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お茶成分と薬効

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

カテキン類と血中コレステロール値低下作用

カテキン類が血中のコレステロール値を下げると良く話題になる。米国国立医学図書が発するインターネット情報Pub Medでカテキン類、またはお茶とコレステロールを項目として検索を行い、現状を検討する。

しかし、今だ、カテキン類とガン予防や心臓病予防のような大規模で長期に渡る前向きコホート研究や無作為割付臨床試験の論文はない。

無作為試験の論文二つが2000年以後にある。残念ながら我が国の研究者による論文はない。最初の論文は米国の研究者が中国研究者との協同研究を行ったものだ(Maron DJ,et al, Cholesterol-lowering effect of a theaflavin-enriched green tea extract :a randomized controlled trial.Arch. Intern.Med,163,1448-1453,2003)。

中程度位の高コレステロール血症のある人達を対象者にテアフラビンを含む緑茶成分の効用を検討した。18歳以上の240人の男女を対象としてテアフラビンを多く含む緑茶抽出物375㎎をカプセルにして一日一錠を12週間飲ませた。その結果、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)のみが低下したと言う。

次に紅茶を用いた論文がある(Davies,MJ,et al,Black tea consumption reduce total and LDLcholesterol in mildly hypercholesterolemic adults.J Nutr,133,3298-3302,2003)。

7人の男性、8人の女性で中程度の高コレステロール血症の人達を対象に紅茶を一日5回、3週間飲んだ結果だ。血中コレステロール値と悪玉コレステロール値を低下させたと言う。但し、紅茶摂取による血中の抗酸化状態は変化なしとある。

二論文はカテキン類やお茶を摂取することが血中コレステロールや悪玉コレステロールを低下させるとの事実が明確でないから研究した論文だ。つまり、我が国で常識の如く言われるお茶やお茶成分による血中のコレステロール値低下作用は今だあるとは言えてないのだ。

しかし、今回の二論文が対象とした人数はあまりに少なく、試験期間も短い。食事条件も特殊だ。対象者個々の人達の年令、性別、食事、生活習慣等の影響を与える因子を分析できるレベルの研究規模で行われていない。つまり、これだけの臨床試験では、あまりに不完成だ。日常生活で実際に効果が出るか判定不能だ。

次のような論文がある(Rehm J,et al,A comparison of serum total cholesterol levels and their determinants between the Federal Republic of Germany and the United States. Eur J Epidemiol,16,669-675,2000)。

ドイツ人では米国人より血中コレステロール値は高いが冠動脈心臓病死は逆に少ないとある。アルコール摂取や生活スタイル因子が重要な意味を持つと言う。つまり、コレステロールの高低ではないのだ。

我が国ではコレステロール値が220mg/dl以下を通常正常と言う。最近は240mg/dlに改めた。しかし、240mg/dl以上でも問題がないとの データもある。加えて、むしろ、低値の方がガンになり易い傾向にあると言うのだ。

ガン、動脈硬化、心臓病等総合的に考えると、現状では血中コレステロール値をどのレベルに保つのが良いか判らないのだ。

まとめると、カテキン類摂取やお茶を飲むことが血中コレステロール値や悪玉コレステロール値を下げるとの効果は今だはっきりしていない。よし、下げるとしても如何なる意味があるかも良くわかっていないのだ。

以上より、カテキン類やお茶が血中コレステロール値を下げるとの目的でお金を使う思考は止めた方が良いと判る。

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