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インターネット公開文化講座

文化講座

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『食育』をはじめましょう

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

妊婦さんのためのレシピ

今もっとも注目されている「食育」。しかし、「食育ってなに?」とあまり深く知らない人も多いようです。
そんな人々のために、今シリーズは「食育」をとりあげました。
「高齢者のための食事とは」、「働き盛りの人のための食事とは」、「幼児のための食事とは」、「よく噛むことの大切さ」、「カルシウムの大切さ」など、基本的な知識と最適レシピを12回テーマでわかりやすくご紹介します。

第3回目のテーマは「妊婦さんのためのレシピ」です。
元気な赤ちゃんを生むための食事の注意点とともに、妊娠中に食べたいカンタンレシピをご紹介します。


1. 妊娠中の食事ポイント・10カ条!

胎児は発育に必要な栄養の全てを母体からもらって発育するため、妊婦さんの栄養状態が悪いと、胎児の発育や産後の回復・母体の健康に悪影響を及ぼします。 だからといって、あまり神経質になりすぎてストレスがたまるのも困ります。
前向きに、そして心穏やかに妊娠中の食事を楽しむことが大切です。

(1) 食事摂取基準に見合った栄養量の確保が基本です。偏食を避け、栄養バランスのとれた食生活を送りましょう
  食事摂取基準(2005年~2010年版)
 
  非妊婦
(18-29歳)

身体活動レベル低い
非妊婦
(30-49歳)

身体活動レベル低い
妊娠中期
(付加量)
妊娠末期
(付加量)
エネルギー
(kcal)
1,750 1,700 +250 +500
たんぱく質
(g)
50 50 +10 +10
脂肪エネルギー比率(%) 20-30 20-25 20-30 20-30
カルシウム
(mg)
700 600 +0 +0

(mg)
10.5 10.5 +13 +13
ヨウ素
(µg)
150 150 +110 +110
ビタミンA
(µgRE)
600 600 +70 +70
ビタミンD
(µg)
5 5 +2.5 +2.5
葉酸
(µg)
240 240 +200 +200
ビタミンC
(mg)
100 100 +10 +10
 
身体活動レベル低いとは、家事や買い物など以外、生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合を指します

(2) 母体と胎児の体作りの基礎となる「たんぱく質」や「カルシウム」を多く含む食品を積極的に取り入れた食事を心がけます
  たんぱく質を多く含む食品・・・肉・魚・卵・大豆・豆腐・牛乳・乳製品 など
カルシウムを多く含む食品・・・牛乳・チーズ・小魚・緑黄色野菜 など

(3) つわりのために食事が進まないときは、食べられるものを少量ずつ食べるようにします
口当たりの良いさっぱりした物を水分主体にとるようにします
 
ほうじ茶、麦茶、ハーブティーなど、カフェインの少ないもので水分を補いましょう
あっさりしたもの、酸味を効かせたもの、水気の多いもの、臭いの強くないもの、冷たいものが 食べやすいでしょう

ミニトマトとグレープフルーツの
ハチミツサラダ
カフェインは胎児に移行しやすく 蓄積しやすいため、過剰摂取は胎児に対して少なからず影響があることは確かですが、まだはっきりしたことはわかっていません。流産、死産のリスクを高める という報告もあります。1日1~2杯程度のコーヒーや紅茶は問題ありませんが、過剰摂取には注意が必要です。

(4) 妊娠後半期は、子宮の拡大により胃が圧迫され、一度に多く食べにくくなります
食べられない場合は、1日4~5回に分けて少量ずつ食べるようにしましょう

(5) アルコールやタバコは胎児に悪影響を及ぼす危険があるため控えます

(6) 貧血を防ぐために「鉄分」を多く含む食事をとりましょう。また、神経管閉鎖障害のリスク低減のために、葉酸をしっかりとります
鉄分を多く含む食品・・・ レバー・貝類・肉類・大豆・緑黄色野菜・海藻 など
葉酸を多く含む食品・・・ ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、納豆、牛乳、バナナなど
 
神経管閉鎖障害とは、先天性の脳や脊椎の癒合不全のことをいいます。日本では1万人に約6人の割合でみられ、葉酸の摂取(特に妊娠3ヶ月まで)によってその発症のリスクが低減されることがわかっています。

切り干し大根とほうれん草の
ごま酢和え
"切り干し大根とほうれん草の鉄分コンビ"

(7) 早寝・早起きなど規則正しい生活をし、生活リズムをつけて食欲を増進させ、充分な食事がとれるようにします。

(8) 便秘予防のために食物繊維の多い食事をとることや、毎日の排便習慣を身につけましょう
 
水分を多くとるように心がけます
決められた時間に食事をとり、生活リズムを整えましょう
軽い散歩などを生活の中に取り入れ、運動不足を防ぎましょう。

(9) 塩分の多い加工食品のとりすぎに注意し、料理は薄味を心がけ、妊娠中毒症の予防をします
 
妊娠中に塩分を多くとると、むくみ、高血圧症、腎臓病、肥満などを引き起こし、胎児の成長に悪影響を及ぼします
1日の塩分は7g~8gにおさえましょう

エビと秋鮭のムニエル
"ハーブと酸味をきかせて塩分カット"

(10) 妊婦中の太りすぎは、妊娠中毒症や難産の原因になります
糖質を多く含む食品(穀類・芋類・砂糖など)や脂肪(特に動物性油脂)の多い食事をとり過ぎないようにします

成功の秘訣
 
仕事を持っている妊婦さんは、かんたんで栄養価が高く、バランスのとれた食事が大切です。
既製品や外食に偏らないで時間に余裕のある時に料理を作りおきするなどして、毎食1~2品は手作り料理を加えるように心がけましょう。
食べたものをメモしておくと、過不足を把握することができ、栄養バランスがとりやすくなります。
 


2. 妊婦さんにうれしいカンタンレシピ

「つわり」「貧血」「便秘」「体重制限」など妊婦さんの悩みはつきません。そんな悩みを解決してくれる バランスの整った簡単レシピをご紹介しましょう。

 ミネストローネ
~口当たりもよく、これ1品で多くの野菜が食べられる万能スープ~

■材料 分量:2人分
ベーコン(薄切り) 20g
たまねぎ 1/4コ(70g)
にんじん 1/4本(50g)
セロリ 5cm(20g)
じゃがいも 1/4コ(50g)
オリーブ油
(又はバター)
20g
にんにく 1/2かけ
500ml
固形スープの素
(チキン)
1/2コ
ホールトマト缶 100g(1/4缶)
スパゲティ(乾) 25g
小さじ1/2
こしょう 少々
パルメザンチーズ 少々

■作り方
1. ベーコン、たまねぎ、にんじん、セロリは1cm角に切ります。じゃがいもは1cm角に切り、水にさらします。
2. 鍋にオリーブ油を溶かして弱火でにんにくを炒め、よい香りがでたらベーコンを炒めます。たまねぎ、にんじん、セロリを加えてさらに炒めます。
3. 2に分量の水と固形スープの素を入れます。
4. ホールトマトを入れ、じゃがいもと1cm長さに折ったスパゲティを加えて弱火で煮込みます。
5. 5.具に火が通ったら、塩とこしょうで味を調え、好みでパルメザンチーズをふります。

 ★鶏レバーとごぼうのみそ煮
 ~貧血予防のレバーと便秘予防のごぼうの最強タッグ~

■材料 分量:2人分
鶏レバー 130g
ごぼう 1本(70g)
適宜
適宜
にんじん(中) 1/2本(60g)
こんにゃく 1/4枚
さやいんげん 4本
ごま油 大さじ1/2
(A)  
だし汁 250ml
輪切り赤唐辛子 小さじ1/4
(B)  
大さじ1
砂糖 大さじ1
赤みそ 20g(約大さじ1)

■作り方
1. レバーは大きめに切り分け、熱湯で茹でて表面の色が変わったら、ザルにあげ、水に晒します。
2. ごぼうは皮をこそげ取り、7mmぐらいの斜め切りにして酢水につけてから、熱湯で7分間ほどゆでます。
3. にんじんは乱切りにします。
こんにゃくは下茹でして、ひとくち大にちぎります。
いんげんは半分の長さに斜めに切って、熱湯でサッと茹でます。
4. 鍋にごま油を熱し、ごぼう・にんじん・こんにゃくを炒め、(A)を加えて煮ます。
5. 3.のにんじんが柔らかくなったら、レバーと(B)を加えて、さらに煮ます。
6. 最後にいんげんを加えて仕上げます。

 ★海苔の炊き込みごはん
 ~妊娠中の髪のトラブル予防、海藻をたっぷりとりましょう~

■材料 分量:2人分
1カップ
かつおだし汁(濃い目) 240ml~
焼き海苔 1・1/2枚
(A)  
小さじ1/2
薄口しょうゆ 大さじ1/2
土しょうが(せん切り) 多め(10~15g)

■作り方
1. 米は炊く30分前~1時間前に洗って、分量のだし汁にちぎった海苔と共に漬けておきます。
2. 焼く直前に(A)を加え、せん切りしょうがをたっぷりのせて、普通に炊きます。
写真には松の実が散らしてあります

 ★黒糖ミルクプリン・フルーツ添え
 ~やっぱり食べたいスイーツ、ミネラルの多い黒糖を使った
カルシウムたっぷりのデザート~
※200mlプリンカップ4コ分
■材料 分量:4コ分
粉ゼラチン 3袋(15g)
大さじ4
牛乳 600ml
黒砂糖(粉末) 90g
(A)
グラニュー糖 40g
大さじ1・1/2
黒砂糖(粉末) 大さじ1
50ml
季節のフルーツ 適宜

■作り方
1. ゼラチンは水にふり入れ、ふやかしておきます。
2. 牛乳と黒砂糖を温め、黒砂糖が溶けたら火をとめ、1を加えて溶かします。
3. 水でぬらしたプリン型に注ぎ入れ、冷やし固めます。
4. グラニュー糖と水を火にかけ、かき混ぜないよう煮詰めてカラメルソースを作ります。火からおろして黒砂糖を加え、溶かします。水を加えて混ぜ合わせます。
5. 器に盛り、フルーツを添えます。

~参考文献~
  ・あたらしい家庭の健康料理  著者:伊藤華づ枝
  ・食生活全般論  著者:伊藤華づ枝
  ・日本人の食事摂取基準
『食育』をはじめましょう
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