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お茶成分と薬効

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

カテキン類と心臓病予防

前回「カテキン類とがん予防」で紹介した論文を書いたArts氏らのグループによるカテキン類と心臓病、特に冠動脈疾患、つまり、心臓に酸素や栄養を補給する冠動脈の異状による疾患との関係を疫学調査した研究を紹介する(Arts,IC,et al,Dietary Catechins in Relation to Coronary Disease Death among Postmenopausal Woman.Epidemiology,12,668-675,2001)。

疫学調査も前回紹介した前向きコホート研究(prospective cohort study)で行われた。
心臓病で冠動脈疾患といわれるのは狭心症や心筋梗塞が対象となる。今回の論文は閉経後の女性を対象にして、カテキン類摂取と冠動脈疾患死予防との関係を調査している。
結果は次のようだった。

カテキン類が閉経後にあって予防効果を最もよく示したのは冠動脈疾患に対して危険因子の少ない女性に対してであった。つまり、タバコは吸わず、糖尿病や心臓血管疾患のない人達に予防性が認められたとのことだった。
言ってみれば、タバコ等の有害性には勝てない可能性を示す。
しかし、今回もお茶から摂取したカテキン類の有効性は赤信号だった。特に、お茶中のガレート(gallates)を含むカテキン類は冠動脈疾患死予防とはならないと報告されている。
ガレートを含むカテキン類とは有効性が無いとあるが、緑茶に最も多く含まれるエピガロカテキンガレート(EGCG)やエピカテキンガレート(ECG)等を言う。
他にお茶にはエピガロカテキン(EGC)やエピカテキン(EC)等が含まれる。
緑茶でのカテキン類の主成分はEGCG,ECG,EGC,EC。その内でもEGCGが50~60%を占める。続いてEGC,ECGであり、一番少量なのはECとなる。
お茶とカテキン類、ポリフェノールについてもっと知りたい人は私の著なる「お茶健康記」(山中宗直、淡交社)を読まれたい。
話を論文紹介に戻す。

日常的に食品から摂取したカテキン類の内で、リンゴやワインからの成分は冠動脈疾患死に対して予防効果を示したという。
まとめてみると、カテキン類と言っても何でもよいと言うわけではないとのこと。他の食品成分を含む食習慣や一般的な健康といえるライフスタイルが重要だと言っている。
いずれにしろ、この論文内容についても追試が必要だ。
ハーバード大学のグループが、年齢、肥満度、タバコ、ビタミンC、アルコールの摂取量、糖尿病、高血圧、高コレステロール、及び、心疾患の有無について食品成分との関係を分析検討した論文を出している。
しかし、お茶、野菜、果物、赤ワインなどから摂取したフラボノイド(カテキン類も含まれる)の摂取量と関係なしとある。但し、冠動脈疾患を持っている男性に対しては予防効果の可能性を示したと言う。
以上から見ても、お茶や各種の食品がカテキン類やポリフェノールを含むと言っても、病気予防や病気治療に有効というのは簡単でないと判って欲しい。
この事実は何もお茶成分に限った話としてではなく、今日、世間で話題の××で??病が治るとか予防出来ると宣伝する成分や商品にも言えることだ。
ここではっきりしておきたいのは、一つの食品成分や食品だけで病気予防や健康は成り立たない。つまり、一成分健康主義、一品健康主義信仰の考えは止める事だ。商売に利用されるだけと知ることだ。

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