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旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第6回:味噌について学びます

前シリーズでは「お料理博士になろう!!」と題し、食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しました。
今シリーズでは、「旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!」というテーマで、この季節に最もおいしい食材や調理法を取り上げ、その効能はもちろん、それらにまつわる様々な事柄などを、皆様にご紹介しております。

6回目のテーマは「味噌」。
「味噌」を使った美味しいレシピと、みその歴史、成分と効用等についてご紹介します。

一年の無病息災は誰もが願うところです。何事もまずは健康でなければ身が入らず、良い結果は生まれません。1月は新しい年を迎え、寒さと疲労、ストレスなどから体調を崩す人が多い時期でもあります。そこで今月は、昔から「医者いらず」と呼ばれ、私たちの健康を守り続けている「味噌」について取り上げます。

まずは、味噌を使った美味しい料理をご紹介します。

味噌を使った美味しい料理

豆腐の鶏みそかけ

エネルギー107kcal、たんぱく質7.0g、脂質3.3g、塩分1.5g(鶏みそは8人分として分けた時の1人分)

豆腐の鶏みそかけ

材料 4~8人分
(作りやすい分量)
みりん 大さじ3
鶏ひき肉 100g
A 赤みそ 100g
砂糖 大さじ4~5
100ml
大さじ1
スナップエンドウ 8~12さや
絹豆腐 1丁

作り方

  1. 鍋にみりんを煮立て、ひき肉を加えて炒ります。
  2. 1.に(A)を加え、とろみが出るまでよく混ぜます。
  3. スナップエンドウは洗ってスジを取り、塩茹でして水にとります。
  4. 絹豆腐は水によくさらし、適当な大きさに切ります。
  5. 器に3.と4.を盛り、2.をかけます。

なすのごま酢みそ和え

なすのごま酢みそ和え

材料 4人分
なす 2本(250g)
スルメイカ(又は焼きちくわ) 1/2杯(150g)
A 赤みそ 40g
砂糖 大さじ1・1/2強~2
純米酢 大さじ1・1/2
すりごま(白) 大さじ1
木の芽(あれば) 適宜

作り方

  1. なすは皮つきのまま1本を3~4等分の長さに切り、1cm角の棒状に切って、水に晒します。
  2. イカは腹わたを抜き取り、熱湯で程よく茹でてから水に取り、なすと同じくらいの長さで、細めの棒状に切ります。
  3. たっぷりの熱湯に1.を入れ、落としブタをし、しんなりするまで茹でてザルに上げます。
  4. 3.は水に取らずに、うちわであおいで冷まします。
  5. ボウル(又はすり鉢)に(A)を入れ、よくすり混ぜます。
  6. 5.にイカと水気を絞った(絞りすぎないように)なすを加えて和えます。
  7. 器に盛ってすりごまを散らし、木の芽を添えます。

ニョニャ風・チキンの味噌煮

ニョニャ風・チキンの味噌煮

材料
じゃがいも 500g
にんじん 2本
乾燥しいたけ 10枚(水で戻しておく)
エシャロット 5コ
にんにく 1・1/2~2かけ
ブルージンジャー 40g
小さじ1/2強
サラダ油 大さじ3~4
コリアンダーパウダー 小さじ2
鶏肉 1羽(1.2kg)骨つきブツ切り
900ml
みそ 30g
ナンプラー 大さじ3・1/2~4
パームシュガー 40g

作り方

  1. じゃがいもは8等分に、にんじんは乱切りし下茹で、しいたけはそぎ切りにします。
  2. エシャロット、にんにく、ジンジャーはすりつぶします。
  3. フライパンに塩を入れて加熱した後、サラダ油を入れ、じゃがいもを揚げ焼きします。こんがりと色がついたら取り出します。
  4. 3.に2.を加え、香りが出るまで炒めたら、コリアンダーパウダーを加えます。
  5. 4.に適当な大きさに切った鶏肉、にんじん、しいたけ、3.のじゃがいもを加えて、鶏肉の色が変わるまで加熱します。
  6. 5.に水を加えてフタをし、鶏肉に火が通るまで加熱し、調味します。

※ニョニャ料理とは、15世紀頃にマレー半島に移り住んだ多くの中国人と現地の女性が結婚し作り出した、父系の中華料理の食材、調理器具、食器を使い、母系のマレー人家庭に伝わる香辛料や味付けでアレンジした混合料理です。

名古屋名物のみそカツ~オリジナルソース~

エネルギー710kcal、たんぱく質34.0g、脂質53.4g、塩分2.7g(1人分)

名古屋名物のみそカツ~オリジナルソース~

材料 4人分
豚肩ロース肉(1枚150g) 4枚
A 少々
こしょう 少々
小麦粉 適宜
B 溶き卵 1コ
大さじ1
生パン粉 適宜
揚げ油 適宜
C 赤みそ 70g
かつおだし 200ml
トマトケチャップ 大さじ1
ウスターソース 大さじ1
砂糖 大さじ3
小さじ2
キャベツ 200g

作り方

  1. 豚肉は筋切りし、(A)をふってかるく下味をつけます。
  2. 1.に小麦粉、(B)の溶き卵、パン粉をつけて油で揚げます。
  3. ボウルに(C)を入れて泡立て器でしっかりと混ぜて鍋に移し、中強火で煮ます(ごく軽くとろみがつけばよい)。
  4. 器にせん切りしたキャベツと切り分けた2.を盛り、3.のソースをたっぷりかけます。

※写真には黄すいかと青味を添えました

鶏肉のみそ包み焼き

材料 4人分 2人分
鶏もも肉(中) 500g(2枚) 250g(1枚)
白ねぎ 30g 20g
はたけしめじ(又はしめじ・生しいたけなど) 1株 1/2株
A 白みそ(西京みそ) 200g 100g
白ごま(ねる又はすりごま) 大さじ1・1/2 大さじ1弱
みりん 大さじ2 大さじ1
大さじ2 大さじ1
アルミ箔 4枚 2枚

作り方

  1. 鶏肉は脂身を切り取り、身の厚い部分に切り込みを入れて、一口くらいの大きさに切ります。
  2. ねぎは4センチ長さのぶつ切りにし、更に縦4等分に切ります。はたけしめじは1本ずつほぐします。
  3. ボウルに(A)を混ぜ合わせ、1.と2.を加えて、全体を混ぜます。
  4. 3.をみそをつけたまま、アルミ箔で包みます。
  5. フライパンを中弱火に熱し、3.を入れてフタをし、25分間程蒸し焼きします。(オーブンで20分程焼いても良いでしょう)
  6. 器に盛って、キッチンばさみでアルミ箔に切り口を入れます。

※鶏肉の代わりに豚肩ロース肉を一口大に切って使用しても良いでしょう

1. 歴史

味噌はその優れた効能もさることながら、豊かな風味、調理性の高さを兼ね備え、古くから日本人の生活に深く関わってきました。

味噌の起源(1)~中国伝来説~

味噌の原型は、古代中国の醤(しょう)や豉(し)といった調味料であると言われています。奈良時代、遣唐使によって醤や豉が日本に伝わったとされています。日本では醤は「ひしお」、豉は「くき」と呼ばれていました。醤になる前の熟成途中のものが美味しく、「未醤」(未だ醤にならざるもの)と名付けられ、「みしょう」→「みしょ」→「みそ」となったと考えられています。

味噌の起源(2)~日本独自説~

縄文時代から弥生時代にかけて、住居で塩漬けされていた形跡が残ることから、味噌は日本独自に発展したとされる説。蒸した大豆を塩漬けし、放置することで発酵させ、今の味噌となったと考えられています。

味噌の歴史

鎌倉時代になると、禅宗寺院では、味噌などの大豆製品が各種作られました。味噌が広く庶民の間に普及したのは室町時代であり、味噌汁の形が確立したのもこの頃とされています。
現在のように調味料として認識されるようになったのは江戸時代になってからです。各地の風土や気候が反映された、熟成方法の違いによって、全国に多様な味噌が広まりました。
「味噌買う家は蔵が立たぬ」という古いことわざがあるように、味噌は家で作るのが一般的でした。
工業的な生産が盛んになったのは明治以降ですが、昭和30年代までは、味噌を手作りする家庭が多かったのです。
第二次世界対戦後には、製造法が近代化され、発酵を早める速醸法を採用することによって、年間を通じて生産されるようになりました。

2. 味噌の種類

「手前味噌」というように、味噌は土地や作られる家庭によって味が様々です。
原料、色、味によって分類されます。

原料による分類

  • 米味噌:うるち米を原料とする「米麹」を用いる。国内で生産される味噌の8割が米味噌。
  • 麦味噌:大麦・裸麦などの麦を原料とする「麦麹」を用いる。西日本は甘口、東日本は辛口。
  • 豆味噌:大豆と塩のみで作られる。発酵作用が少ないため、色が濃く味も濃厚。中京地方が主な生産地。
  • 調合味噌:2種類以上の味噌あるいは麹を混合したもの。調味料をブレンドした赤だし味噌なども。

色による分類

熟成期間の違いによって、色が異なります。熟成期間が長いほど、色が濃くなります。

  • 赤味噌:赤褐色の色の濃い味噌で、コクがあって塩辛いです。八丁味噌、江戸甘味噌、仙台味噌など。
    1年以上熟成させます。
  • 淡色味噌:黄色みを帯びた味噌です。信州味噌など。
  • 白味噌:黄白色の薄い味噌で、米麹を多く使用するため、甘みがあります。西京味噌など。
    熟成期間は数ヶ月と短いです。

味による分類

麹の割合や塩加減により、味に違いができます。

  • 甘味噌:塩分6%前後で、麹の割合が多いのが特徴。関西地方の白味噌など。
  • 甘口味噌:塩分10%前後で、大豆の量よりも麹を多く使います。九州地方や瀬戸内沿岸の麦味噌など。
  • 辛口味噌:塩分12%前後で、麹の割合が少ない。仙台味噌や信州味噌、赤味噌など。

3. 成分と効用

「味噌は医者いらず」とも言われます。味噌は、豊富な栄養素を含み、健康に良い影響があると考えられています。

まず原料が大豆であることから、良質たんぱく質や食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルもバランスよく含まれています。大豆サポニンには抗酸化作用があり、老化防止や生活習慣病予防に役立ちます。大豆に含まれるレシチン、植物性ステロール、サポニンには血中コレステロール濃度の上昇を抑制する効果があります。コリンは肝臓の働きを助けてアルコールの排出を促すため、新年会などの二日酔いに味噌汁はうってつけです。
また味噌は発酵食品のため、味噌が発酵する過程で、大豆の栄養素が分解され、吸収されやすくなります。また、代謝を促進する酵素やビタミン、乳酸菌やオリゴ糖などの有効成分ができます。これらは腸内環境を整え、新陳代謝を高めたり免疫バランスを整えたりします。
さらに味噌汁には、タバコの害から体を守ってくれる働きも知られています。

その他の味噌の効能

  • 美白効果
    メラニンの合成を抑制し、シミ防止や美白効果があるとも言われています。
  • 生活習慣病予防
    抗酸化作用、コレステロール吸収抑制などにより、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの予防が期待できます。
  • 骨粗しょう症予防、老化防止
    味噌にはカルシウムが多く含まれます。また、大豆イソフラボンがホルモンバランスを整えます。

4. 味噌に関することわざ・慣用句など

「手前味噌」
自慢すること
「味噌をつける」
失敗して評判を落とす。面目を失う。
「塩も味噌もたくさんな人」
大切な物を沢山持っている優れた人
「味噌っかす」
一人前とみなされない人

味噌を使った健康に関わることわざ

「味噌は医者いらず」
「味噌の医者殺し」
「味噌汁は朝の毒消し」
「味噌汁一杯三里の力」
「医者に金を払うよりも味噌屋に払え」
「味噌と医者は古い方が良い」

5. 味噌上手は健康上手

「味噌は塩分が心配で...」という話を聞きます。しかし味噌汁はだしをしっかりとり、具を沢山入れると塩分は1杯1.2g程度です。カリウムや食物繊維の多い野菜や海藻を具にすると、塩分の体内吸収を防いでくれます。具沢山の味噌汁は最強の健康料理と言えるのです。味噌は遠い産地のものをブレンドするとよりおいしくなるので、自分好みの味を見つけるのも楽しいですね。味噌と上手に付き合うことで、今年も健康で素晴らしい一年になることを心よりお祈りします。

最後に、手作り味噌のレシピをご紹介します。

手作り味噌

手作り豆味噌

※東海地方で好まれる赤味噌の仕込み方です

手作り豆味噌

材料 作りやすい分量(出来上がり約5kg)
大豆(乾燥) 1.3kg
  大豆麹 500g
麦麹 500g
米麹 250g
粗塩 450~500g
種水(湯冷まし) 約500ml

作り方

  1. 大豆はよく洗ってたっぷりの水に一晩浸して戻し、指でつまんで潰れる位まで茹でます。

  2. 1.の大豆は熱い内にフードプロセッサーにかけるか、すり鉢やボウルに入れてつぶして冷まします。

  3. 別のボウルに麹3種を入れ、手で混ぜ合わせます。

  4. 大きなボウルや鍋などに2.の大豆と3.の麹、塩を混ぜて入れ、種水を混ぜながら手早く混ぜます。

    ※練り過ぎないように注意します
    ※塩は1割ほど残します

  5. 瓶や密閉容器に残した塩の一部を振り入れ、4.をソフトボール位に丸めてたたきつけます。

    ※空気が入らないように隅まできちんと詰めます
    ※隙間があるとカビの原因になります

  6. 表面を平らにし、上に塩を振って(ふた塩という)ラップを貼り、押しフタをして3kgほどの重石をのせます。空気にふれないようにして冷暗所で保管をします。

    ※ほこりが入らないように、紙をかぶせてヒモで縛ると良いでしょう
    ※重石をすると、上下の水分が均等になって上手に発酵し、空気にふれにくくなり、カビの発生を防ぎます
    ※夏頃に天地返しをする(上下を返すように全体を混ぜる)と早く熟成が進みます。
    その際に表面などにカビが生えていたら、その部分のみ取り除けば問題ありません
    ※11月頃から食べられますが、約1年間熟成させると、色・風味共によくなります

※麹は三重郡菰野町にある「鈴木商店」のものを使用しました

旬の食材大事典~今食べたいのはこの食材!!~
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