愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

知って得するお茶ワールド

信天翁(アホウドリ)喫茶主
医学博士 山中 直樹(宗直)

お茶と夢窓疎石

お茶の成分で抗酸化物質、特にポリフェノールであるカテキン類を中心として癌や老化予防効果を検討してきた。現状では明らかとは言い難いことは理解できたと思う。お茶の効用はワイン同様に人の生活習慣の改善に役立っていることを介して効いているように思えて来る。

それにしても顰(ひそ)みたくなるような情報で一杯だ。歴史的な人物や書による茶の効用についてその達見を拝聴してみよう。

まず、話題となるのが中国唐代の陸羽による「茶経」と日本では鎌倉時代の栄西による「喫茶養生記」。これらは既に皆さんの知るところなので、夢窓疎石の 「夢中問答」から紹介して見る。夢窓禅師は南北朝時代の人で京都五山を開いた天竜寺の開祖。更に有名なのは苔寺で知られる西芳寺や今だ日本各地に残る日本 庭園の開祖でもある。

栗田勇「千利休と日本人」(祥伝社)に出て来るので抜粋をする。

「皆茶を愛することは食を消し、気を散ずる養生のためなり。薬も皆一服の分量定まれり、過分なる時は、また、たたりをなす。この故に、茶をも飲み過ごすをば、医書にてこれを制したり」

「茶を好みけるは、困睡(こんすい)をさまし、蒙気(もうけ)を散じて、学をたしなまんためなり」「茶を愛したまいけるは、蒙を散じ、ねぶりをさまして、 道行の資となしたまわなんためなりき」「今時(こんじ)世間にけしからず、茶をもてなさるるようをみれば、養生の分になるべからず。・・あまつさえ世間の 費(ついえ)となり、仏法のすたるる因縁たり」「しからば則(すなわ)ち茶を好むことは同じけれども、その人の心によりて損あり益あり」

※顰(ひそ)む:顔をしかめること
※蒙(もう):もやもやした様

お茶は胃腸、リラックスに良く、頭をはっきりさせ集中力を増し、我意我執を捨てて、心を清らかにするためにたしなむべきものであると言っている。不老長寿 や癌については言及していない。お茶は飲み方次第で御利益なしとも言っている。やっぱり、昨今の茶やその成分でも生活習慣の改善がないような飲み方では駄 目と言うことか。さすが歴史に残る名僧の言うことは、何故か簡単に商業主義に乗る今風のエライ先生とは比較にならない。もはや、それは覬覦(きゆ)か。

※覬覦(きゆ):期待しても無理な望み 

知って得するお茶ワールド
このページの一番上へ