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インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

カラーコーディネーターに聞く色の活用術

栄中日文化センター講師
竹内 ゆい子

民族服の色彩

 人間の一生には節目となるいくつかの儀式があります。親が子を思い、家族の幸せを願う、その思いのあらわれが様々な儀式となっています。日本では、七五三、成人式、還暦、婚礼、そしてお正月の祝いなどの儀式がそれに当てはまります。普段身に付けることのない衣装を身にまとい、特別な場へと詣でる儀式は、世界に共通した伝承文化です。
 民族服は、世界の諸民族がそれぞれの地域の風土や生活に適応させて長い年月を通して着てきた伝統服です。日常的に民族服を身につけることの少なくなった今日であっても祭りや婚礼などの儀式にハレ着として身につけるのは、これらの儀式が民族意識と文化の確認の場となっているからではないでしょうか。民族衣装のデザインですが、そこにはおもしろいことに色が大変意味深い要素として存在します。これは朝日新聞社編「世界の衣裳」を参考にしましたが、例えば黄色はサルディニアの山岳地帯オルゴソロ村の民族衣装によく使われます。サフランで染めた黄色い頭巾をかぶり、黄色エプロンをつけ、花嫁衣裳の黄色い下着は夫となる人に贈られるという古い習慣があるそうです。
 また「赤と黒はスペインの色だ」とありました。「赤と黒の対照的な色は、闘牛士に刺され、真っ赤な血を流して倒れる黒い牛と、オーレと声をからして熱狂するスペイン人の騒ぐ血を象徴している」ということです。他にはインドでは花嫁衣裳は白ではなく赤なのは、赤は神聖な色とされているから、などもあります。日本における民族衣装は着物ですが、京友禅のような艶やかな色合いとワビ・サビの精神による鈍い色あいの両極端な色が存在します。
 また、お隣の韓国は、白衣民族といわれるほど白衣を好んできた民族です。女性や子供が着る鮮やかな彩のチマ・チョゴリがある一方、その白衣は、公、また儀礼には欠かすことのできない重要な意味を持つものなのです。
 中国では曖昧な色はあまり好かれず、逆に原色に近い色が好まれ、チャイナ・ドレスは赤や青といった極彩色をベースにしたカラフルな衣装です。民族服には、それぞれの民族の伝統や、色に象徴される意味が如実に反映しています。
 情報化社会の現代において、情報の発達がリアルタイム化し、ファッションは同時世界化してしまいました。また、人生節目の儀式は、ライフスタイルの変化で年々形骸化していく傾向にあります。伝統文化を見直し、未来に継承していきたいものです。
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