文化講座
ヴェローナ Verona 2000年登録
スケッチ 樋口佳代
イタリア北西部の平野にひらけた町です。町の中央を大きく蛇行して流れているアディジェ川(Fiume Adige)は、アルプス山脈に源を発してアドリア海へと繋がっています。上流のブレンネロ峠を越えてイタリア半島とヨーロッパを繋ぐ最も便利で重要な経路として数千年も前から開けていました。その意味でヴェローナは「イタリアの門」と呼ばれるようになりました。古代ローマの時代から交通の要所として栄えた町で、町の中央にどっしりと陣取っているのが古代ローマ時代の円形闘技場アレーナ(Arena)で、紀元1世紀に建てられたものです。高さ30m、外壁の周囲391m、44段の階段状の観覧席(収容人数は2万2千人)、精円形の競技場は直径が110×139mと現存するものの中ではローマのコロッセオに次ぐ規模です。
またイタリアで最も保存状態がよく、今では、7月から8月には野外オペラが上演され、ヴェローナの町は国際都市に変貌し活気のある町となります。
6世紀、北イタリアにランゴバルド王国が建設された時には、その首都であったこともあります。ヴェローナが最も栄えるのは、12世紀、自治都市(コムーネ)になり発展しました。ヴェローナの歴史はその後、デッラ・スカラ家、ミラノのヴィスコンティ家、パドヴァのカッラーラ家などの支配層が代わり激しく対立しました。中世の都市国家ヴェローナも神聖ローマ皇帝派(ギベッリーニ党)とローマ教皇派(グエルフィ党)の二つの勢力に分かれ激しく対立していました。15世紀にはヴェネツィア共和国の支配下に入り、商業が栄え文化都市としても発展しました。
ヴェローナの町を歩いていると、建物の上の王冠の形をしたM字型の胸壁がよく目に入ってきます(スケッチ画)。これは神聖ローマ皇帝派の目印であったのです。また「翼のある獅子」(サンマルコの獅子)の彫刻やレリーフもよく見かけます。これはヴェネツィア共和国のシンボルです。
ヴェローナは、悲恋物語「ロミオとジュリエット」の舞台の町としてもよく知られています。この話も教皇派のモンターギュ家(Montecchi)の息子ロミオと皇帝派のキャプレット家(Capuleti)の娘ジュリエットの二人が、この対立のため悲しい恋の終末を迎えなければならなかったと言われています。
さてこの「ロミオとジュリエット」の悲恋物語が「実話」なのか「伝説」なのかいろいろ議論があるところです。この話を有名にしたのは、勿論シェークスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」であることは紹介するまでもないでしょう。しかしシェークスピアはヴェローナはおろか、イタリアに足を踏み入れたことがないのも確かであります。よく知られているように、これはイタリアの作家マッテーオ・バンデッロ(Matteo Bandello 1484-1561)の小説をアーサー・ブルックが翻案した詩、「ロミアスとジュリエットの悲しき物語」を題材にしたものであり、ヴェローナからの巡礼者の語る話から生まれてきたとされています。文学史的にはこの物語は「伝説」という刻印が押されていますが、実話であるとすれば、中世の教皇派と皇帝派との対立の時代背景に由来するかもしれません。いずれにしろ、「ジュリエットの家」はカッペッロ通り(Via Capello)に煉瓦造りの建物があり、中庭に面した2階の窓には手頃なバルコニーが突き出ていて、いかにも恋の冒険がありそうな雰囲気を漂わせています。またアルケ・スカリージェレ通り(Via delle Arches Scaligere)には「ロミオの家」があり、ポンティエーレ通り(Via Pontiere)のカップチーノ修道院には「ジュリエットの墓」もあります。
観光客にとって悲恋の舞台となった美しい町ヴェローナをロマンティックに散策するのもいいのではないでしょうか。
■Veronaの写真
http://www.globopix.net/fotografie/verona_1.html
■Veronaへのアクセス
MilanoとVeneziaの中間に位置しており、特急で約1時間半。
■Verona県の観光公式サイト
http://www.tourism.verona.it
生きたイタリア語のフレーズ 第36回
今回は、推量を表現するフレーズをまとめてみました。
日常会話では、自分の意見などをいつも客観的に断定的に述べることは希なことではないでしょうか。例えば、Che ore sono adesso? 「今、何時ですか?」と聞かれて、時計を見て
Sono le otto e mezzo. 「8時半です」と正確に答える場合と、「多分(forse, probabilmente)」を表す副詞を持ってきて、Forse(probabilmente) sono le otto e mezzo.「多分、8時半です」と答える場合があります。
ここでは、動詞の時制とか法を変えることによって推量を表すフレーズを中心に学んでいきたいと思います。
■推量を表すフレーズ(1)
動詞の直説法・未来形には推量を表す用法があります。
- Saranno le otto e mezzo.
- サランノ レ オット エ メッゾ
- 8時半頃でしょう。
- Domani smetterà di piovere.
- ドマーニ ズメッテラ ディ ピオーヴェレ
- 明日は雨が止むでしょう。
- Questo sabato faranno sciopero gli autobus.
- クエスト サバト ファランノ ショーペロ リ アウトブス
- 今度の土曜日、バスがストライキをするそうです。
■推量を表すフレーズ(2)
動詞の条件法にも「(ひょっとすると)・・・ かもしれない」という推量を表す用法があります。
例えばpotereの条件法potrebbeを使つて、potrebbe essere・・・「・・・ かもしれない(ありうるかもしれない)」という意味の推量表現となります。
- Il compleanno di Maria potrebbe essere oggi.
- イル コンプレアンノ ディ マリーア ポトゥレッベ エッセレ オッジ
- マリアの誕生日は今日かもしれない。
- Questo libro potrebbe essere interessasnte.
- クエスト リーブロ ポトゥレッベ エッセレ インテレッサンテ
- この本はおもしろいかもしれない。
- Potrebbe essere divertente camminare sotto la pioggia.
- ポトゥレッベ エッセレ ディヴェルテンテ カッミナーレ ソット ラ ピオッジャ
- 雨の中の散歩も楽しいかもしれない。
- Lui potrebbe essere in grado di leggere la "Divina Commedia" in lingua originale.
- ルイ ポトゥレッベ エッセレ イン グラード ディ レッジェレ ラ ディヴィーナ コッメーディア イン リングア オリジナーレ
- 彼なら『神曲』を原書で読むことが出来るだろう。
- Potrebbe succedere qualche incidente.
- ポトゥレッベ スッチェーデレ クアルケ インチデンテ
- 何か事故が起きるかもしれない。
■慣用句può darsi che・・・は、
「che以下のことを自分自身に与えうる」という意味から「多分・・・だろう」「・・・おそらく・・・だろう」という意味の推量表現となります。ただしche以下での動詞は接続法の形になるので注意して下さい。
- Può darsi che questa macchina sia guasta.
- プオ ダルシ ケ クエスタ マッキナ シーア グアスタ
- この車は多分故障しているのだろう。
- Può darsi che Luigi non venga a scuola oggi.
- プオ ダルシ ケ ルイージ ノン ヴェンガ ア スクオーラ オッジ
- ルイージは今日、学校に来ないかもしれない。
- Può darsi che Carlo si sia dimenticato.
- プオ ダルシ ケ カルロ シ シーア ディメンティカート
- カルロは恐らく忘れたのだろう。
- Può darsi che Lucia sia già andata via.
- プオ ダルシ ケ ルチーア シーア ジャ アンダータ ヴィーア
- ルチーアはもう帰ってしまったのかもしれない。
■慣用句È possibile che・・・は、
「・・・かもしれない」「・・・ということもありうる」という意味、
またÈ probabile che・・・は、「おそらく・・・だろう」という意味の推量表現です。いずれもche以下での動詞は接続法の形になるので注意して下さい。
尚、probabileはもともと「ありそうな」という意味の語で、実現の可能性が非常に高いときに使います。またprobabileの前に、moltoやpocoをつけて、「・・・大いにありそうだ」とか「・・・ありそうにない」という形もよく使います。
- È possibile che Rita sia già partita.
- エ ポッシビレ ケ リータ シーア ジャ パルティータ
- リータはもう出発してしまったのかもしれない。
- Non è possibile che Luca non lo sappia.
- ノネ ポッシビレ ケ ルーカ ノン ロ サッピア
- ルーカがそのことを知らないはずはないだろう。
- È probabile che Luigi l'abbia capito male.
- エ プロバービレ ケ ルイージ ラッビア カピート マーレ
- 多分ルイージがそのことを誤解したんだろう。
- È poco probabile che Michele ci creda.
- エ ポーコ プロバービレ ケ ミケーレ チ クレーダ
- ミケーレがそれを信じるなんてありそうにない。