文化講座
建築費はどこまで高騰するのか?
中東情勢の緊迫化によって、国内の石油由来の製品の価格高騰と品不足が顕著になっています。住宅・マンション市場では、ユニットバスが入荷しないとか、断熱材や防水シート、シーリング材(目地材)、塗料などの品不足が顕著で、工事が中断したり完成引き渡しの時期がずれ込むなどの影響が出ており、このことはひいては価格高騰の原因になります。
果たしてこの価格高騰は、中東情勢が収束すれば沈静化するのでしょうか?
(1)建築費の実情
建築物価調査会の調査によると、名古屋地区の建築費(純工事費・設備工事を除く)は2016年1月を100として、2026年1月には木造で150、鉄筋コンクリート造の集合住宅でも150となりました。
これは大まかに言えば、2016年に3,000万円で新築できた住宅が、2025年には4,500万円支払わないと建てられなくなったということになります。
この数値には、2026年2月28日に始まった中東情勢の影響は考慮されていないので、現時点では更に高騰していることが予想されます。
(2)建築費高騰の原因
この10年間の建築費高騰の原因を確認してみましょう。
- 2021年3月頃から、COVID-19の影響を受けた世界的な木材不足(ウッドショック)によって、木造住宅の建築費が高騰しました。
- 2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻で資材価格が上がりました。
- 2024年4月1日から、建設業にも「働き方改革」が適用されました。(時間外労働規制)
- 2025年4月1日の建築基準法改正。省エネ基準適合義務化や木造2階建の構造計算等義務化で設計コストが上がりました。
- 2025年10月から順次最低賃金がアップしました。
- 2026年2月28日のアメリカ・イスラエルのイラン攻撃によって、ご承知の事態になっています。
以上はすべて建築費の高騰の原因になり、価格が下がる要素はまったくありません。
(3)今後予想される価格高騰の要因
では今後はどのようなことが予想されるでしょうか?
- 2027年4月1日からはZEH(ゼロエネルギー住宅)の基準が見直され強化されます。これは住宅だけでなくエアコンなどの設備にも該当することで「2027年エアコン問題」と言われています。
- 2030年4月1日からは、すべての住宅についてZEH基準適合が義務化されます。サッシや断熱材などのレベルアップが必要になるのでコストアップにつながることが予想されます。
現在予定されている以上の改正だけでも、建築費が上昇することが考えられます。
(4)真の問題は人手不足
しかし実は建築費高騰の慢性的な原因が他にあります。それは人手不足です。
一般社団法人日本建設業連合会の調査によると、建設業就業者数は1997年の685万人をピークとして減少しており、2024年には30.4%減の477万人になりました。そのうち建設技能者(大工さんなど現場で作業する人)は1997年464万人のピーク比34.7%減の303万人になっています。
また就業者数を年齢階層でみると、過去20年で29歳以下の若年層が88万人から56万人に減少したのに対して、65歳以上は37万人台から80万人台へと大きく増加しました。また中核となる30歳~49歳の層は238万人から177万人に減少しています。
65歳以上の就業者が退職すると、実際に働く人が不足するだけでなく、技能の継承が困難になります。
つまり今後は容易に建物を建てる、リフォームする、メンテナンスすることができなくなる可能性があり、ひいては建築費の上昇に結び付くと考えられます。
名古屋地区では名古屋鉄道の名古屋駅前再開発が、人手不足で解体工事すら着手できない状態になったことが知られますが、これは全国でも多発している事象です。
以上を考慮すると、建築費が下がることは考えられず、むしろ上がり続ける可能性があると考えておいた方が良いと思われます。
吉田 貴彦
ファイナンシャルプランナー(CFP®)

