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信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

陶芸家・加藤景徳

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景徳師

本シリーズの第39回で「私好みの陶芸家・加藤敬也」を取り上げた。その敬也師が名前を景徳と改めて新しい芸術活動を始めた。既に敬也時代に日本画家・加山又造、洋画家・北川民次等との共同した作陶を行った。

今回、景徳師は新たな共同作家として、日本画家で白描、淡彩、単彩、精密画の大家でもある小山硬を選んだ。景徳師は自然、大胆、繊細にして勢いのある作家である。加えて、陶芸における色彩の魔術師でもある景徳師が小山師を指名して選ぶには必然性がある。気品の作家・小山師がその協作に賛同するのも極めて自然だ。

私は、日本美の伝統は、「一期一会の緊張」、「間と余韻」、「単純化と暈し」にあると思っている。日本芸術が世界に誇るものだ。繊細な余情と移ろう自然との共鳴が大切なのだ。人間が生きている「一期一会の実存」の喜びだ。

共同作品

日本人は日常茶飯の中で自然と文化に同化して、「道」を求める。「茶の湯」は人々の日常生活そのものの在り方を人間性も含めた生活総合文化に高めたものだ。陶芸、絵画、建築、料理等全てに四季がある。通常の社会環境にあっても逃避ではない「市中の山居」と言われる場で「非日常」を感じる。人間らしい安らぎを「一期一会の緊張」として楽しむ。井伊直弼が到達した境地、「一期一会」、「余情残心」となる(第10回に取り上げた)。

今日、国の内外で頻発している戦争も含めた非人間的な事件は科学技術、経済活動の急速な変化に伴う精神や社会文化の遅れに起因すると思っている。戸惑いと混乱の中で、社会から弾き出されている人達が多い。「責任」と「義務」を伴う「人間らしい多様な価値観」を認め合う文明基準が忘れられてしまっている。グローバル化した社会にはグローバルを内包する文化が必要不可欠なのだ。そのグローバル文化は「多様な価値観」の発動である個人個人の「固有の文化」を容認するものでなければならない。

 

そうした時代と時期に陶芸家・加藤景徳と日本画家・小山硬による芸術活動は日本美と 心を持った作家の共同であり、現代にあっては国際性を刺激する日本固有の文化である。

 両作家による芸術活動は人間の豊かさを感じ、広げる作品を生むと確信する。
その共同作品を作る最初の場面に立ち会うことが出来た私は大変幸せに思っている。人間味あふれる日本の美を感じた。茶味がある。

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