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家族で楽しむ里山術

里山研究家 吉澤 守(ヨシザワマモル)

偉人は、みな自然児だった

2001年に、ノーベル化学賞を受賞された名古屋大学の野依教授は、野山で遊んだ体験が自分の生き方の根源になっており、人生を豊かに生きていくためには若い時代に広い自然の中で一人で生きていく力をつけることが必要だと思う、と次世代の子供達へメッセージを送られています。
発明王エジソンも、昆虫記を記したアンリ・ファーブルも、子供の頃に体験した野遊びの延長に大人になった自分がいるという趣旨のことを語っているのを、何かの書物で読んだ記憶があります。偉人は、みな自然児だったのでしょう。

確かに、自然の中でふと感じた疑問や目にした何でもない風景の一コマが、子供の感性を揺さぶり、やがて子供が大きな興味へといざなわれていくことがあります。
ある時私は、当時小学校の4年生だった子に、キャンピングをしているテーブルの上にスズメバチがたくさん来ているから退治して欲しいと頼まれました。私はその子に言いました。「スズメバチは、君を襲うためにテーブルに集まって来ているのではないよ。君がテーブルの上に置きっぱなしにしている飲みかけのジュースの缶や食べ残しのメロンを、自分達に分けてくれたエサだと思って、それを欲しがって集まっているんだよ」その子はすぐに食べ残しのメロンを少し離れた木の枝の上に置いて、スズメバチ達が安心してメロンにありつけるようにしてあげました。
それ以来、その子はスズメバチに興味を持ち、スズメバチの生態をテーマにした夏休みの自由研究に取り組みました。その自由研究は、住んでいる市の教育委員会の大きな賞に選ばれたそうです。その経験をきっかけとして、社会人になられた現在でも環境関係の仕事に就いておられます。

受験勉強や習い事のスケジュールに追われ、大人顔負けの忙しさの中に日常を過ごすことの多い現代の子供達は、昔のようにガキ大将に引率されて子供達だけの世界の中で野山で遊ぶ経験をする事がほとんどなくなり、部屋の中でテレビを見てテレビゲームに興じるという室内の個遊びの傾向が強くなってきています。こうした傾向が協調性や社会性に欠ける人格をつくる可能性があるのでは、と私は懸念しています。

「偉人は、みな自然児だった」この言葉は、さまざまなジャンルで新しい創造性を求められる今、重要だと受けとめています。

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