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インターネット公開文化講座

文化講座

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エプロン一年生さんの為の基本クッキング

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

チーズを学んでワインでおもてなし ~ホームパーティーのすすめ~

これから料理を学びたい人・お料理大好きな人へ
このページでは、料理の基本やその逸話などを、料理法だけでなくいろいろな角度からご紹介します。

これまでに、基本の料理道具や身だしなみ、料理をおいしく仕上げる調味料の扱い方、野菜、魚介類、肉類の切り方、だしのとり方、調理用語、アルコール、香辛料などについて記しました。第9回目はチーズとワインのお話です。

イベントの多い季節がやってきました。特別な日にはとっておきのお店へというのも楽しみですが、親しい仲間と時間を気にせず、思う存分おしゃべり・・・と いうには、やはり自宅が一番です。以前は、「部屋が狭い」「料理が苦手」「大変そう」などといったイメージから、ホームパーティーを敬遠しがちでしたが、 近年では自分なりのおもてなしを上手に楽しむ人が増えてきました。(ホームパーティーのコツにつきましては、『達人に学ぶ』バックナンバー「マナー美人に なろう」4月号・ホームパーティーの開き方&マナーに掲載されていますので、そちらをご覧ください)今回は、これさえあればあまり手をかけなくてもスマー トなおもてなしが演出できるパーティーにうってつけの食品=チーズについてご紹介します。チーズとワインが揃えば、たちまち気のきいた素敵な空間へ早がわ りしますよ。



◆チーズとは◆

牛や山羊などの乳を乳酸菌や酵素を加えて凝固させ、微生物の作用によって発酵・熟成させた食品です。(写真1)
(写真1) チーズ各種

◆チーズの歴史◆

チーズは「人類が作った最も古い食品」と言われ、紀元前4000年頃にはすでにチーズのようなものが作られていたとされています。山羊などの乳を保存して いる時に、微生物などの働きによって、乳から白い固まり(カード)と水分(ホエー)に分離し、偶然口にした人が美味しいことを発見したと思われます。
また、チーズ誕生にまつわる有名な言い伝えがあります。
「昔々、アラビアの商人が、山羊の乳を羊の胃袋で作った水筒に入れてラクダの背に積んで砂漠を旅していました。のどが渇いたのでその乳を飲もうとしたとこ ろ、中には乳ではなく、透明な水と白い固まりがあり、おそるおそる口にしたところ、とてもおいしかったとか。」この原理は今もチーズ製造の基本となってい ます。日本では、6世紀頃チーズの作り方が伝わったと言われていますが、チーズの製造が始まったのは明治時代で、戦後になってから一般家庭でも広く食べら れるようになり普及しました。現在ではいろいろなチーズが作られ、更に世界中から多種多様なチーズが輸入されています。

◆チーズの種類◆

世界中に数千種類もあると言われるチーズですが、大きく分けるとナチュラルチーズとプロセスチーズの2つに分けられます。それぞれの特徴と代表的なチーズをご紹介します。

【ナチュラルチーズ】

生乳を乳酸菌や酵素の働きで発酵させた、自然のままのまさに生きたチーズ。
ナチュラルチーズは、次の7つのタイプに分けられます。

●フレッシュタイプ

熟成させない「非熟成」のチーズ。牛乳を固めたものが「ヨーグルト」で、それから水分を取り除いたものがフレッシュチーズです。ミルク本来の味が楽しめますが、日持ちがしないので新鮮なうちに味わいます。
【代表チーズ】
クリームチーズ、カッテージ、モッツァレラ、リコッタ、マスカルポーネ、フロマージュブラン、ブルサンなど

クリームチーズ
チーズケーキの材料としてあまりにも有名。パンに塗ったり、サラダ、お菓子など使い方いろいろ。
(写真2)

~クリームチーズを使ったおすすめパーティーケーキ~
春の花チーズケーキ(写真3)
 

カッテージ
高たんぱくで低カロリーの爽やかなチーズ。
(写真4)

~カッテージチーズを使ったおすすめパーティーメニュー~
ミニトマトとはっさくのはちみつチーズサラダ(写真5)
 

モッツァレラ
イタリア南部で作られる、日本でも有名なイタリアを代表するチーズ。モッツァレラとは「ひきちぎる」と言う意味で、製造過程で餅のように粘るチーズを引きちぎって形にしていくことからその名がつきました。
乳脂肪や塩気の少ない、とてもやわらかいチーズ。
(写真6)

フロマージュブラン
フランスで親しまれている爽やかでなめらかなチーズ。フランス語で「フロマージュ」は「チーズ」、「ブラン」は「白」という意味。アイスクリームと一緒に、またフルーツソースをかけたりとデザートとしてもおすすめです。
(写真7)

ブルサン
フランスのノルマンディ地方の家庭で食べられていた香草入りのチーズをヒントに作られ、今や世界的な大ヒット商品となったクリームチーズ。フランソワ・ブルサン氏のレシピをもとに作られたのでこの名が付いたそうです。
フランスでは「パン、ワイン、それにブルサン」といわれるほど人気。
写真8は黒胡椒入りのブルサン・ポワブル。
(写真8)

●白カビタイプ

表面が白カビに覆われているタイプで、表面から内部へ向かって熟成させるチーズ。それほどクセがなく、クリーミーでマイルドな口あたりのものが多いため、とても人気があります。食べる1時間くらい前に室温になじませると、トロッとして香りと味が引き立ちます。
【代表チーズ】
カマンベール、ブリー、サンタンドレなど

カマンベール
「世界で一番有名なチーズ」とも言われているチーズ。白く美しい外観とやわらかくなめらかな食感。
(写真9)

ブリー
ブリーは「チーズの王様」、カマンベールは「チーズの女王」とされるほど人気。一般に"ブリーチーズ"と呼ばれているのは、大型の白カビチーズのこと。マイルドでミルクの風味豊か。
(写真10)

バノン
フランスのプロヴァンス地方にあるバノン高原の辺りで作られていたのでこの名がついています。栗の葉で巻いたかわいらしいチーズ。もともとは山羊乳製のチーズですが、最近では牛乳と山羊乳を混ぜて作ったもの、牛乳100%で作ったものもあります。(写真11は牛乳製)
(写真11)

●青カビタイプ

「ブ ルーチーズ」と呼ばれ、チーズの内部に「大理石模様」の青カビが繁殖しています。全体的に塩分含量が他のチーズと比べて高めなので、ワインに合わせたり、 料理への応用も多く、独特の香りとピリッとした風味が特徴です。ロックフォール(フランス)、スティルトン(イギリス)、ゴルゴンゾーラ(イタリア)は 「世界三大ブルーチーズ」と称されています。
【代表チーズ】
ロックフォール、スティルトン、ゴルゴンゾーラ、ブレスブルーなど

ロックフォール
古い歴史をもつ羊乳製チーズ。塩味はブルーチーズの中では最も強く、ピリッと舌をさす刺激がシャープに感じられます。
(写真12)

スティルトン
フレッシュハーブのような青々とした香りとほのかな甘みがあります。エリザベス女王の大好物としても有名です。
(写真13)

ゴルゴンゾーラ
ロックフォールやスティルトンに比べると塩分は控えめで、ブルーチーズ特有の刺激的な味わいとミルクの甘みのバランスがとても良く、パスタやリゾット、お菓子など幅広い料理に使用されます。
(写真14)

ブレスブルー
表面は白カビで覆われ、中は青カビのチーズ。青カビチーズのピリッとした刺激と白カビチーズのマイルドさが程よく調和し、とても食べやすく人気です。
(写真15)

~ブルーチーズが余ったら・・・~
ブルーチーズのパスタ(写真16)
 
ブルーチーズはクセが強いため、食べ残してしまうことも。そんなときはブルーチーズソースのパスタをおすすめします。手軽に本格的な味が楽しめます。
【作り方】
ブルーチーズ、牛乳、生クリームを鍋に入れて火にかけ、塩とこしょうで調味し、パスタとあえます。

●ウォッシュタイプ

表面の菌が繁殖する熟成過程で、その土地のワインやブランデー、塩水で表面を洗うことから「ウォッシュ」と呼ばれます。外皮がオレンジ色で強い香りがしますが、中はしっとりとしてマイルドです。
【代表チーズ】
タレッジョ、ピエダングロア、エポワス、リヴァロなど

タレッジョ
イタリア版ウォッシュチーズの代表格。それほど香りはキツくなく、マイルドで刺激の少ない味です。
(写真17)

●シェーブルタイプ

「シェーブル」とはフランス語で山羊の意味で、その名の通り山羊の乳から作られたチーズを総称して言います。牛乳から作るチーズよりも歴史が古く、フレッシュタイプからハードタイプのものまで多くの種類があります。コクのある、繊細な味わいが特徴です。
【代表チーズ】
サントモール、ピラミッドサンドレ、バノン、ソワニヨンなど

ソワニヨン・シェーブル・ナチュレ
爽やかな酸味があり、クリーミーな食感のとても口溶けが良いフレッシュチーズです。
オードブルやサラダ、ピザなどに最適です。
(写真18)

●セミハードタイプ

「チーズ」の中で一番に思い浮かぶタイプです。ピザ、サンドイッチ、ハンバーグ、グラタンと利用範囲も広く、プロセスチーズの原料となるチーズも多くあります。弾力のあるやや固めの保存がきくチーズです。
【代表チーズ】
ゴーダ、ミモレット、サムソー、マリボーなど

ゴーダ
オランダ原産のコクのあるまろやかなチーズです。ピザ、パイ用としては最も人気があり、あらゆる料理の材料としても、その味を引き立たせます。
(写真19)

ミモレット
オレンジ色が特徴のフランス産のチーズです。塩味がきいていて、からすみを思わせるねっとりとした味わいが特徴。18ヶ月熟成のミモレットは、ミルク本来の美味しさや旨みが凝縮された、最高の味わいです。
(写真20)

●ハードタイプ

チーズの中で一番硬いタイプです。熟成期間が長いためアミノ酸量も多く、調味料的役割を果たす場合もあります。おろしたり、粉にすることも可能です。
【代表チーズ】
グリエール、エメンタール、チェダー、エダム、コンテ、パルメジャーノ・レッジャーノなど

グリエール
ほどよい塩味とシャープな風味のスイスのチーズ。生で食べる他、スープや肉や魚、野菜料理など料理にも広く使えます。
(写真21)

エメンタール
スイスを代表する、トムとジェリーでお馴染みの穴あきチーズ。甘いクルミの風味で肉や魚、野菜料理、トースト、スープ、サラダなどに。
チーズフォンデュのチーズといえば、このエメンタールとグリエール。
(写真22)

チェダー
イギリスを代表するチーズ。少し酸味があるおだやかな風味で、生で食べるサクッとした口当たりのチーズです。野菜や果物と合わせてサンドイッチやおやつに最適です。
(写真23)

エダム
オランダを代表するチーズといえば「ゴーダ」ですが、「エダム」はゴーダに次いで生産量、輸出量が多いチーズです。サラリとしたコクのある風味で、生で食べたり、とかしたり、おろしたりと使用法も様々です。
(写真24)

パルメジャーノ・レッジャーノ
イタリアチーズの最高峰。風味豊かでうまみも凝縮され、振り掛けるだけで料理の味が際立ちます。ピザやパスタなどイタリアンには特に欠かせません。
とてもかたいため、粉にして使用されます。
(写真25)

プロセスチーズ
ナチュラルチーズを加熱し、溶かして固めたもの。風味や品質が一定に保たれ、使いやすくなっています。
スライスチーズや一口大のおつまみチーズ、スモークチーズなど日本人には最も馴染みの深いチーズです。
(写真26)

~プロセスチーズを使ったおすすめパーティーメニュー~
梅じそ&チーズのポークピカタ(写真27)
 

◆チーズの切り方◆

チーズをおいしくいただくには、切り方も重要です。基本的な切り方は、内部と外側の風味を両方味わえるように切ること。ポイントをおさえて、見た目も美しく、よりおいしくいただきましょう。

円形や正方形、ピラミッド型
カマンベールのような円形や正方形のものは、中心から放射状にケーキを切る時のように切ります。
(写真28)

カットしてあるもの
ブリーチーズのようにカットして売られているものは、すべてに外側と内部が均一に含まれるように切ります。
(写真29-1)
(写真29-2)

筒型
筒型のものは輪切りにします。
(写真30)

ハードタイプ
ハードタイプのものは、外側と内部の風味の違いがあまりないので、同じくらいの大きさになるように、食べやすく薄く切ります。
(写真31)

◆チーズとワインでおもてなし◆

チーズにはやっぱりワインがよく合います。ここではすぐに使えるパーティーにおすすめのテクニックをお教えします。
(写真32)

チーズとワインのマリアージュ
チーズに合うワインを選ぶのは、とても難しいものです。
一般的に
同じ土地で作られたチーズとワインを選ぶ
クセのないチーズには白、クセの強いチーズには赤(全般的にどちらかと言えば赤)
デリケートな香りの高級ワインには、その香りを損なわないようなマイルドなチーズを合わせる
軽めの赤と甘めの白を2本用意すれば、どのチーズにもOK
と言われています。
しかし、個人の好みもありますので、はじめは自分の好きなワインを選び、少しずつお気に入りの相性を見つけていくと良いですね。

身近なものをワインクーラーに
部屋に飾ってあった鉢カバーは、しっかり洗ってこの中に水をはり、お好みのワインを入れて冷やします。氷も浮かべたら、小さな花束も一緒に差し込みましょう。テーブルコーディネートの華やかなアクセントになり、パーティーにピッタリです。
(写真33)

おいしいパンにチーズをのせて
おいしいパンを用意し、薄くスライスしてお好みのチーズをのせるだけで立派なパーティーメニューに。フランスパンを基本に、ドライフルーツやナッツが入ったかためのパンがおすすめです。
(写真34)

グラスに料理を盛り付ける
サラダやオードブル、デザートなどを、グラスに盛りつけてみましょう。簡単なものでも、よりおいしそうに見えるから不思議です。
(写真35)
(写真36)
エプロン一年生さんの為の基本クッキング
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