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家計のサポート相談員のコラム

株式会社 マネースマート

所得税の年収の壁178万円へ

 1.概要

 令和8年度(2026年度)の税制改正では、「年収の壁」の見直しと物価高への対応を目的として、所得税制度の大きな改正が行われます。今回の改正で特に注目されているのが、「基礎控除」と「給与所得控除」の引き上げです。

 これまで、扶養の範囲内で働くパートやアルバイト、学生などの多くは、「103万円の壁」や「130万円の壁」を意識して働き方を調整してきました。

 「103万円の壁」とは、所得税がかからない収入の基準です。給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除と基礎控除によって課税所得がゼロとなるため、所得税は発生しません。そのため、「103万円を超えないように働く」という考え方が広く浸透していました。

 また、「130万円の壁」は社会保険に関係する基準です。年収130万円を超えると、扶養から外れて自分で健康保険料や年金保険料を負担しなければならない場合があり、「少し多く働いただけなのに手取りが減る」と感じる人も少なくありませんでした。

 こうした背景から、「もっと働きたいのに働けない」「働く時間を増やすとかえって損になる」という"働き控え"が社会的な課題となっていました。

 さらに近年は、食料品や光熱費などの値上がりが続き、物価高への対応も大きな課題となっています。しかし、所得税の控除額は長年ほとんど変わっておらず、実質的な税負担が重くなっているとの指摘がありました。

 そこで政府は、今回の税制改正で「年収の壁」問題と「物価高」問題の両方に対応する方針を示しました。

 2.改正内容

 今回の改正では、基礎控除が58万円から62万円へ4万円引き上げられます。また、給与所得控除の最低保障額も65万円から69万円へ4万円引き上げられます。

 これらの見直しは、令和5年11月から令和7年10月までの消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえて行われます。

 さらに大きな特徴として、今後は物価上昇に応じて控除額を見直す「物価連動方式(スライド制)」が導入されます。これにより、消費者物価指数を基準として、基礎控除や給与所得控除が2年ごとに見直されることになります。

 また、「年収178万円を目指す」という昨年の三党合意を踏まえた特例措置も実施されます。

 年収665万円相当以下の人については、基礎控除の特例額が拡充され、最大42万円まで上乗せされます(基礎控除額としては最大104万円)。さらに、給与所得控除にも特例として5万円が追加されます(給与所得控除としては最大74万円)。

 3.新たな壁は178万円

 以上により、基礎控除と給与所得控除を合わせた課税最低限は178万円まで引き上げられる見込みです。従来の「103万円の壁」と比べると、所得税の非課税で働ける範囲が大幅に広がることになります。

 その結果、パートやアルバイトで働く人が「これ以上働くと損をする」と感じにくくなり、働き方の選択肢が広がることが期待されています。

 また、今回の改正は扶養内で働く人だけではなく、年収665万円以下の幅広い層に減税効果があるとされています。納税者全体の約8割が対象になるとされ、多くの家庭に影響する制度改正といえます。

 ただし、今回の改正は所得税の非課税枠拡大であって、住民税や健康保険料、年金保険料については従来の非課税枠と変更はありませんのでこれらの分の負担は増えることとなります。しかし、178万円まで働くことができれば、手取額は大幅に増えることになるでしょう。

 なお、物価連動による基礎控除と給与所得控除の引き上げは恒久措置として導入されます。一方で、基礎控除の特例拡充や給与所得控除への追加加算については、令和8年・令和9年の時限措置として実施される予定です。

 今回の税制改正は、「働くと損をする」と言われてきた年収の壁の見直しと、物価高への対応を同時に進める大きな制度改正です。今後は、自身の働き方や家計への影響を確認しながら、制度内容を正しく理解していくことが重要になります。

津田 亜希
税理士

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