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茶の湯文化は日本のグローカル文化

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

わび・さびの茶の湯文化 その15

麁相の心はレトロモダニズムがキー・・1

前回までに取り上げて来た「麁相」の心は、岡倉天心(覚三)が「茶の本」(The Book of Tea)で述べている「不完全性の美」、赤瀬川原平が「芸術原論」で指摘している「マイナス思考」(負の思想)に通ずる心と思います。

昨今では、「不完全性の美意識」、「マイナス思考」と言っても、あまり受け入れられない時代風潮となっています。
しかし、今日的には、必要不可欠を求める心に通ずる思考だと私は思っています。
オタピー茶の湯のキーワードたる「麁相」の心に通ずる「レトロモダニズム」(Retro Modernism)思考だと思うのです。

「不完全性の美」の心では、次のように言えます。
月の美しさの最高は、満月、十五夜の月に求めるのではなく、雲間に見え隠れする月に感ずる心です。
また、満月を越える欠けた月に美を求める心が「不完全性」を尊ぶ心なのです。
茶の湯の茶碗で言えば、磁器的な対称的完全性に対して、陶器的な非対称的な歪みの不完全性に感ずるのです。
しかし、「不完全性」は、中途半端、いい加減さを良しとするのではなく、完全性を超える不完全性でなければなりません。

「マイナス思考」、「負の思想」は、今日、ますます必要不可欠な考えとなっています。
必要不可欠を求める心です。
地球環境資源を守るためには、今までのような発展思考では限界となっています。
地球温暖化現象は、その逼迫した対策が求められています。
石油などを用いた工業生産活動は拡大すればよい時代は終わりました。
最近の金融派生商品による利益追求の在り方についても言えます。
人間社会の争いで核爆弾など高エネルギー兵器の使用は、人類にとっての地球環境の崩壊を招くことになります。
また、遺伝子・クローン技術やES細胞・iPS細胞などを利用した医学・医療にあっても、発展した技術を科学的に可能となったからといっても人間に利用してよいかと考えなければならなくなっています。

以上のように、レトロモダニズムをキーとする「麁相」の心に通ずる「不完全性の美意識」や「負の思想」で考慮することなく、現代は成り立たなくなっているのです。
但し、否定的思考とは区別が求められます。

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