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インターネット公開文化講座

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日本食って素晴らしい!

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第2回:「日本食の歴史と文化」について学びます。

前シリーズでは「私は麺食い人!」と題し、日本独自の発展を遂げたラーメンを始め、アジア各国の食文化ともつながりの深い麺料理など、バラエティに富んだ麺料理をご紹介しました。
今シリーズでは、「日本食って素晴らしい!」というテーマで、日本食の代表である「天ぷら」「寿司」「餅」「蕎麦」など、国内外で人気のある日本食についてご紹介いたします。
「和食」がユネスコ無形文化遺産になって来年で10年目を迎えます。普段、私たちが食べている「日本食」の素晴らしさを一緒に再確認していきましょう。

今シリーズの2回目は、日本食の基本となる「出汁」についてお話します

出汁(だし)とは

出汁(だし)とは、主に昆布やかつお節などの食品を煮て出した汁のことを指します。
「煮出汁」(にだしじる)の略で、「出し汁」(だしじる)、「にだし」とも言います。
昆布やかつお節だけではなく、煎り大豆や干ししいたけ、野菜の皮やヘタなどを用いた出汁など、素材も調理法も異なった多種類の出汁があります。近年は水からじっくり出した、「水出汁」も人気を集めています。

世界で注目される「日本の出汁」

西洋文化圏においては肉の煮汁自体がうま味の供給源となったために、更にうま味を増すことに意識が向かなかったので、多くの欧米の学者たちは「うま味」という味覚があることには懐疑的でした。
2000年に舌の味蕾にグルタミン酸受容体(mGluR4)が発見され、うま味の実在が認知されるようになりました。欧米諸国にはこの「うま味」に相当する表現が存在しなかったので、現在のところは「umami」を便宜上代用している場合が多いようです。
もともとフランスでは、昆布は畑の肥料や薬剤として使われていました。そんな中、和食のおいしさに開眼したフレンチのシェフたちは、日本の出汁に注目。今ではミシュランの星付きレストランは昆布を使って、出汁を取っているところが多くなりました。
世界にはそれぞれの国に「出汁」のようなものがありますが、今、なぜ日本の「出汁」が注目されているでしょうか?それは「うま味」の質に違いがあると言われています。
日本の「出汁」はすっきりとしたうま味を持ち、短時間で抽出できるのが特徴です。また、動物性油脂を使わない「健康食」としても注目されています。

うま味の歴史と成分

うま味物質は東京帝国大学(現在の東京大学)の教授だった池田菊苗(いけだきくなえ)博士によって1908年にだし昆布の中から発見されました。そのうま味物質が「グルタミン酸」でした。
池田博士は酸味(さんみ)・甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)の四つの基本味に、第五の味として「うま味(うまみ)」と名付けました。
1913年に小玉新太郎氏が、かつお節からうま味成分である「イノシン酸」を発見・確認しました。
1960年に国中明氏がしいたけから、うま味成分である「グアニル酸」を発見しました。代表的なうま味成分には以下のものがあります。
①グルタミン酸(アミノ酸の一種)...植物(昆布など)に多く含まれます。
②イノシン酸(核酸の一種)...動物(かつお節など)に多く含まれます。
③グアニル酸(核酸の一種)...干ししいたけなどに多く含まれます。

日本料理の出汁

日本料理の出汁は、大きく分けて2つに分類されます。
①魚などの生ぐさものを使ったもの...かつお節・鮪節・あごなどからとったもの
②生ぐさものを使わないもの...昆布・干し椎茸・大豆・かんぴょうなどからとったもの

基本の出汁と近年人気の出汁

基本の出汁

(1)かつお出汁

一般的な和風出汁です。みそ汁や煮物など、どんな料理にも使えて便利です。
カツオは時速30~50kmで一生の間泳ぎ続けると言われ、疲労を知らないとされています。
そのかつおから取るかつお出汁そのものが、疲労回復効果を示すことがわかってきました。
風邪や食欲不振のときに沖縄で飲まれてきた鰹湯(カチューユ)、鹿児島に伝わる茶節なども、このようなかつおの効果を経験的に利用してきたものといえます。

かつお出汁の取り方

かつお出汁を使った「秋のぜいたく土鍋めし」と「出汁がきいた茶わん蒸し」をご紹介します

秋のぜいたく土鍋めし

秋のぜいたく土鍋めし

材料 4~6人分
  2・1/2カップ(500ml分)
もち米 1/2カップ(100ml分)
かつお出汁(冷えたもの) 800ml弱
大さじ2
油揚げ(正方形) 3枚
6~8コ(180g)
松茸 100g
新ぎんなん 12粒
A 小さじ1
しょうゆ 大さじ2
砂糖 小さじ1
黄菊 適宜

作り方

  1. 米は洗って分量のかつお出汁と酒に、30分~1時間程浸水します。
  2. 油揚げは熱湯で、充分に油抜きします。
  3. 栗は鬼皮と渋皮をむき、1コを10~12等分にします。
  4. 松茸は石突きを包丁で削って水洗いし、半分長さの薄切りにします(松茸の形がわかるように切ると良いでしょう)。
  5. ぎんなんは鬼皮をむき、茹でながら薄皮をむきます。半分に切ります。
  6. 炊く直前に1.に(A)を入れ、サッと混ぜて2.~4.をのせて火加減に注意しながら炊きます。最初は弱火、次に強火、沸騰したら中火~弱火にします。
  7. 炊き上がったら5.をのせて蒸らします。茹でた菊を飾ります。

出汁がきいた茶わん蒸し

出汁がきいた茶わん蒸し

材料 4人分
鶏肉(切り込み) 100g
しょうゆ 大さじ1/2
生しいたけ 4枚(60g)
むきぎんなん 8コ
ほうれん草 1/3ワ(70g)
かまぼこ 1/2枚(60g)
里芋 中1コ(80g)
卵(大) 4コ
A だし汁(濃いめ) 600ml
小さじ1
しょうゆ 小さじ1

作り方

  1. 鶏肉はしょうゆをまぶします。しいたけは飾り切り又はそぎ切りにし、ぎんなんは塩茹でして水に取り、薄皮をむきます。
  2. ほうれん草はザク切りにし、かまぼこは8枚に切り、里芋は皮をむいて輪切りにします。
  3. ボウルに卵をしっかりと割りほぐし、(A)を加えてこします。
  4. 蒸し茶碗又は大ぶりの茶碗に1.と2.を入れ、3.を注ぎます。
  5. 沸騰した蒸し器に4.を入れ、中弱火で15~20分間位蒸します。

(2)昆布出汁

あっさりとした「出汁」のため、素材の味を生かしたい料理に最適です。鍋物や湯豆腐、野菜の煮物、炊き込みご飯などによく合います。

昆布出汁の取り方

(3)混合出汁

昆布とかつおの風味豊かな最高の「出汁」で、特に「出汁」の風味を生かした吸い物や煮物などに利用します。
混合出汁は、昆布が持つグルタミン酸とかつお節が持つイノシン酸が共存することで、味を感じる最少濃度である閾値(いきち)が単独の場合に比べて約100倍になると言われています。

混合出汁の取り方

(4)煮干し出汁

煮干し出汁は、小魚を煮て干したものから取った出汁のことをいいます。
片口イワシを煮干しとして出汁を取るのが一般的ですが、真イワシやウルメイワシなど種類の違ったイワシのほか、アジ、サバ、トビウオなど違った魚を原料にした煮干しもあります。
コクのある「出汁」のため、みそ汁がよく合います。

煮干し出汁の取り方

(5)精進出汁~高野山の精進料理本を参考にして~

精進出汁とは、植物性の材料だけをつかって取った出汁です。
昆布や干ししいたけ、かんぴょう、煎り大豆、炒り米などを使います。
他の出汁に比べて植物を材料としているため、旨みが弱いので、ひとつの素材から出汁を取るのではなくいくつかの素材を組み合わせてその旨みを出汁に取ります。
野菜類の食材によく合い、素材の味を活かした調理ができます。

精進出汁の取り方

(6)野菜出汁・一例

野菜出汁を使った「タコ飯」をご紹介します

タコ飯

タコ飯

材料  
2カップ(400ml分)
野菜出汁 550ml
  茹でダコ 250g
大さじ1
粗塩 小さじ2/3

作り方

  1. 米は洗って、野菜出汁に1時間程浸水します。
  2. タコは角切りにし、酒と塩をまぶして1.の上にのせて普通に炊きます。
日本食って素晴らしい!
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