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医学博士 山中 直樹(宗直)

β--カロチンとガン予防(b)

Cancer Factsにあるβ--カロチンとガン予防について続きを紹介する。
前回述べたβ--カロチンを含むサプルメントのガン予防試験(ATBC試験、CARET試験、米国の医師を対象とした試験であるThe Physician's Health Study)の結果がどのようであったか説明する。
ATBC予防試験:β--カロチンをサプルメントとして摂取した人達は摂取しなかった人達に比べて、肺ガンと診断された人達が18%増加、死亡者は8%増加してしまった。

CARET予防試験:平均で4年間サプルメントを摂取した人達の結果は次のようだった。β--カロチンとビタミンAを摂取した人達では、偽のサプルメントを摂取した人達に比して肺ガンと診断された人達が28%増加した。また、死亡者が17%増加してしまったのだ。
つまり、ATBC試験、CARET試験のいずれの試験も、β--カロチンを含むサプルメント摂取は肺ガンや死亡者を増加した。少なくとも何の利益もないことが明らかとなった。

CARET予防試験は途中でまとめた中間の成績がATBC予防試験と同様に良くないことが判った。それ故に、予防試験で最も信頼性の高いβ--カロチンを含むサプルメントを与える介入試験を行っていたCARET試験は危険性があると予定より21ヶ月早く投与を中止した。
ATBC,CARETいずれの予防試験も、タバコを吸ったり、タバコ経験者等の肺ガンとなる危険因子のある人達が参加していた。

 The Physician's Health Study:米国男性医師を対象とした予防試験は1995年まで行われて完了した。しかし、この試験では12年以上β--カロチンをサプルメントとして摂取しても何の御利益もないと判明した。また、特に害となることもないとの結果だった。
CARET予防試験は1996年1月11日に中止された。参加者たちにはその1月13日にはβ--カロチン摂取を中止するようにと手紙を送った。また、1月18日にはその事実が公表されたので、一般に報じられた。
参加者たちのβ--カロチンを含むサプルメントの摂取は中止されたが、その後5年間に渡って長期効果についてフォローは行われた。

いずれにしても、安全性や結果のモニターを行ってチェックする委員会があって、CARET予防試験は中間成績を見た段階で中止されたのだ。米国が持つ消費者に対する配慮、責任体制だ。
一方、そうした事実を承知の上で我が国の人達はβ--カロチンをサプルメントとして摂取しているのだろうかと心配になってくる。

日本語の情報には消費者を向いていないことが多い。加えて、言語的鎖国体質が続いているため、IT時代が生きていないと判る。

次回もCancer Factsにあるβ--カロチンについてその対応を続けて紹介する。

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