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インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

カラーコーディネーターに聞く色の活用術

栄中日文化センター講師
竹内 ゆい子

風土と色彩

 海外に行くと、日本にはない珍しい色使いの洋服やスカーフ、アクセサリーが目につき、色の専門家でありながら、私もついつい衝動買いしてしまいます。滞在先で買ったときは素敵に見えた洋服が、日本で着ると派手過ぎたり、反対に地味過ぎて着られなかった経験はありませんか?

 これは、地域の気候や風土に色が大きく関係しているからです。色は、太陽の光や空気の透明度、環境の色との対比によって、見え方が大きく異なります。つまり、美しく見える色はその地域によって異なるのです。例えば、ハワイやグアムなど日照率の強い太陽の光の下で買った水着が、日本でもきれいに見えるとはかぎらないのです。また、タイの仏教寺院などはゴールドや鮮やかな色で彩られていますので、多色配色の鮮やかなストールを巻いて歩いたって、環境の色に負けません。
 一般に、南国の地域では、鮮やかな暖色系の色が好まれ、北ヨーロッパのような日照率が低い地域では、色みを抑えた寒系の色が好まれるようです。 太陽光線の照度(明るさ)は地球の緯度と密接な関係があり、赤道付近の明るさを100%とすると北ヨーロッパ地域は25%程度だと言われています。明るい太陽光の下では、明るく鮮やかな色に対する反応が敏感になるのに対して、太陽光に恵まれない北ヨーロッパのような地域では、鮮やかさを抑えたニュアンスのある色に対する美的感度が高まるようです。このように、地球の緯度と太陽の光は関係が深く、私たちの色の見え方や嗜好にも大きな影響を与えていると考えられています。
 日本は緯度の異なる国ですから気候や風土の違いから好まれる色は異なってきます。例えば東京の日照率は45%で、空はくすんだような色です。この環境では、南国風の彩度の高い色は刺激が強すぎて浮き上がって見えてしまい、落ち着かない印象を与えるのです。逆に沖縄では太陽がさんさんと降り注ぎ、明るく鮮やか色が映えます。ハイビスカスのような植物の花の色も、華やかな色が多いですね。
 女性誌の地域別ファッションチェックを見ると、その差は歴然です。東京では、ダークブルー、チャコールグレー、ベージュ、パステルカラーなどの優しい色やシルバーが好まれており、大阪では、レッド、オレンジ、ピンク、イエローなどのはっきりした色やゴールドが好まれているようです。
 また、日本は四季がはっきりしているので季節によっても、好まれる色が違ってきます。春なら桜の花の淡いピンクや若葉の黄緑やパステル系の優しい色の洋服が街にあふれます。夏は、ビーチに映える原色、梅雨時のスモーキーな色やブルー系の色は、涼しさを感じさせて人気です。秋になれば、紅葉した山の色やカーキやブラウンなどのこっくりした色が目につきます。冬は、白、グレーなどの無彩色が雪の日を連想させます。好きな色、嫌いな色は個人差がありますが、大衆を対象にした様々な商品やファッションに嗜好色が使われているのは、色が購買動機に大いに関係しているからです。旅行に行ったら、街にあふれる色を観察してみるのも面白いものです。

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