティー・バランス退治に伴う事実誤認と人間模様。
課題は、

  1. 無法者退治を武力ではなく法律で可能か
  2. 無法者の挑発に武力対決は不可避となることはないか
  3. 市民社会が武力挑発を受けた時、臆病、問題回避先送りではないための条件
  4. 教養と人間味
  5. 素朴、野生と人間味
  6. 荒くれ無法者や臆病者の軍団性
  7. 集団性の強がりと弱さ
  8. 歴史的事実や伝記物語の人間模様と表裏

暴力否定の弁護士で法律に基づく市民社会確立を目指す東部インテリー、ランスは無法者軍団を率いる早撃ちリバティー・バランスの挑発に人間的尊厳をかけて 臆病ではない人物として、武力対決をせざるお得なくなる。ピストルを用いた決闘をするがランス自身を含めて人々はランスが撃ち殺したと思う。

早撃ち無法者に勝った英雄ランスは町の代表者に選出されそうになる。しかし、ランスは武力で人殺しをしたことで、代表者になることを恥ずかしく思い辞退しようとする。
しかし、リバティー・バランスを本当に撃ち殺したのはトムでランスではないことをトムは密かに話す。聞いたランスは事実を公表せず、思いを込めて、その後、知事、上院議員となって町や地域の発展に努力する。

トムの死にランスは忙しい中をワシントンから急遽西部の町に戻る。不思議がる町の新聞記者や有力者に本当はトムがリバティー・バランスを撃ったことを語る。
しかし、歴史的事実よりランスの伝説的英雄出世物語の方が面白いと取り上げない。
ワシントンへ戻る汽車の中でランスは奥さんとなった元トムの思い人にトムの眠る町へ人間味を求めて帰ろうと語る。

市民社会確立と発展に努力するも、俗人の業は続き、新聞記者も商業主義に毒された。トムにあった素朴な人間味、無法時代にあった新聞人の命がけの正義感、使命感の消失に忘れていた人間味の重要さに気づいたのだ。
如何なる社会になろうとも素朴、教養と尊厳ある人間味は忘れないことだ。

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