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「イタリア世界遺産の旅」と「誰でもわかるイタリア語」

石黒 秀嗣

ローマ歴史地区(Centro storico di Roma)その12
チルコ・マッシモ(Circo Massimo) 1980/1990年登録


スケッチ画 樋口佳代

 フォロ・ロマーノのパラティーノの丘からカラカラ浴場(Terme di Caracalla)へ向かう途中にアヴェンティーノの丘があり、その谷間に長方形をした巨大な競技場チルコ・マッシモ(Circo Massimo)があります。現在は当時の形跡はほとんどなく、緑の芝生が広がっている公園としてローマ市民の憩いの場所となっており、コンサート会場やその他のイベントが催されています。
 古代ローマの一般庶民にとっての三大娯楽場は、浴場(Terme)、円形闘技場(Circo, Anfiteatro)、劇場(Arena, Teatro)があります。
 チルコ・マッシモは、古くは王政ローマの時代にまで遡り、最初のエトルリア人の五代目の王タルクィニウス・プリスクス(在位:前616-前579)によってチルコ・マッシモの原形が造られたと伝えられています。ローマ帝国最盛期には歴代の皇帝たちによって拡張が行われてきました。
 紀元前46年、カエサルがローマ市民の需要に応じて大規模な整備と拡張を行いました。長さ621m、幅118mにも及び、収容人数は25万人以上と言われています。この時に競技場中央に全長が340mスピーナ(中央分離帯)が造られ、オベリスクや小神殿などで飾りました。初代皇帝アウグストゥスがエジプト遠征の折に持ち帰ったラムセス2世のオベリスクや、コンスタンティウス2世がテーベから持ってきたトトメス3世のオベリスクをここに建てました。これらのオベリスクは、16世紀、ローマ教皇シクストゥス5世によって、ポポロ広場とサン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂広場に移築されることになります。
 カエサルは、ここで1000人余りの歩兵と、600人の騎兵、40頭の象による模擬戦を催しました。祝祭に開催される戦車競走は人気があり大変重要な一大イベントでした。スピーナの周囲を反時計回りに四頭建ての二輪戦車が7周して争う競技です。映画『ベン・ハー』でもおなじみの戦車レースが繰り広げられたのです。
 競技場の向こう側には、パラティーノの丘(スケッチ画)のドムス・アウグスターナ(ドミティアヌス帝の宮殿)とセヴェルス宮殿などの遺跡群が見えます。ハドリアヌス帝(在位:117138)の時代には、競技場を囲む観客席の、パラティーノの丘の側の一部を宮殿に連結し、観覧席として最前列から最上段までを皇帝たちが占めていました。
 皇帝たちは競技を高台から見て楽しんでいたのでしょう。また競技場の観客席も年々増やし、一般市民が競技を楽しみながら皇帝たちを見上げるように工夫されていたようです。

■チルコ・マッシモのガイドと写真
http://www.romanoimpero.com/2009/12/circo-massimo.html

新シリーズ
◆誰でもわかるイタリア語 第28回

このシリーズ「誰でもわかるイタリア語」では、イタリア語の基礎を文法用語に頼って説明することを出来るだけ避け、誰にでもわかるようにまとめています。また「単語帳」のコーナーを設けていますので、少しずつ単語や簡単なフレーズを覚えるようにして下さい。

日本のアニメや漫画がイタリアでも受け入れられ、とくに子供や若者たちの間で親しまれています。ところで漫画をイタリア語でフメッティ(fumetti)といいます。漫画の「吹き出し」部分が、雲やけむりのような形をしているためフーモ(fumo けむり・湯気)みたいであるというところから漫画(fumetto)と呼ばれるようになりました。

日本語では(A)擬音語(擬声語)や(B)擬態語で表す言葉が多く使われます。擬態語は、一般的には、物が発する音を言葉で表す擬音語(擬声語)はカタカナで表し、一方状態や感情などの音を発しないものを言葉で表す擬態語はひらがなで表します。
しかしイタリア語にはそのような言葉は少なく、翻訳される方は言葉の文化の壁にぶつかり違和感を感じながら、より近い訳語を探すのに躍起になっていることと思われます。

宮崎駿監督のアニメ「崖の上のポニョ」(Ponyo sulla scogliera)はイタリアでも大人気で、主題歌の単調な曲と歌詞は子供たちの脳裡に残りやすく、日本語が分からないイタリアの子供たちはからだで感じ自然に曲にのってアニメの世界に夢中になってしまいます。しかし、日本語の歌詞の半分ぐらいが擬音語・擬態語で書かれています。イタリア語には特に擬態語にあたる言葉が大変少なく、イタリア語の歌詞を見る限り、かなり工夫して翻訳されていることが分かります。

「崖の上のポニョ」(Ponyo sulla scogliera)の主題歌

Ponyo, Ponyo, Ponyo, pesciolina tu ポーニョ ポーニョ ポニョ さかなの子
dal mare tutto azzurro, sei giunta fin quassù! 青い海からやってきた
Ponyo, Ponyo, Ponyo, sofficiosa sei ポーニョ ポーニョ ポニョ ふくらんだ
pancino tondo tondo, bambina tu!... まんまるおなかの女の子
Corro fin là... hop-hop, più sù... ペータペタ ピョーンピョン
che bello aver le gambe, provo a trottar! 足っていいな かけちゃお!
Stringo di più... faccio ciao-ciao... ニーギニギ ブーンブン
che bello aver le mani, provo a strizzar おててはいいな つないじゃお!
Se con quel bimbo saltelli, anche il tuo animo danza... あの子とはねると 心もおどるよ
Boccheggiamo e bacio! Boccheggiamo e abbraccio!
Quel bimbo tu l'adori sì! Tutta rossa...
パークパクチュッギュッ! パークパクチュッギュッ!
あの子が大好き まっかっかの

Ponyoふくらんだ」は、「やわらかい」とか「ふわふわした」を意味するsofficeという形容詞からsofficiosaと言う造語を使っています。また「まんまるおなかの女の子」は、「丸い」を意味するtondoを繰り返しtondo tondoとイメージを膨らませています。
しかし日本語の歌詞にある擬態語「ペータペタ ピョーンピョン」も「ニーギニギ ブーンブン」もイタリア語の歌詞からは消えてしまい、イタリア語でその擬態語に近い意味で訳しています。「ペータペタ ピョーンピョン」は、ぺたぺたと歩いたり、ピョーンピョンと跳ねたりしている様子を「むこうまで走りもっと上まで」と訳し、「足があるってことは本当に素晴らしいな!歩いてみよ!」と続き、また「ニーギニギ ブーンブン」は、手をにぎって、手をぶんぶん振っている様子を「もっと強く手を握って、(手を振って)こんにちは!手があるってことは本当に素晴らしいな!」と続きます。また「パークパクチュッギュッ! パークパクチュッギュッ!」では、「魚がぱくぱくする」という動詞boccheggiareを使っています。「チュッギュ!」は、「チュウ(キス)してギュッと抱きしめる」という意味から、「キス」を意味するbacioと「抱きしめる」を意味するabbraccioを使って韻を踏んだ訳となっています。

A.擬音語・擬声語(onomatopea)について

 イタリア語においては擬音語または擬声語(onomatopea)は、文法的には間投詞の一つとされています。Ciao!(やあ!バイバイ!)や、Ahi!(痛い)など、またBau, bau!(犬)やMiao(猫)などの動物の鳴き声や、Ecci!(ハクション)やTic, tac(時計の音)など物が発する音を字句で模倣したものをいいます。また言葉を覚える前の赤ちゃん言葉もこの仲間に入れてもよいと思います。

■最初に発する赤ちゃん言葉

teno(treno)列車 veni(vieni)来て! bata(basta)もういい!
nonna(dormire)眠いよ! bana(banana)バナナ ciucio(succhiotto)おしゃぶり

■間投詞

Ah!(ああ、なるほど、そうか) Mamma mia!(困った、どうしょう!)
Pss!(しーっ!話し声を制する言葉) Bè!(=bene さあ、ほら、よし)

■物が発する音:その多くは英語からの影響が大きい

Drin, drin(リンリン:ベルの音) Tin, tin(チンチン:鈴などの金属のふれる音)
Brr!(ブルブル:震えや寒さの状態) Bum!(ドカン:爆発音)
Toc toc(トントン:ノックの音) Bang!(バーン:ピストルの音)
Patatrac!(パターン:物の落ちた音)  

■動物の鳴き声:人が泣く場合はpiangereという動詞を使います。しかし動物の場合はいろいろな動物がいます。獣一般にはgridareという動詞を使います。鳥や昆虫にはcantareという動詞で表します。しかし動物の場合にはいろいろな鳴き声があり、動物によって異なります。
例えば、「犬が鳴く」は、一般的にはabbaiare「吠える」を使いますが、guaire「キャンキャン鳴く」とかmugolare「クンクン鳴く」という動詞も使います。
動物の擬声語も日本語とは随分違った表現をするので注意しましょう。

犬(cane) Bau bau(バウバウ) abbaiare
猫(gatto) Miao(ミアーオ) miagolare
馬(cavallo) Iiih(イイイーッ) nitrire, sbuffare
ロバ(asino) Hi-hoo(イーオー) ragliare
小鳥(uccellino) Cip cip cinquettare
鶏(gallo) Chicchirichi(キッキリキー) cantare
めんどり(gallina) Coccodè(コッコデ) starnazzare
コオロギ(grillo) Cri cri(クリクリ) frinire
アヒル(papera) Qua qua(クワクア) schiamazzare
カエル(rana) Gra gra, cra cra(グラグラ、クラクラ) gracidare
ネズミ(topo) Squit squit(スクイット スクイット) squittire
カラス(crovo) Cra cra(クラ クラ) gracchiare
ブタ(maiale) Oink oink(オインク オインク) grugnire
子羊・羊・山羊(agnello/pecola/capra) Beee(ベェー) belare
雄牛・牝牛(bue, mucca) Muuh(ムゥー) muggire
ヒヨコ(pulcino) Pio pio(ピオピオ) pigolare
ハエ(mosca) Zzz(ズズズ) ronzare

単語帳

 イタリア語では人の様子とか行動を動物に例えることがよくあります。動物のイメージから来る場合が多いようです。例えば犬の場合、fedele come un cane「犬のように忠実」と言うように良いイメージで使う一方で、trattare come un cane「犬のようにじゃけんに扱う」とか fa un freddo(caldo) da cani「恐ろしく寒い(暑い)」などのように悪いイメージで犬を例えることがあります。今回は代表的な動物を、イタリア語でどの様な例えかたをするのかまとめてみました。

ネコ(gatto)
dispettosa come un gatto(ネコみたいに無礼・意地悪)
ロバ(asino)
testarda come un asino(ロバのように頑固者)
カタツムリ(lumaca)
camminare come una lumaca(のそのそと歩く)
キツネ(volpe)
furbo come una volpe(キツネのように悪賢い)
コオロギ(grillo)
avere il cervello di un grillo(あまり賢くない)
ガチョウ(oca)
essere un'oca(まぬけだ、ばかだ)
羊(pecora)
Siete un branco di pecora!(君たちは腰抜けばかりだ)
鶏(gallina)
Schiamazza come una gallina(鶏のようにうるさく泣きわめく)
カメ(tartaruga)
lento come una tartaruga(カメのようにのろい)
ウサギ(coniglio)
cuore di coniglio(臆病者)
蚊(zanzara)
noioso come una zanzara(蚊のようにうるさい)
ブタ(maiale)
sporco(不潔な人、大食漢、でぶの意味)
蝶(farfalla)
incostante・infedele(移り気な人、浮気者の意味)
ヘビ(vipera)
essere cattiva・furva(悪賢い;腹黒い;ずる賢い人)
蛙(rospo)
essere brutto come un rospo(醜い人;無愛想な人)
孔雀(pavone)
essere venitoso come un pavone(孔雀のように見えっばりだ)
リス(scoiattolo)
agile・svelto(すばしこい人)
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