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アロマハンドトリートメント~現代社会の中で活かすコミュニケーションと自然療法による癒し

一般社団法人アロマハンドトリートメント協会代表理事
木之下 恵美 Megumi kinoshita

アロマハンドトリートメントで使用するマッサージオイル〈前編〉

アロマハンドトリートメントを行うときに使用するオイルについてお話ししたいと思います。
アロマハンドトリートメント用のオイルは、すべて常温(低温)圧搾で、精製されていない未精製のものをつかいます。

まず植物油とはいったいなにか・・・。
かつては植物油=サラダ油といった概念だったものが、原材料はなに?遺伝子組み換え?生で食べられるの?生活習慣病に悪くないの?などといった疑問とともに、複雑に変化して店頭に並んでいるように感じます。植物油は化学・生化学・食品栄養学・植物学など様々な視点で考えることができるため、その用語もとても複雑です。
たとえば、『ω(オメガ)』と『n』。最近、スーパーなどでも、ω-3系という表記や、n-9などといった表記が見られます。身体によい不飽和脂肪酸の分類を、生化学的な表現としてn系列と表記したり、化学的な表現としてω系列と表記したりしています。
わたしたちは、植物油そのものを使用し食することも多いのですが、知らず知らずのうちにいろいろなものから油を取り込んでいます。たとえば、からあげやコロッケ、サラダにつかうマヨネーズやドレッシングはもちろん、せっけんやシャンプー、美容液、美容クリームの類、洗濯洗剤など様々な身の回り品などは見えない油といってもよいのかもしれません。パンや菓子類やそうめん、うどん、製薬などあげたらきりがありません。

あぶらを摂取しなかったらどうなるか・・・?
わたしたちの身体はタンパク質でできています。骨も血液も筋肉も。そして、ホルモン(内分泌)や神経、細胞膜などはある種の脂質(あぶら)でできています。タンパク質が基礎であるとすると、脂質は心身の健全な働きに欠かせない栄養素です。

2種類のあぶら・・・。
では、アロマハンドトリートメントで使用する植物油について考えてみましょう。そのためにまずはあぶらを2種類に分類してみましょう。1つは肌の上に残るあぶら、もう1つは肌の中にはいってくるあぶらです。いいかえると、肌の上に残る分子の大きな飽和した(安定した)ものと、肌から吸収される不飽和な(不安定な)あぶらの分子があり、この2種類のあぶらはずいぶん様子が異なります。
あぶらを塗ると(化粧品やせっけん、シャンプーや整髪料、薬など)、あぶらがそのまま入ってくるわけではありません。クリームやせっけんをつかって太るなどということはありませんからご心配なく!
不安定なあぶらの分子(不飽和脂肪酸)の代表的なものはオレイン酸やリノール酸、リノレン酸やDHAなどがあります。そして安定したあぶらの分子(飽和脂肪酸)の代表的なものはパルミチン酸やミリスチン酸、ラウリン酸など様々な種類があります。オレイン酸は『ω-9系』、α-リノレン酸は『ω-3系』、どちらも不飽和脂肪酸です。これらの不飽和脂肪酸は分子が小さく、皮膚から体内へ有効成分を送り届けることができ、またその種類によって、免疫やホルモン(内分泌)、自律神経などに深く働きかけます。
飽和した脂肪酸は食することによっては体内に貯蔵されビタミンや不飽和脂肪酸によって代謝されますが、皮膚の細胞よりも大きいため、不飽和脂肪酸のように体内に取り込まれず、皮膚の上に残ります。これもまたそれぞれの種類によって異なる働きをします。

不飽和脂肪酸と経皮吸収・・・。
血液検査をする実験などで、精油を希釈した植物油の皮膚から体内への吸収や、マカダミアナッツ油などの植物油の皮膚から体内への吸収は、アロマテラピーや植物油脂の研究で報告されています。吸収された不飽和脂肪酸は、体内に入って働きを終えると尿や便、呼気、皮膚から排泄されることも知られています。要するにある程度時間が経つと血中から消えてなくなってしまいます。
また、あぶらを食すると、肝臓や内臓器官に働きかけをし、蓄積されるのですが、内臓系統を経由しない方法の皮膚からの吸収は、食するあぶらとは異なった作用をもたらします。

あぶらはあぶらで洗う・・・。
あぶらはあぶらでしか洗い流せません。油が手についたとき、流水で流してもなかなかとれませんが、灰や泥でもとることはできますが、身近なところ、石けんで洗うと洗い流せます。おなじように、体内に蓄積されたあぶらは、不飽和脂肪酸やビタミンが代謝を助けます。複雑な組み合わせと働きの違いがありますのでここでは簡単な説明に留めておきましょう。

不飽和脂肪酸が多いあぶらは・・・?
最初にお話しした常温圧搾未精製の油は、常温で液体の油と常温で固体の脂に分けられます。常温で液体の油は、不飽和脂肪酸が多く、固体の脂は飽和脂肪酸が多くなります。

有機栽培された植物だったら安心・・・?
オーガニック、有機農法と記されている素材を使用しても、その製造工程と充填工程が大切になります。化学的な多くの工程を経た植物油は、オーガニック認定を受けた原材料であっても、化学薬品の影響を一切考えなくてもよいわけではありません。また、酸化してしまったあぶらもとても怖いものです。過酸化脂質という心身に悪い影響を与えてしまう成分に変化してしまっているからです。

あぶらがあるから豊かな生活・・・。
人類が発展し、危険から身を守ることができ、心地よい生活をすることができ、長寿を全うできるのは、あぶらのおかげといってもよいかもしれません。ラスコー壁画の時代は、動物の脂を松明(たいまつ)にして、命を守ってきました。古代エジプトでは、ゴマ油を圧搾し、王や貴族の心身の健康と生活の向上を得ることができました。古代ローマは、オリーブ油によって、多くの市民が今の人類に負けず劣らず、健康と生活の向上を体得しました。あぶらによって生活は守られ、あぶらによってわたしたちの健康は助けられます。けれどあぶらによって、アレルギーや心身の不調、生活習慣病なども引き起こすことが増えてきました。

天使か悪魔か・・・。
あぶらは、天使になったり悪魔になったりします。植物油は、植物から人間が多くの工程を駆使して採油する人間の知恵による産物です。どんな工程でどうやって作られて、どうやって充填されているのか、どうやって保管されているのか・・・。あぶらはアレルギーを治すこともひどくすることもあるもろ刃の刃です。

アロマハンドトリートメントでは、常温(低温)圧搾で未精製の植物油を使用してケアしたり、植物油の効能などを学びながら、自分の生活に取り入れていけるようにします。毎日使っている油を知りながら、楽しみながら健康になれるように体感していきます。

環境省認可法人(社)日本アロマ環境協会インストラクター
初穂香房主宰
Lavozouアロマテラピー講師
栄中日文化センター講師
1995年よりアロマテラピー講師として活動
ホームページアドレス  http://www.lavozou.com/index.html


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