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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ローマ歴史地区(Centro storico di Roma)その16
サンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会(Basilica di Santa Maria sopra Minerva) 1980/1990年登録


スケッチ画 樋口佳代

 パンテオン神殿のすぐ脇、目立たないところにひっそりとたたずんでいるのが、サンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会です。イタリア語でソプラとは「上の」と言う意味で、古代のミネルバ神殿の遺跡の上に建てられた教会という意味です。しかし当時周辺に建っていた3つの神殿のうち、実際にはイシスの神殿の上に建てられたということです。
 教会前のミネルバ広場には、ベルニーニ作のオベリスクを背中に載せた象(1667年 スケッチ画)が建っています。ベルニーニは、当時広く読まれていたフランチェスコ・コロンナ(Francesco Colonna)の小説「ポリフィールの愛の戦いの夢」(Hyponerotomachia Poliphili)に触発され、挿絵版画からヒントを得て作ったとされています。オベリスクを背負った石の象が、横を振り返った表情と動きは大変ユニークでベルニーニの特徴がよく表れています。1736年、シチリアのカターニアのドゥオーモ広場にある「象の泉」は、ミネルバの象を真似てオベリスクと象の組み合わせを作ったということです。
簡素なファサードの右側には、16世紀から19世紀のテベレ川増水時の水位を表すプレートがいくつもはめ込まれています。この辺りは低湿地で、たびたびテヴェレ川の洪水の被害を受けたことを物語っています。
 ゴシック様式の教会には欠かせないバラ窓が、三つの正面入り口の上部にあります。ローマでは珍しいゴシック様式の教会です。内部は、地味な外観とは裏腹に、広く壮麗な聖堂です。青い天井は宇宙を表し、金色の星と聖人たちが描かれており、訪れるものを迎入れてくれます。
主祭壇の左の柱前には、十字架を持った彫像があります。ミケランジェロ作の『あがないの主イエス・キリスト』(Redentore)です。
主祭壇の下には聖カテリーナの遺骨が祀られています。教皇庁がフランスのアヴィニョンに移されていた時期、ローマに戻すよう尽力した聖女。シエナの出身です。彼女は1380年にこの近くの修道院で死去、聖女に列せられイタリア全体の守護聖人となっています。
フィレンツェのサン・マルコ修道院の「受胎告知」など数々の名作を残したフラ・アンジェリコ(1387-1455)のお墓があります。彼はオルヴィエート大聖堂の絵を描くためにオルヴィエートに滞在中、ローマ教皇に命じられてローマに移り、ニコラウス5世の礼拝堂の絵画などを制作していましたが、1455年に亡くなり、この教会に埋葬されました。マッダレーニ・カピフェロ礼拝堂に彼のお墓があります。またカプラニカ礼拝堂には、彼の作品「聖母子像」(1499)を見ることが出来ます。

カラファ礼拝堂(Cappella Carafa):
ナポリの枢機卿オリビエーロ・カラファが、ドメニコ会士である大神学者聖トマス・アクイナス(Tommaso d'Aquino 1225-1274)に捧げたものです。翼廊の右奥には、フィリピーノ・リッピ(1457-1504)の「聖母被昇天」などのフレスコ画でびっしりと埋め尽くされており、飛び回る天使たちの自由な姿が伸びやかに描かれています。祭壇の上には、聖トマス・アクイナスがカラファ枢機卿を祝福されたマリアに紹介している様子が描かれています。
 最後に、この教会の付属修道院には、かつて異端審問所があり、あのガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 1564-1642)がそこで裁判にかけられた。ガリレオは審判に屈したものの「それでも地球は回っている」(地動説)と信念は曲げなかったという。あの有名なエピソードの舞台が、まさにこの場所でした。

■サンタ・マリア・ソプラ・ミネルバ教会のガイドと写真
http://www.basilicaminerva.it/

■カターニアの象の泉
http://it.wikipedia.org/wiki/Fontana_dell'Elefante

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第32回

このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にでもわかるようにまとめています。また「単語帳」のコーナーを設けていますので、少しずつ単語や簡単なフレーズを覚えるようにして下さい。

変意語について

イタリア語では、名詞、形容詞、副詞の語尾を操作していろいろな意味を持たせます。
例えば食卓で使うスプーンでも、スープ用のスプーン(cucchiaio)もあり、コーヒー用のスプーン(cucchiaino)もあり、料理に使う大きなスプーン(cucchiaione)もあります。普通サイズのスプーン(cucchiaio)の語尾に接尾辞を付けてその違いを表します。変意語には、「縮小・親愛」「拡大」「軽蔑」を表す語尾があります。

名詞の場合: bacio(キス) bacino, bacetto(小さなキス) bacione(大きなキス)
pane (パン) panino(パニーノ) panettone(パネットーネ)
形容詞の場合: povero(みすぼらしい) poverino(ちょっと可愛そうな) poveraccio(気の毒な)
副詞の場合: bene(上手く・良く) benino(なかなか上手く) benone(とても上手く)

また人の名前に付けることもあります。

Piero(ピエロ) Pierino(ピエロちゃん)
Giuseppe(ジュセッペ) Giuseppino(ジュセッペちゃん)

A.縮小・親愛を表す語尾(-ino/a, -etto/a, -ello/a, -cello, -cino, -uccio/a, -uzzo/a)

gatto(猫) gattino(かわいい子猫)
lume(灯火・ランプ) lumicino(薄明かり・小さなランプ)
poco(少し) pochino(ほんの少しの)
fiume(川) fiumicino(小川)
pallone(サッカーなどのボール) palloncino(風船)
caro(親しい) carina(可愛らしい女の子)
spago(紐) spaghetti(スパゲッティ)
fiore(花) fioretto(小さな可愛い花)
libro(本) libretto(小雑誌・オペラの台本)
casa(家) casetta(小さな家)
sacco(袋) sacchetto(小さい袋)
chiesa(教会) chiesetta(小さな可愛い教会)
giacca(上着) giacchetta(ジャケット)
campana(鐘) campanella(小さな鐘・鈴)
forno(オーブン) fornello(レンジ)
monte(山) monticello(小さい山)
vento(風) venticello(そよ風)
viola(楽器のビオラ) violoncello(チェロ)
casa(家) casuccia(可愛らしい家)
caldo(暑い) calduccio(暖かくて気持ちのよい)
occhi(目) occhiuzzi(可愛らしい目)

B.拡大を表す語尾(-one, -ona, -otto, -ozzo)

porta(ドアー) portone(門)
carta(紙) cartone(厚紙、段ボール紙)
sala(広間) salone(大広間)
scarpa(靴) scarpone(登山靴)
simpatico(感じの良い) simpaticone(とても感じが良い)
sciocco(馬鹿な) scioccone(大馬鹿な)
curioso(好奇心を持った) curiosone(大変な好奇心持ち)
ragazzo(男の子) ragazzotto(体格のよい男の子)
grosso(大きな) grossotto(かなり大きな)
basso(低い) bassotto(ずんぐりした)
giovane(若い) giovanotto(若者)

C.軽蔑を表す語尾(-accio/a, -astro/a, -onzolo/a, -iciattolo/a, -ucolo/a, -aglia)

tempo(天候) tempaccio(ひどい天気)
cane(犬) cagnaccio(ダメ犬、野良犬)
giornata(一日) giornataccia(嫌な一日)
ragazza(女の子) ragazzacciaragazzaglia(不良の女の子)
figura(姿) figuraccia(みっともない姿)
parola(言葉) parolaccia(汚い言葉・卑わいな言葉)
rosso(赤い) rossaccio(赤茶けた)
male(悪い) malaccio(とても悪い)
poeta(詩人) poetastro(三文詩人)
verde(緑色の) verdastro(汚い緑色の)
dolce(甘い) dolciastro(甘ったるい)
medico(医者) mediconzolo(やぶ医者)
uomo(男) omiciattolo(小さくて醜い男)
maestro(先生) maestrucolo(悪い先生)
gente(人々) gentaglia(卑しい連中)
giallo(黄色) giallognolo(黄ばんだ)
bianco(白い) biancchiccio(白っぽい・やや白い)

単語帳

音楽用語で学ぶイタリア語 その2

イタリア語と最初に出会うのは、学校での音楽教育ではなかったでしょうか。フォルティシモ、アダージョ、アッレーグロなどの音楽用語を覚えていると思います。
ここでは、音楽用語の意味と、実際に使われているイタリア語の意味と使い方を学習したいと思います。
音楽用語は、種々の記号や言葉を使用して、演奏者に対して、演奏上の細かい指示を与えるもので、イタリア語で表記されるのが一般的です。
ピアノ(piano 弱く)やフォルテ(forte 強く)のように、楽曲の強弱を表すために使用されるものを強弱記号と言い、ラルゴ(Largo)やアダージョ(Adagio)のようにテンポを指示する言葉を速度標語と言います。またカンタービレ(cantabile 歌うように)やスケルツァンド(scherzando おどけて、滑稽に)などは、どんな気持ちで演奏したらよいかを指示する言葉で曲想用語と言います。

A. 強弱記号

ppiano 弱く)、fforte 強く)、 mmezzo 少し・やや)の組み合わせで表記します。
mezzoは、イタリア語では「半分の、中間の」の意味です。

pppianissimo 非常に弱く)のように、語尾に最上級を表す-issimoを付けます。
mpmezzopiano やや弱く)
fpfortepiano 強く急に弱く)

その他には、しだいに強弱を変えるクレシェンド(crescendo だんだん強く)、デクレシェンド(decrescendo だんだん弱く)やディミヌエンド(diminuendoだんだん弱く)などがあります。

B. 速度標語

(1) Largo 音楽用語:遅く(Larghetto)
イタリア語の意味と使い方:「幅が広い、ゆったりした」の意味で、速度を表す言葉ではありません。
Questo maglione è troppo largo per me.(私にはこのセーターは大きすぎる)
(2) Adagio 音楽用語:ゆるやかに
イタリア語の意味と使い方:ad agio「気軽に、のんびりと」からくる言葉で、「ゆっくりと、静かに」の意味です。
chiudere la porta adagio(静かにドアーを閉める)
(3) Andante 音楽用語:歩く速さで・ゆっくりと
イタリア語の意味と使い方:andare「行く」の現在分詞。「平凡な、並の、気取らない」の意味です。
merci andanti(二級品)、tessuto andante(安物の布地)
(4) Allegro 音楽用語:速く・幅広くゆるやかに(Allegretto)
イタリア語の意味と使い方:「陽気な、楽しい」の意味です。
carattere allegro(陽気な性格)、faccia allegra(楽しげな顔)
(5) Moderato 音楽用語:中くらいの早さで
イタリア語の意味と使い方:「控え目な、抑えた」の意味です。
velocità moderato(控え目なスピード)、a fuoco moderato(中火で)
(6) Grave 音楽用語:非常に遅く
イタリア語の意味と使い方:「重大な・重い・荘厳な」の意味です。
malattia grave(重病)、uomo grave(威厳のある人)
(7) Lento 音楽用語:遅く、ゆっくり
イタリア語の意味と使い方:「遅い、ゆっくりした、のろい、ゆるんだ」の意味です。
lento come una lumaca(ナメクジのようにのろい)、a fuoco lento(中火で)

 その他に、Animato(はつらつとした、生き生きとした)、Vivace(活気のある)、Vivo(生き生きと)、Presto(速く、急いで)などがあります。

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