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家族で楽しむ里山術

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

クラウド・ウォッチング

人は時々、空を見上げます。何気なく空に目をやることもありますが、嬉しい時や悲しい時、あるいは込み上げてくる感情を押さえきれなくなった時にも、空を見上げることがあります。
「空」という字を「くう」と読むと、"何もない空間"という意味にもなりますが、実際には、空は、自然の神秘がたくさん隠された観察対象の宝庫です。地上から離れて大宇宙へとつながるこの空間には、水分が蒸発してできた雲が発生し、漂います。その雲を観察することをクラウド・ウォッチングといいます。最近では、このような雲の観察者であるクラウド・ウォッチャーの方々が増えてきています。

四季のはっきりとした日本では、雲にも季節感があります。春のかすみ、夏の入道雲、澄みきった秋の空に浮かぶ雲。そして、雪の便りを運んでくる雲。地上から比較的近いところに浮かぶ低い雲は、蒸気の集積ですから、湿気が多く、やがては涙を落とすが如く地上に雨の恵みをもたらします。
高層に浮かぶ高い雲は、氷の粒のかたまりですから、太陽の光が氷の結晶に反射して、美しいフォルムと輝きのある色を見せてくれます。
美しい夕焼けも雲によって左右されます。高い位置に浮かぶ氷の粒でできた筋状の雲と絶好の観察ポイントを探し出せれば、大感動のサンセット・ショーに行き当たる可能性が高くなります。

高層の氷の雲は、筋雲、鰯雲、うろこ雲というように、雲の形態自体にすでに名前が付けられてることがあります。
反対に低層や中層の蒸気雲は、雲の動きが速く、形がどんどんと変化していくという特徴があります。 雲の形が変化していく過程で、何かにそっくりな形に見えることがよくあります。私は、イルカ、プードル、ピノキオ、招き猫、ロイドメガネ(ドーナツを二つ合わせたような形状)と名付けた雲などに出会ったことがあります。
蒸気雲は流れが速く、目を他に移していると、すぐに形が崩れて何でもないただの雲になってしまいます。できれば、カメラに収めるなどして、それをコレクションしておくと、クラウド・ウォッチャーとして、将来どこかのギャラリーを飾ることができるかもしれません。
同じ雲の形を見ても、子供たちはその自由な発想力から、大人では考えつかない名前を付けることがあります。子供たちが豊かな想像を育む機会は、固定の概念の中にはない、たとえば雲をつかむような事柄の中にあるかもしれません。

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