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インターネット公開文化講座

文化講座

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お茶成分と薬効

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

はじめに

最近、関西のある小学校六年生の生徒達三人から手紙を受け取った。家庭科の学習で健康緑茶を作ろうと言うのだ。しかし、小学生までが健康食品について科学性のない商業主義的知識に毒されていると思った。健康食品という言葉が意味不明瞭で科学的根拠もなくあまりにも安易に使われているからだ。
手紙の内容から、小学生たちの安易な思考、姿勢が気になる。科学、理科教育に問題が多いことを示す。また、先生や親の科学思考の教育も必要だ。先生が知ってか知らぬか、生徒から次の様な内容が求められた。

  1. まず、作りたい健康緑茶は次のいずれかの薬効性を持つものだった。便秘、冷え症、背が伸びる、身体の調子が良くなる。
  2. その作り方を教えてほしい。
  3. その材料、原料を無料でもらいたい。
  4. 有効成分とその作用を教えてほしい。判らなければ誰かに聞いて教えてほしい。
  5. 手紙の返事を早々にほしい。

新しいものを創るにしては姿勢があまりにも軽い。緑茶の意味もはっきり勉強していないように思う。緑茶の製法ならばわざわざ聞くまでもなく、いくらでも本に書いてある。

 既に本シリーズ(第46回)で述べたように日本、中国いずれの緑茶も、摘んだ茶葉を早々に熱処理する。その茶葉成分に最も近いお茶なのだ。何か薬効成分の添加混合した飲み物を健康緑茶と呼ぼうとしているように思う。本物を作るならば子供には荷が重い。
科学的に有効性を持った製品が、手紙から見ると第三者に依存して二週間位で作れると思っている。先生はどんな姿勢で教育しているのか。知りたいものだ。

子供の姿勢は社会を写す鏡と言ってよい。あまりにも安易な"健康食品"情報の氾濫が先生、親、子供も毒している。
しかし、最近の新聞に次のような記事が出た。「健康食品のネット販売"バイブル本"宣伝だめ、厚労省30社を改善指導」(中日新聞)。『「がん治る」食品販売、厚労省、30社に指導』(朝日新聞)。
最近、新しい法律が成立した。その法規により科学的、医学的根拠が乏しい虚偽、誇大広告が問題となるようになったのだ。

「健康増進法」が平成15年5月1日から施行された。続いて「食品安全基本法」が7月1日から施行されたのだ。
この二つの法律は既に施行されている「食品衛生法」「PL法」「情報公開法」とともに市民一人一人が安心して商品を買うことができるために必要な法律なのだ。しかし、まだまだ不備がある内容の法律だ。
「健康増進法」によって、食品が持つ健康保持や増進等の効用について虚偽や誇大広告を指導をすることが出来るようになった。例えば、キノコ類やサメの軟骨によってがんや心臓病が治ってしまうような広告は指導を受けたのだ。しかし、罰則規定がまだ不十分だ。
「食品安全基本法」によって食品安全委員会が設置されるようになった。しかし、食の安全の番人となる委員会に肝腎の消費者代表がメンバーとなれない等の問題がある。
市民はこうした法律の成立が市民生活の安全にとって大切だとその内容を知ることが大切だ。内容に関心を持つと同時に、市民の安全に関する法律の欠点や問題点をしっかり理解していなければならない。

小学生時代から科学的事実の正当性を判定出来る能力を養う必要がある。また、創造的な仕事をするための手法、姿勢を十分学べるような教育が必要だ。ただ単に記憶中心の教育ではなく、生きた能力を育成する教育が変化の激しい社会では重要となる。
次回より小学生まで毒しているお茶成分の薬効性について、国際性ある最近の事実や状況の解説を試みる。世俗の情報とのギャップを知ってもらいたい。科学教育が言葉の使い方を含めて要検討なのがよく判る。

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