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カラーコーディネーターに聞く色の活用術

栄中日文化センター講師
竹内 ゆい子

色の感情効果

 同じ画題のものを一方は白黒の線のみで描き、他方は色をつけます。この二 つの絵を被験者に見せて記憶させてみると、色のついている方がよく記憶されます。形は知性に働きかけ、色は感情に働きかけるといわれていますが、感情まで も揺れ動かす彩色画の方が人に強烈な印象を与えます。だから、忘れないのです。色の刺激は、連想へと働きかけ、人の心を動かし、感情が誘発されます。色に 対する感情を色彩感情といいます。色彩がどのような感情効果を生むのかまとめてみました。

(1)エピソード的色彩感情

幼いころの恐い経験等が色と結びつき、無意識のうちにその経験を思い出してしまうというような個人的な体験からくる色彩感情。

(2)文化的色彩感情
  赤から連想する色といえば、日本人はりんごや太陽を挙げますが、フランス人は緑からりんごをイメージし、西ヨーロッパでは黄色から太陽をイメージします。同じ色であっても民族や文化が異なれば、色がもたらす意味が異なる場合があります。

(3)普遍的色彩感情

赤い色からは、暑い、激しい、情熱、青い色からは、冷たい、冷静、清浄といったように誰もが同じように受け取る感情があります。民族、文化を超えて共通する色彩感情もあります。

 色の感情効果は絵画や映画、デザイン等、生活の隅々で感じることができます。

 たとえば、ピカソの代表作「ゲルニカ」はモノトーンで描かれています。1937年、母国スペインの都市ゲルニカが無差別爆弾を受け、多くの犠牲者が出た というニュースを聞いたピカソは、怒りと悲しみを込めて、一気にこの絵を完成させました。「色彩は救いを意味する」と言って、ピカソは「ゲルニカ」に色が ない訳を説明しています。ピカソの画風は、「青の時代」「バラ色の時代」というように時代とともに変化していき、その時の心理状態が作品に反映されています。色はいつも私たちに何かを訴えていますので、意識して読み取ってみると生活が楽しくなります。

《参考》

「青の時代」(1901〜1904年)

友人の自殺にショックを受けたピカソは、貧困や孤独、絶望をテーマにした冷たい青色を多く使った絵画を制作するようになりました。「青の自画像」が有名です。

「バラ色の時代」(1904〜1907年)

暗い青の時代から急に明るい色調の絵画を描きだしたきっかけは恋愛でした。この時代のピカソはサーカスや旅芸人を題材にした明るくにぎやかな絵画を描いています。「旅芸人の家族」が有名です。
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