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インターネット公開文化講座

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私の茶寄り合い

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

私好みの陶芸家・加藤敬也

私は「直心」の会話、「一味同心」感が心より感ぜられる「茶寄り合い」が好きだ。今日のような相互不信と経済的利益関係優先の人間関係からは、できる限り遠ざかりたいと願っている。そのための茶寄り合いの在り方に創意工夫を行っている。日本の茶のみならず、中国茶や西欧流等世界中の喫茶法にある様式に興味を持っている。そこに認められる共通性を検討することによって、新しい作意、工夫が生まれてくる。そこで、その主旨をよく理解してくれる芸術家の協力が不可欠だ。

まず、喫茶のためには茶碗を始めとする陶磁器が必要となる。その協力者として、瀬戸の陶芸家加藤敬也師がいる。敬也師は今日最も優れた陶芸家と私は思っている。陶芸家と言っても、土や釉薬はそれぞれの専門店から買い入れたり、調整してもらっている人達が多い。師は、自由に自分自身で工夫、調整できる数少ない作家だ。

作風は自由にして、おおらかだが同時に繊細さと緊張感がある。食器類を作ることも好み、何とも言えない魅力がある。造形性のみならず、用の美から見ても北大路魯山人と比すことができる。自由、おおらか、繊細、緊張を醸し出す作品は敬也師の性格、人格から自然に生まれてくると思われる。むろん、それまでの習練と研究がベースにあることは当然である。

こうした優れた作家を評価できない習俗的美術界の人達は、日頃、何を見ているのかと疑いを持つくらいだ。私はこの優れた作家に茶の湯に用いる茶器のみならず、中国茶用の茶器等や食器を各種工夫してもらっている。こちらの意図や工夫を理解してもらっては随分沢山の試作をしてもらった。損をさせてばかりが現実だ。

ステーキ用の皿を創作してもらったものがある。最近、牛肉の獣臭と酸化変色を予防するような研究をゲオ社の川崎究師らと行っている。師は教養ある研究者である上に天才的食のアレンジャー、美食家でもある。その牛肉のリブロースをステーキとして、敬也師特製の食器で味わっている。次回に紹介しようと思うが日本画家小山硬師とも最近楽しんだ。小山師も、その食器とステーキ肉の旨味を十分に評価した。敬也師も小山画伯も自然とワイルドライフを楽しみ食材を手に入れる料理人で美食家でもある。習俗的でない料理人で自己判断力のある美食家は人間味ある人としての不可欠な素養と思えてくる。

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