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インターネット公開文化講座

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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ローマ歴史地区(Centro storico di Roma)その17
アウグストゥス帝廟と平和の祭壇
(Mausoleo di Augusto e Ara Pacis) 1980/1990年登録


スケッチ画 樋口佳代

 フォロ・ロマーノから北へ、ローマの中心地であったマルス広場(Campus Martius)の北側、南に流れるテヴェレ川が大きく蛇行する辺りに、初代ローマ皇帝アウグストゥスの大規模な墓があります。紀元前28年にユリウス(カエサル)一族の繁栄を記念して建造されました。
アウグストゥス帝が、アレキサンドリアで見たというアレクサンドロス大王の墓を模して造らせたとされており、白大理石の壁で飾られた霊廟の威容は、ローマ市民に畏敬の念を抱かせたに違いありません。
霊廟の建物(スケッチ画)は、直径90m、高さ42mの大型の建築物で、円型の3段構造になっています。一段一段には円状に糸杉が植えられ、最上部にはアウグストゥス帝のブロンズ像が聳え立つ立体的な構造になっていました。また入り口には、二本のオベリスクが建っていました。現在は、クィリナーレ広場とエスクィリーノ広場に聳えています。内部は4本の同心円状の通路があり、円形の墓室には3つの壁龕があり、それぞれが墓となっており、そこに皇帝一族の骨壺が並んでいました。紀元前23年、ここに最初に埋葬された人物が、後継者として期待されていた甥のマルケルスでした。紀元14819日、一ヶ月もすれば、77歳を迎えるアウグストゥス帝は、この世を去りここに安置されました。
200年後にハドリアヌス帝は、この霊廟を模してテヴェレ川の対岸に建造します。現代では「カステル・サンタンジェロ」と呼ばれています。
アウグストゥス帝廟は、中世には荒れ果て、コロンナ家の要塞に転用され、1780年には闘牛場となり、19世紀には、「アウグステオ」の名でコンサートホールとして使用されるという運命を辿ります。

平和の祭壇(Ara Pacis)
 テヴェレ川沿いに、アウグストゥス帝廟に隣接して建っているのがアラ・パチス博物館(Museo Ara Pacis)です。環境から保護するために、ガラス張りで覆われた近代的な博物館となっています。
そこには「平和の祭壇」が再現されています。
祭壇は、12m×11mのほぼ四角形で、総白大理石で、みごとなレリーフ装飾が施されています。中央の石段を登ると、そこには高さが5m程で、四角形の祭壇があります。
祭壇周壁の浮彫は、上下2段に分かれており、下段は、装飾的な動植物の唐草模様が四周をみごとなレリーフで飾られています。上段には、祭礼儀式の行列に並ぶ、皇帝一族の歴史上の人物が描かれています。アウグストゥス帝、アグリッパ、ガイウス・カエサル、アウグストゥス帝の妻のリヴィア、ティベリウスなどが厳格な順位で並んでいます。
この「平和の祭壇」は、ガリアとヒスパニアで勝利を収めたアウグストゥス帝が、紀元前9130日、地中海に平和が訪れたことを記念して造られました。紀元前13年、元老院が建造を決定し、4年後に完成しました。そしてこの祭壇で毎年犠牲式を挙行することを決め、平和を神々に祈願することを決めました。アウグストゥス帝の努力による平和を祝い、その平和が長く続くようにと願うローマ人の思いの象徴でもありました。フォロ・ロマーノまでは歩いても15分足らずのフラミニア街道脇に建っていたので、北からローマに入ってくる人は、必ずこの「平和の祭壇」を眼にしたに違いありません。そしてローマ帝国が目指すのは「ローマによる平和」(Pax Romana パクス・ロマーナ)であるとのアウグストゥス帝の考えを感じ取ったのではないでしょうか。

■アウグストゥス帝廟と平和の祭壇(Ara Pacis)のガイドと写真
http://www.romanoimpero.com/2010/01/mausoleo-di-augusto.html

■アラ・パチス博物館
http://www.arapacis.it

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第33回

このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にでもわかるようにまとめています。また「単語帳」のコーナーを設けていますので、少しずつ単語や簡単なフレーズを覚えるようにして下さい。

変意語について~続き~

前回、イタリア語の変意語について学習しました。名詞、形容詞、副詞の語尾を操作していろいろな意味を持たせます。「縮小・親愛」「拡大」「軽蔑」を表す接尾辞を付けて作ります。

しかし、語尾を見ただけでは変異語と間違えやすい名詞があります。

aquilone(凧・ハングライダー)
bottone(ボタン)
bastone(杖、ステッキ)
burrone(がけ、渓谷)
filetto(ヒレ肉)
lupino(ハウチワ豆)
mattone(煉瓦)
merletto(レース)
tacchino(七面鳥)
ombrello(傘)
aquila(鷲)
botte(樽)
basto(木鞍)
burro(バター)
filo(糸、線、コード)
lupo(オオカミ)
matto(狂人)
merlo(黒ツグミ)
tacco(かかと)
ombra(陰)

ボッティチェッリの名前の由来

 ルネサンス期の画家サンドロ・ボッティチェッリ(Sandro Botticelli)の本名はAllesandro di Mariano Filipepiといいます。通称ボッティチェッリと呼ばれています。この呼び名には諸説あるようです。
長男のジョヴァンニが酒飲みで、酒樽(botte)のように太っていたので、その弟だから「小さな酒樽」(botticello) というあだ名で呼ばれていたという説。もう一つの説は、フィリッポ・リッピの工房に入る前、兄のアントニオと同じ金銀細工師のボッティチェルロの工房で修行を積んでいたことから、付けられた名前であったという説です。Botticelliと語尾が男性複数形となっているので、その工房で働いていた人たちと考えることが出来ます。

変意語のなかには、pallone(サッカーボール←palla)、giacchetta(ジャケット←giacca)などのように変意語というより、固有名詞となっている名詞もあります。
前回、例に挙げたpane(パン)も、panino(パニーノ)、panettone(パネットーネ)という固有名詞で、変意語としての意味はあまりありません。
イタリアのパンには、それぞれに名前が付いています。paninoは、pagnotta(丸パン)のなかの一つにpanino(丸形の小さなパン)があります。その他にrosetta(バラ形に割れ目をつけた丸いパン)、michetta(縦に割れ目をつけた丸いパン)、pane toscano(円盤状の大型パン)などがあります。

その他の代表的なパンの名前

grissini(細長い棒状の乾パン)
filone, pastone(バゲット)
banana(バナナ状の堅めのロールパン)
chiefel(クロワッサン)
panone(大きなパンの意味)
pane a(in) cassetta(サンドイッチやトースト用の食パン)

最後に、panettone(パネットーネ)について

 日本でもおなじみのパネットーネですが、拡大を表す語尾-oneが付いているので、大きなパンをイメージすると思います。変意語の「大きなパン」は、panoneとなります。パネットーネは固有名詞で、イタリアではクリスマスケーキとしてよく食べます。
さてその名前の由来について、一つの伝説がありますので紹介したいと思います。
時は1490年のクリスマスの前日、ミラノ公爵のルドヴィーコ・スファルツァによる宮廷での祝宴が行われていました。料理長の準備したケーキが焼け焦げてしまい使い物にならなくなってしまいました。厨房で下働きをしていたトーニが、ケーキの材料の残りで作ったケーキを出したところ、公爵や客人たちから拍手喝采で受け入れられ、そのケーキを料理人の名前を付けてpane di Toni(又は pan del Ton トーニのパン)と命名することとなりました。その時からイタリアでは、「トーニのパン」すなわちパネットーネを食べて祝うこととなりました。

単語帳

音楽用語で学ぶイタリア語 その3

カンタービレ(cantabile 歌うように)やスケルツァンド(scherzando たわむれるように)などは、どんな気持ちで演奏したらよいかを指示する言葉で曲想標語と言います。

C.曲想標語

(1) agitato 音楽用語:興奮して
イタリア語の意味と使い方:動詞agitare「振る、(気持ちを)かき乱す)」の意味です。
mare agitato(荒れ模様の海)、Quella notizia mi ha agitato.(あのニュースは私を動揺させた)
(2) appassionato 音楽用語:熱情的に
イタリア語の意味と使い方:passione(情熱)からくる言葉。「情熱的な」「熱中した、大好きな」の意味です。
Sono appassionato della musica italiana.(私はイタリア音楽に夢中です)
(3) brillante 音楽用語:はなやかに
イタリア語の意味と使い方: 「ダイヤモンド」「輝く、輝かしい」
luce brillante(閃光)、carriera brillante(輝かしい経歴)
(4) cantabile 音楽用語:歌うように
イタリア語の意味と使い方:cantare(歌う)からくる言葉。「歌いやすい」「歌うように」の意味です。
Il motivo di questa canzone è cantabile.(この歌のテーマは歌いやすい)
(5) tranquillo 音楽用語: 静かに
イタリア語の意味と使い方:「静かな」「穏やかな」「落ち着いた」の意味です。
mare tranquillo(穏やかな海)、uomo tranquillo(物静かな男)
(6) capricioso 音楽用語:気まぐれに
イタリア語の意味と使い方:「気まぐれ、わがまま、移り気な」を意味します。carattere capricioso(気ままな性格)、pizza capricciosa(いろいろな具の入ったピッツァ)
(7) dolce 音楽用語:柔和に、優しく
イタリア語の意味と使い方:「お菓子やケーキのような甘いもの」、形容詞は「甘い」「優しい」「柔和な」の意味です。
La dolce vita(映画:甘い生活)、sguardo dolce(優しいまなざし)、dolce come il miele(蜜のように甘い)
(8) espressivo 音楽用語:表情ゆたかに
イタリア語の意味と使い方:esprimere(表現する)からくる言葉。古くは「絞り出す」とか「引き出す」の意味があり、エスプレッソコーヒー(espresso)は、esprimereの過去分詞で、絞り出して、うまみを引き出したコーヒーを意味しています。espressivoは、「表現に富む」の意味です。
capacità espressiva(表現能力)、gesto espressivo(表情豊かなしぐさ)
(9) grazioso 音楽用語:優美に
イタリア語の意味と使い方:grazia(優美)という意味の他に、神の「恩恵」や「感謝」を表わす言葉でもあります。graziosoは「可愛らしい」「上品な」「感じのいい」の意味です。
sorriso grazioso(感じのいい微笑)、con movenze graziose(上品な物腰で)
(10) scherzando 音楽用語:たわむれるように
イタリア語の意味と使い方:scherzo(いたずら)からくる言葉。
Durante la festa i ragazzi si divertono scherzando.(パーティの間、子供たちはふざけながら楽しんでいます)

その他に、comodo(気楽に、ほどよく)、leggiero(軽快に)、giocoso(おどけて、愉快に)、maestoso(荘厳に)、marziale(行進曲ふうに)、marcato(はっきりと)、pastorale(田園ふうに)、pesante(重々しく)などがあります。

また前置詞や速度標語と一緒に、con spirito(元気に)、sotto voce(やわらかい音声で)、sempre legato(絶えずなめらかに)、con affetto(情愛を持って)、andante cantabile(ゆっくりと歌うように)などのように使われます。

「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」
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