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インターネット公開文化講座

文化講座

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グローカル文化の喜び

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

EXPO 2005 AICHI JAPAN・・その8

先日、陶芸家・加藤景徳(敬也)が、豊田市となった小原和紙の里・小原に築いている登り窯を焚くというので手伝いに来るようと呼ばれた。
小原に行く途中、長久手の万博会場跡地を通り、見ることが出来た。
企業館などは壊されたりして、観覧車が静かに佇んでいた。

今回、愛知万博を一番楽しみ、訪れることが生き甲斐となり、世界のあれこれを知り、触れ、活気づいたり、活気づけられたのは、全期間入場券を買ったり、貰ったりして利用した人達ではなかろうか。
特に、何度も、万博会場に通った高齢社会の人達だったのでは。
今日に比して、海外旅行があまり自由でなかった時代を過ごし、戦後の経済発展に努力した勤勉な日本人を代表するイメージとなった世代だ。
目まぐるしい社会構造の変転による世代間の差を強く感じている人たちとも言える。
家族関係や社会環境も大きく変わり、核家族化し、IT技術の普及によって、生活環境は一変してしまった。

万博会場内の人気パビリオンでは、IT技術を用いた予約、朝早くから順番を取って並ぶ従来型、加えて、70才以上の人達が優遇された入場ルート、ハンディ キャップの人達に対応した入場など、その方法は多様化し、情報と方法を知っているかによって差が出る。
しかしながら、何と言っても、万博が貢献したのは、やゝもすると毎日の生活目標がはっきりせず、退屈していた人達に、広い万博会場に生き甲斐を持って通うことが出来る場を提供したことではなかろうか。

会場一つ一つを訪れて、参加したり、訪れていない会場が減っていくのを楽しむ。
各国の飲食店を訪れて、その特色を味わう。
色々なアイスクリームを食べる。
全ての種類のビール、ワインを味わうなどとテーマを決めて通った人達も知っている。
その日を如何様に過ごすか、つまり、生き甲斐的目的を持てることなく退屈している人達は少なくない。
若い世代の人達ではニートだとか注目されるが、高齢社会でも類似の淋しい心境にある人達は少なくない。

「エコノミックアニマル」の夢の跡から人の心は今だ立ち直っていない。
『市中の山居』で、一椀の茶を味わいながら、心の満たされる生活スタイルが、我が国にはあることを忘れてはならない。

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