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お茶成分と薬効

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

薬効成分が含まれるが

お茶が含む化学成分の薬効性が人間レベルでも有効であるかを判断するためには科学思考が必要だ。

(1) お茶を飲んで××に効いたとしても、薬効性があるとする化学成分の作用によるとは必ずしも言えない。人間は同様の作用を持つ成分を各種多様に摂取するからだ。

(2)お茶が含む化学成分の基礎実験や動物実験などで薬効性作用があると言っても、人間レベルで役立っているかとは別なのだ。人は雑種で異なる環境で多様な食や生活習慣を持っているから証明は容易でない。

この(1)(2)の問題を理解出来ると他に応用可能で安易な'健康食品'に無駄金を使わなくてすむ。
植物や動物食品が薬効性の在りそうな化学成分を含んでいるからと、その食品に薬効があると宣伝されることが多い。

例えば、お茶が抗酸化作用のあるカテキン類を含むからガン予防に効くと言うようなことだ。しかし、答えは簡単ではない。

およそ、我々が日常食べる植物食品でカテキン類等のポリフェノールを含んでいないような植物は無い位だと言うことをご存知か。つまり、人間は連日お茶以外の多くの食品からも沢山の各種のポリフェノールを摂取しているのだ。たまねぎ、レタス、各種緑黄野菜、りんご、柑橘類、カレーやお米等と馴染みの食品等から日常的に摂取している。
また、お茶と言っても緑茶、紅茶、ウーロン茶等々飲む茶種によって、ポリフェノールの種類、含量が変わる。
お茶にも各種のカテキン類と同様の作用を持つポリフェノールが沢山含まれている。

更に、お茶にはポリフェノール以外にも、抗酸化作用を期待出来る化学成分が各種含まれる。例えば、ビタミン類のビタミンC、ビタミンE。β−カロチンを代表とする、これまた、殆どの食品に含まれるカロチノイドがある。また、抗酸化作用を持つ酵素に必要なミネラルも含まれる。
以上を考えると、お茶を飲んでも、カテキン類が効いたとも言えないと判る。
次に、カテキン類は基礎実験で抗酸化作用を示す。抗酸化作用はガンの予防効果と関係すると言われる。しかし、人間レベルのガンの発生は酸化作用だけでは説明出来ない。
つまり、抗酸化剤だけでは予防出来ない可能性があるのだ。事実、人間レベルで抗酸化作用を持つカテキン類を投与した試験が行われた。また、現在も行われている。
しかし、今だ、人間レベルでガンを予防したり、抗ガン作用を示すとの信頼出来る研究方法による明確な証明はない。
人間は基礎実験や動物実験のように単一で均等な条件の人を集めた研究は困難だ。前述した如くに人間は多様な食べ物を摂取して、カテキン類やポリフェノール以外の抗酸化物質だけでも多種を摂取する。
性別、年齢、遺伝子素因、生活環境、生活習慣と食物以外の影響因子も多いのだ。
つまりは、基礎実験、動物実験で化学成分が薬効性を持つ可能性ありと判っても、人間で特定の化学成分が薬効ありと言うのは容易ではない。
有効性を証明するには多人数のグループを対象にした「前向きランダマイズ試験」で「栄養介入試験」を長年行う必要がある。その上で、前述の影響因子の分析が不可欠だ。
しかし、我が国ではその試験を行える体制は整っていない。我が国では科学性ある信頼出来る判定は困難ということになる。

過去の聞き取り調査や効いた例があるとの話は信用できない。恣意性が入るからだ。
お茶の薬効性は期待も強く、世界中で熱心に研究されている。しかし、カテキン類ですら薬効性は人間レベルでは明確ではないのだ。
以上、科学性に疑問のあるレベルの'健康食品'が如何に氾濫しているかの背景が判る。

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