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喫茶の話題

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

幸せ感

前回話題とした「葬送」で、画家ドラクロアが次のように述べる。ルネサンス期では「現実を超越した大きな力に対する信仰があった」。十八世紀、ドラクロア の時代は「物質的な幸福」「物質的な快楽」が基本となった。現代は、私から見ると、金欲、表面的親切を装う拝金主義となった。

本年9月11日を中心に長女の誘いで、1970年代の初めに2年以上滞在したカルホルニアに行った。

当時お世話になった日系二世の西川Juneさんとその次男夫妻のGerryとBetsyとでヨセミテ国立公園、サクラメントのオールドタウン、サンフランシスコ(SF)と楽しんだ。

私は西部劇によく出てくる米国らしいロッキング チェアー(ロックチェア)を手に入れようと思っていた。西川ファミリーの人達に言うとアンティークから現 代に及ぶチェアーの検討をしてくれた。あれやこれやの結果、Betsyの友人でカントリー風の家具屋さんに行った。十種類くらいあったが一番西部風のもの が気に入って買った。

大切なので自分の荷物として持ち帰ることにした。それからが大変だった。何とBetsy達が後日取りに行って、自分達で手厚く包装してSF空港に持って来てくれた。

空港での出国の折、空港の人が、港内に包装する所があるから、もう一度包んできたらOKと言う。戻って来ると荷物として"フリーで安全に送るようにする が、保障はしない"旨のサインを求められた。そして、成田で乗り換え、名古屋空港までは無傷で着いた。

しかし、名古屋空港で一社だけあった宅配業者に依頼に行ったら粗野な受付人が保険をかけなければぞんざいに扱うぞとばかり保険をかけろと言う。いやいや掛けて家で待つと何と傷をつけて配達されたではないか。

その業者の誠意は無く、ただ意味の無い商売の為の保険を掛けさせる金儲けとしか言い様がない。興醒め限りなし。

米国から業者も含めて人々の善意、好意と協力を得て、思い入れを持って運んだ記念すべきロックチェア(180ドル)なのに。

今回、米国と日本で、人々や業者の気持ちや態度を比較できたような気がする。米国の人達はお客中心で親切心に「心」がある。

最近、NHKの「名作をポケットに」で、半田生まれの新美南吉日記が伝えた如く「ありふれたものが美しい」と感じ、「愛は与えるもので、求めるものでな い」と、オノ ヨーコ デザインのマグカップ「YES」で、紅茶を飲みながらロックチェアで揺れている。

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