文化講座
国際化「宮本武蔵」:イチロー、Ichiro
Ichilo!Echiro!は国際化した二天一流の剣法を極めた剣豪、宮本武蔵を見る思いがする。
2004年10月1日の夜(米国時間)、イチローは1920年にジョージ・シスラーが達成、84年間破られなかった一年間257安打の記録に追いつき、追い越した。幸いにして日本時間で10月2日午前11時からのNHKBS1の放映で全経過を実況で観ることが出来た。
記録達成はマリナーズのホームグランドでテキサス レンジャーズ戦で行われた。
まず257安打は一回の裏、一番バッターのイチローは第一打席でスタンディングオベーションの観衆の中で、左外野に打った。
続いて、新記録となる258安打は第二打席で三回の裏、センターに抜いたヒットだった。一気にシスラーの記録を破った。
259安打は6回の裏、イチローらしいショートへの内野安打だった。
イチローは昨年ヤンキーズだった名投手クレメンスに対して、ファウルを打ち続けて得意球が来るまで待って打ったと答えていた。その理由は勝負球でない甘い球を打っても相手投手に恐がられないからだと言う。
新記録を達成した後のインタビューで「プレッシャーを背負ってプレーをする」ことが「楽しい」と語っていた。緊張感のある勝負に追求心を求めているのだ。
イチローの打席での「心」はまさに、宮本武蔵の境地にあると感じられる。
武蔵は、晩年、熊本の霊巌洞にこもって「五輪書」を著して剣術の秘伝をオープンにした。秘伝を公開したのは例外的なことなのだ。
武蔵は「独行道」に「道においては死をいとわずと思う」、「五輪書」で「構えるな、ただ打て」と記している。
大リーガーの投手が得意球として投げる150キロ以上の速球や緩急ある切れ球に対応するためには「構えるな、ただ打て」の境地が必要だ。打席に入って左腕は水平に折って手背側を右口元に、右腕を水平に伸ばしてバットを垂直にして投手に対する姿は武士だ。
日本化西洋菓子の元祖たる村上開新堂のクッキーとフランス流紅茶のマリアージュ フレールが販売した特別の雲南紅茶「YUNNAN IMPERIAL TGFOP」を飲みながら、イチローの世紀を超えた極意のインタビューを聞き、そのまま余情残心を感じながら一文を書き上げた。国際化した武蔵の決闘を見た思いだ。