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お茶成分と薬効

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

カテキン類とガン予防

今回は、ガン予防と日常摂取するカテキン類との関係についての論文を紹介する。お茶を含む飲み物からのカテキン類の有効性に疑問を呈しているのが判る。

前向きコホート研究と呼ぶ疫学研究法でヨーロッパの人達を10年間追跡調査した論文がある(Art,IC,et al,Dietary Catechins and epithelial cancer incidence:The Zutphen elderly study.Int.J.Cancer,92,298-302,2001)。
疫学調査で前向きコホート研究(prospective cohort study)は前向き無作為割付臨床試験(prospective randomized study)に次いで恣意性が入り難いと考えられる調査研究法だ。

我が国では、恣意性が入る可能性の強い予備的な疫学研究法といえる症例対照研究(case-control study) 、地域相関研究(ecological study)や断面研究(cross-sectional study)と呼ぶ研究法で効いた効いたと発表されるのがほとんどだ。
しかも、後向き研究(retrospective study)と言って過去について質問する調査が多い。
それらに比して、前向きコホート研究による10年間の追跡研究の結果は信頼性が高まる。
論文に話を戻す。研究は65~84才の7208人を対称に10年間追跡したThe Zutphen Elderly Study と呼ぶ疫学調査。
カテキン類を摂取した食物と量は次のようだ。お茶から87%、りんごから8%、チョコレート3%からが主だった。一日のカテキン類摂取量は平均72㎎とのことだ。
結果:年齢、生活習慣で各種の影響する因子を分析、調査した。その結果、カテキン類摂取は肺ガンやその他の上皮性ガン予防効果を示さなかった。
特にお茶からのカテキン類は無関係だったようだ。しかし、お茶以外から摂取したカテキン類については、肺ガン予防にボーダーライン的意味がありそうだとのことだった。

次に、同じグループによる研究で、米国アイオワ州の閉経後の女性を対称にした論文がある(Art,IC,et al,Dietary catechins and cancer incidence among postmenopausal women:The Iowa Women's Health Study (United States).Cancer Causes Control,13,3773-3783,2002)。
その結果は次ぎのようだった。各種のガンの中で、直腸ガン予防にカテキン類摂取は良い可能性があった。
但し、摂取したカテキン類でも、果物等の固形食物からのカテキン類では効果があるとのことだった。
お茶のような飲み物から摂取したカテキン類の有効性は見出だせなかったようだ。
つまり、両論文とも、飲み物から摂取したカテキン類は体内で異なった生物活性を持つのか、効かないとの調査結果だったのだ。
以上の結果は今後の追試が必要だが、カテキン類とガン予防と言っても、まだまだ疑問が多い状況と判る。

我が国では科学的根拠が不十分でも商売に都合のよさそうなことは安易でオーバーな宣伝に利用されるが、都合の悪そうな結果はあまり知らせない体質がある。
国民の多くは良く勉強はするが、日常生活に生きていないことが多い。
科学教育の誤りから科学的判断力が乏しく容易に騙されてしまう。
国による教育方法の誤りは語学教育でもはっきりしている。
インターネット情報は国の壁を越えて誰でも容易に得られる。しかし、ほとんどの人達は日本語情報しか見ない。そろそろ言語的鎖国状況から我が国の人達は解放される必要がある。

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