「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

スケッチ 樋口佳代
「旅に役立つイタリア語」シリーズ2月号・3月号の『町の散歩』のなかでヴェネツィアの町を取り上げました。サン・マルコ広場やリアルト橋などについて書きましたのでお読み下さい。「イタリア世界遺産の旅」シリーズでは、ヴェネツィアで是非訪れて欲しい代表的な教会を案内します。
■フラーリ教会(Basilica Santa Maria Gloriosa dei Frari スケッチ画)
ヴェネツィアで最も重要な教会の一つで、1340年から1430年に再建されたゴシック様式の教会で、別名ヴェネツィアのパンテオンと呼ばれるフランシスコ派の教会です。12本の円柱に支えられた堂々たる教会内部は、ラテン十字型の三廊式の教会です。側廊には7つの礼拝堂があり、身廊の中央部にはマルコ・コッツィ(Marco Cozzi)によって彫刻された、3列で合計124席からなる木製の修道士のための聖歌隊席(Il Coro 高さ4.5m,幅13.7m,長さ16m)があります。その聖歌隊席のアーチに完璧に縁取られる形で、中央の後陣奥にティツィアーノ(Tiziano Vecelli 1488-1576)の「聖母被昇天」(L'Assunta 1516-18)が目を奪います。ワーグナーは両手を広げて昇天する聖母マリアを見て「マイスタージンガー」の完成を決意したと言われています。
主祭壇に向かって右手の礼拝堂には、ドナテッロの「洗礼者ヨハネ」の木造彫刻があります。ヴェネツィアで唯一の、フィレンツェの巨匠ドナテッロの作品です。また中央頂上にはアンドレア・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio 1437-1488)によるブロンズの十字架像が架かっています。また右の翼廊の端にはペーザロ礼拝堂があり、そこにはジョヴァンニ・ベリーニ(Giovanni Bellini 1433-1516)の素晴らしい三連祭壇画(1488年)が掲げられています。教会参事室にはパオロ・ヴェネツィアーノ(Paolo Veneziano 1300-1365)の「聖母」が展示され、身廊のペーザロ祭壇にはティツィアーノの傑作「カ・ペーザロの聖母」(Madonna di Ca' Pesaro)が輝いています。
右側廊の壁にはテラコッタの記念碑があります。1480年にコンスタンティノープルから持ち返った「キリストの血」が納められています。またマントヴァ公に仕え後にサン・マルコ寺院の楽長を勤めたヴェネツィアオペラ隆盛の基礎を築いた作曲家モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi 1567-1643)の墓廊もあります。
カッラーラの白大理石で作られたピラミッド型の記念碑があります。これはイタリアの彫刻家アントニオ・カノーヴァ(Antonio Canova 1757-1822)がティツィアーノのために設計した記念碑ですが、中にはカノーヴァの心臓が斑岩の壺のなかに納められています。この記念碑の向かいにはフラーリ教会に埋葬されることを望んだティツィアーノの墓廊があります。
ヴェネツィアで最も古いとされているパイプオルガン(18世紀)があります。聖歌隊席の上部左右に2台が向かい合うようにあり、また1台はティツィアーノの祭壇画の背後に設置されています。この教会ではミサのときだけでなく定期的にオルガンコンサートが行われています。オルガンの繊細で軽く透明な響きに至福の時を過ごすのもよいのではないでしょうか!
■サン・ロッコ教会(Chiesa di San Rocco)とサン・ロッコ大信徒会館(Scuola Grande di San Rocco)
フラーリ教会の裏手に出ると、左側の建物がサン・ロッコ大信徒会の建物で、右手奥にはサンロッコ教会が隣り合って建っているのが見えます。
14世紀以来ヨーロッパを襲ったペスト(黒死病)は、ヴェネツィアにも頻繁に発生し多くの犠牲者を出しました。ヘッカー(J.F.C。Hecker)の『中世期の伝染病』によると、ヴェネツィアの死者数は10万人を超え、人口の4分の3の死亡率であったと推算されています。ペスト患者の救済に奔走したことで知られる聖ロッコはヨーロッパ中で崇められ、とくにペストが頻繁に発生したヴェネツィアでは一層崇拝されました。1575年から76年にかけてのペスト大流行は聖ロッコのとりなしで終息したとして、聖ロッコはペストから身を守ってくれる守護聖人としてヴェネツィアの人々から崇拝されました。1485年には聖ロッコの遺体が運び込まれ祀られました。8月16日は「聖ロッコの日」と定められ、この教会で盛大な儀式が行われました。
そして富裕な市民が貧者の救済のために信徒組合(scuola スクオーラ)が作られました。スクオーラはイタリア語で「学校」の意味ですが、ここでは団体や仲間を意味するラテン語のスコラ(scola)の意味で使われており、ヴェネツィアでは互助組合の組織を意味しており、ここで貧者への施しをしたり治療などをしたりするところです。スクオーラは当時の都市生活に重要な役割を果たしていました。スクオーラには多くの寄付がなされ富と強大な権力を手にし、国の経済と軍事においても民衆が参加しその影響力を持ちました。13世紀に始まったスクオーラには大きいを意味するグランデ(Grande)と小さいを意味するピッコラ(Piccola)の2種類がありました。前者は在俗の信徒たちによる宗教的な団体で慈善活動や奉仕活動を目的としており、後者は同業者組合の性格を持つものでした。16世紀には100を超えるスクオーラがあり、そのうち5つがスクオーラ・グランデの称号を受けていました。
ここにはヴェネツィア派の巨匠ティントレット(Tintoretto 1519-1594)が20余年の歳月をかけて描いた天井画や壁画など50点を超える作品で埋め尽くされています。1階のホールには、「受胎告知」など聖母の一生のエピソードを描いた作品が飾られています。2階の大広間には天井や壁が絵で埋め尽くされており、旧約聖書と新約聖書の関連を解き明かす絵がかけられています。隣の小部屋の天井には、「聖ロッコの栄光」が描かれています。ホールの向かいの壁一面に描かれた「磔刑」は凄まじい迫力をもって迫ってきます。
1564年にサン・ロッコ信徒会館の天井画のコンクールが開催されたときのエピソードを紹介しましょう。ティントレットは審査の前日に、規定のスケッチではなく完成した作品を信徒会館に寄贈して、ライバルたちを尻目に契約を結んでしまいます。そしてティントレット自身もこの信徒組合の会員となり多くの作品を残したのでした。
会館には、天井画を映して見るための鏡が用意されていますので、首が疲れたら鏡を使ってみるとよいでしょう。
■フラーリ教会(Chiesa di Santa Maria Gloriosa dei Frari)
http://www.basilicadeifrari.it/
http://www.sacred-destinations.com/italy/venice-i-frari-pictures/
http://giandri.altervista.org/giandri_0405_Frari_1.html
■アントニオ・カノーヴァの彫刻作品
http://www.scultura-italiana.com/Galleria/Canova%20Antonio/index.html
■ヴェネツィアのスクオーラ(信徒組合)について
http://it.wikipedia.org/wiki/Scuola_(Venezia)
■スクオーラ・グランデ大信徒会館(Scuola Grande di San Rocco)
http://www.scuolagrandesanrocco.it/
前回は前置詞diを使った形容詞的な使い方を学びました。今回はその他の前置詞について学習しましょう。イタリア語の代表的な前置詞にはcon, per, a, da, su, di, inなどがあり、名詞や形容詞の前に置かれいろいろな働きをします。
■前置詞conは、「~と一緒に」(同伴)とか「~で」(手段や状態)などの意味を表します。
■前置詞perは、「~へ、~向けて」(方向)、「~ため」(目的や理由)、「~で」(手段)、「~の間」(時間の経過)などの意味を表します。
■前置詞aは、「~に、へ」(場所)、「~で」(手段・目的・限定)、「~より」(比較)、「~風」(様式)などの意味を表します。
■前置詞daは、「~から」(場所・方向・時間)、「~から・の」(起源・由来)、「~の」(目的)などの意味を表します。
■前置詞suは、「~の上に」(場所)、「~について」(話題)、「おおよそ・くらいの」(大体の数量)などの意味を表します。
■前置詞diは、「~の」(所有・所属)、「~の」(部分)、「~いくらかの・いくつかの」(部分冠詞)、「~について」(話題)、「~で」(手段)、「~に」(時間の限定)、「~で出来た」(材料)などの意味を表します。
■前置詞inは、「~の中で(に)」(場所)、「~で」(手段)、「~の」(時間の限定)などの意味を表します。
前置詞と次に来る名詞が冠詞をとるとき、前置詞と定冠詞が結合し冠詞前置詞をとります。しかし現代イタリア語では前置詞conとperは冠詞前置詞を取らないのが一般的です。a, da, suは、その語尾に名詞の定冠詞を付けます。しかしdiはde,inはneの形にして語尾に定冠詞を付けて下さい。
お店の名前:gelato[ジェラート](アイスクリーム)やpizza[ピッツァ](ピザ)などは日本語でもよく使います。では「アイスクリーム屋さん」とか「ピザ屋さん」とかお店を言う場合はどう表すのでしょうか?イタリア語の多くはgelato ⇒ gelateria[ジェラテリーア]、pizza⇒ pizzeria[ピッツェリーア]のように名詞の語尾を-eria[エリーア] にすればよいのです。
「花屋さん」はイタリア語でfioraio[フィオライオ]と言います。また「薬屋さん」はfarmacia[ファルマチーア]と言います。しかし「~のお店」(negozio di ~)を使ってnegozio di fiori[ネゴーツィオ ディ フィオーリ]、negozio di medicine[ネゴーツィオ ディ メディチーネ]という表し方もあり日常会話ではよく使います。
| negozio di |
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その他、よく使うお店の名前:
| シエーナ歴史地区 Centro storico di Siena 1995年登録 | 「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」 一覧へ戻る |
ヴェネツィアとその干潟 その2 (Venezia e la sua laguna) 1987年登録 |