愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

お料理博士になろう!!~食材や食卓の基礎知識を学びます~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第7回:野菜について学びます(野菜博士になる!)

前シリーズでは「世界のとっておきグルメ」と題し、伊藤華づ枝が世界各国を食べ歩いて感動した料理や店をご紹介しました。
今シリーズでは、「お料理博士になろう!!」というテーマで、読者の皆様に食材や食卓の基礎知識をより詳しく学んで頂きます。米、小麦、野菜などの食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しています。

7回目のテーマは「野菜」。
食卓には欠かせないさまざまな野菜の特性や栄養素、調理法について、おいしいレシピとともにご紹介します。

1. 野菜の栄養特性

  • 野菜は水分含量がきわめて高いのが特徴です(90~95%)。
  • ビタミン類はDを除いて、ほとんどのビタミン類が含まれています。
  • タンパク質、脂質、炭水化物が少ないためエネルギー源にはなりません。しかし無機質、ビタミン類の供給源として重要です。
  • 生活習慣病を予防し、健康を維持するためには、1日350g以上の野菜を摂ることが推奨されています。平成24年国民健康・栄養調査結果によると、日本人は1日に平均286.5gの野菜を食べています。
    年齢階級別で見てもどの年代も350gに達していません。都道府県別に見た野菜摂取量の比較表によると、男女ともに350g以上だったのは長野県一県のみです。最も少ないのは、男女ともに愛知県で男性が243g、女性が240gです。
  • 1日3食で350g摂取しようとすると、1食あたり120gは必要です。生野菜なら両手に一杯、加熱野菜なら片手に一杯が目安とされています。
  • 野菜を1日に350~400g食べると、食物繊維も1日の目標量(18g程)をおおよそ摂取することができます。
  • 野菜には食物繊維も多く含まれます。
  • 尚、野菜がエネルギーに占める割合はわずか3.8%であり、極めて低エネルギー食品です。

【健康維持に必要な野菜類】
・抗酸化性
・活性酸素消去能
・抗変異原性
・抗発がん性
・血圧降下作用
などがあります。

2. 野菜の嗜好特性

  • さまざまな個性のある外観や野菜に含まれる緑、黄、赤、紫などの色が、料理の彩りを引き立てる・食欲を増進させます。
  • 野菜は糖質は少なく、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などを微量に含み、さわやかな味を持っています。
  • 「あく」といわれる苦味、えぐ味、渋味を与える成分を含みます。

料理に彩りを添え、見た目が楽しくなります。日本料理では、「色止め」・「色あげ」という素材の持つ自然色を保持するための工夫がみられます。

色止め・色あげ

  • 材料を色よく煮上げたり、色よくゆでること。
  • 特に緑色をいかしたい野菜は、火を止めてからも余熱で色があせるので、できるだけ手早く冷水に取ったり、うちわで扇いで冷まして色止めすることが大切です。

クロロフィル

  • 葉緑体に含まれる緑色色素のこと。
  • ほうれん草や小松菜、ブロッコリー・菜の花など緑色の野菜は、葉緑素(クロロフィル)という色素から作られています。
  • クロロフィルを多く含む野菜は、ビタミンCを含有することが多いのが特徴です。
  • 長時間の加熱や酸処理によって黄褐色になります。一方、アルカリ性の水で加熱すると鮮緑色になります。
  • ★ 野菜を熱湯に入れると一時鮮緑色になるのは、緑葉に含まれるクロロフィルが分解するからです。
 


菜の花


ほうれん草と鶏肉のカレー
~伊藤華づ枝作~

カロテノイド

  • 黄色、オレンジ、赤色を呈する色素のこと。
  • 緑黄色野菜では、クロロフィルと共存します。
  • プロビタミンAとも呼ばれます。
  • かぼちゃやにんじんの橙色の色素は、カロテノイド系と呼ばれる色素のαカロテン・βカロテン・γカロテンから作れられています。スイカやトマトの赤色は、リコピンという同じカロテノイド系の色素です。
    カロテノイド系色素には強い抗酸化作用があり、生活習慣病に良い効果を発揮します。
  • 油との共存によって体内に吸収されやすいので、カロテノイドを多く含む緑黄色野菜は炒め物や揚げ物に用いると効果的に栄養素を摂取することができます。
 

にんじん

にんじんの色素成分であるβカロテンは、体内でビタミンAに変わり、皮膚・口・目・のど・消化器官の粘膜を丈夫にしてバリア機能を高めます。
にんじんにはβカロテンだけでなく、αカロテンも多く含まれます。
βカロテンは、抗ガン作用に効果的で、最近の研究ではビタミンAが免疫細胞そのものを活性化させるとの報告もあります。


にんじんのオレンジマリネ~ナッツ風味~
~伊藤華づ枝作~

トマト

色素成分のリコピンは、強力な抗酸化作用でガンや動脈硬化を予防する効果があります。生食することが多いですが、短時間加熱して食べると、より効率よく栄養素を吸収することができます。


丸ごとトマトのシチュー
~伊藤華づ枝作~

フラボノイド

  • 無色または淡い黄色の色素のこと。
  • 白菜やカリフラワー、玉ねぎ、セロリなどに多く含まれます。このフラボノイド系色素は、ポリフェノールの一種です。抗酸化作用があり、血管を強くするなど、循環器系の病気を予防する働きがあります。
  • 酸処理で白色、アルカリ処理で黄色になります。
  • 白い野菜(カリフラワーなど)を茹でる時に、酢を加えると白く茹であがります。
  • 鉄製の包丁で玉ねぎを切って放置しておくと、茶色に変色します。


カリフラワー

アントシアン

  • なす、ブルーベリー、紫キャベツなどの紫色の色素のこと。
  • 酸性で紫色から紅色、アルカリで青色に変化します。加熱によって退色することがあります。
  • 赤カブや紫キャベツは酢漬けによって美しい赤色を示し、紫しそがうめの酸によって鮮やかな赤色となります。
    なすの漬物に鉄釘を入れると、美しい青紫色に安定します。
 


なす


赤かぶと紫玉ねぎ

 


赤かぶと柿の酢の物
~伊藤華づ枝作~


なすの辛煮
~伊藤華づ枝作~

ポリフェノール

  • 野菜にはポリフェノールが含まれていて、野菜を切ったり傷をつけると褐変(茶色になること)が起こります。
    ごぼうやうどを切って褐変するのはこのためです。

ファイトケミカル

  • 野菜の色が持つ抗酸化栄養素のこと。抗酸化とは身体をサビつかせたり、老化させないという意味です。
  • 研究者によって異なりますが、第6番目の栄養素は食物繊維をさします。
    (五大栄養素...炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)
    そして第7番目の栄養素が"ファイトケミカル"と言われています
  • ファイト...植物(ギリシャ語)
    ケミカル...化学物質
    ファイトケミカル...野菜や果物、豆類などといった植物にふくまれている化学成分のこと。
    ファイトケミカルは日本語で「植物由来の抗酸化栄養素」と呼ばれています。
  • 最近の研究ではファイトケミカルは、病気の予防に役立つ成分、健康の維持に欠かせない成分であることが判明しています。
  • 植物が紫外線や虫などの外敵から身を守るために作りだされたのが、ファイトケミカルです。苦みや渋みがあって、外敵に食べられるリスクが低くなります。

淡色野菜にも多いファイトケミカル

  • 白菜のような淡色野菜はこれまでは、にんじんやほうれん草といった色の濃い緑黄色野菜と比べると、栄養素が低いと考えられてきました。しかしファイトケミカルという新たな視点から見ると、白菜はガンに対して優れた効果を発揮します。
  • 白菜に含まれるファイトケミカル"グルコブラシシン"には、動物実験で乳がん・直腸がん・すい臓がんの増殖を抑制することが確認されています。
  • ワサビ、カラシ、マスタードに含まれるファイトケミカルは"カラシ油"と呼ばれる辛味成分です。これらは風味も利用法も大いに異なりますが、辛み成分自体は共通しており、抗菌作用に優れています。

ファイトケミカルの正しい摂取方法

  • ファイトケミカルは、五大栄養素と比べると吸収されにくい成分が多くあります。野菜などは生でなく、加熱して食べると効果的です。
野菜は加熱調理することで吸収率を高める
  • 野菜に含まれるビタミンは熱に弱いため、ビタミン摂取のために野菜をサラダとして生で食べる「生野菜信仰」が多くみられます。
    しかし、野菜の酵素を壊さずに生で食べたとしても、胃酸の働きで本来の働きは失われてしまいます。
    植物の酵素はタンパク質をもとに構成されているので、胃酸によって変性し、分解されます。生のままの野菜ではファイトケミカルは体に取り込まれにくい上に、カサが多くて大量には食べられません。
    両手いっぱいの野菜を生で食べるのはなかなか困難ですが、加熱すれば握り拳くらいの大きさにカサが減り、食べやすくなります。
  • 野菜などのファイトケミカルの多くは、食物繊維で出来た細胞膜や細胞の中に入っています。加熱すると、細胞膜や細胞が壊れるので、中に含まれていたファイトケミカルが外に出てきて体内に吸収されやすくなります。ファイトケミカルは安定的な物質が多いので、加熱しても成分が壊れて効力を失うことが少ないのです。
  • 野菜は調理することで、カロテノイドの吸収が高まります。いくら野菜を摂取しても吸収されなかったら、その価値は半減してしまいます。 サラダで野菜を摂取するようになって半世紀になりますが、日本人は古くから野菜を調理して摂取していました。日本人が野菜と果物を区別した大きな理由は、「調理する」ということではないでしょうか。
バランス良く食べましょう
  • ファイトケミカルの効能は多岐にわたりますが、特定の野菜や果物だけに過大な期待をかけないことが大切です。バランス良く食べましょう。

特徴的な野菜のゆで方

フキ


1. 板ずり(適切な長さに切り、塩をたっぷり振ってまな板の上でこすること)


2. 塩をつけたまま、たっぷりの熱湯でゆでる


3. 冷水にとって、美しい緑色を保つ

 
 


牛肉とふきのしょうが煮
~伊藤華づ枝作~

豆もやし


1. ひげ根を取る


2. 熱湯にたっぷりの塩を入れて1.を入れる

3. フタをして7~10分ゆでる
4. ザルに上げてそのまま冷ます

 
 


豆もやしのナムルが乗った石焼きビビンバ
~伊藤華づ枝作~

野菜を使ったおいしいレシピ

ゴボウの和風クリームスープ

エネルギー125kcal、たんぱく質2.3g、脂質7.7g、塩分 1.1g(1人分)

ゴボウの和風クリームスープ

材料 4人分
ブイヨン 600~700ml
  くず野菜 適宜
固形スープの素(チキン) 1個
800~900ml
ゴボウ 1/3~1/2本
玉ネギ 1/2個
バター(無塩) 20g
小麦粉 大さじ2
小さじ1/3
こしょう 少々
薄口しょうゆ 小さじ1/2
生クリーム 大さじ2
牛乳 50ml
粉山椒 適宜
作り方
  1. ニンジンや玉ネギなどのくず野菜とチキンコンソメを分量の水に入れ、2~3分程煮て漉し、ブイヨンを作ります。
  2. ゴボウはタワシでよく洗い、包丁の背で皮をこそげ取ります。5mm程の厚さの斜め切りにし、水にさらしてアクを抜きます。
  3. 玉ネギは粗みじん切りにします。
  4. 鍋にバターを溶かし、玉ネギを入れて色付かないようにじんわりと炒めます。
  5. 玉ネギから甘い香りがしてきたらゴボウを加え、全体にバターがまわったら小麦粉をまぶしつけます。
  6. 1.のブイヨンを600~700ml加えて沸騰させ、中弱火で10分程煮込みます(煮詰まりすぎたらブイヨンを足します)。
  7. 6.の粗熱を取り、ミキサーでピュレ状にして塩とこしょう、しょうゆで味を整えて生クリームを加えます。
  8. 別鍋に牛乳を55~60℃位に温めて細かく泡立て、スープにふんわりとのせます(生クリームをのせても良いです)。最後に粉山椒を振りかけます。

春野菜のはちみつピクルス

エネルギー110kcal、たんぱく質3.9g、脂質3.3g、塩分0.8g(1人分)

春野菜のはちみつピクルス

材料 作りやすい分量(4人分)
A 鶏手羽先 4本
800ml
くず野菜(玉ネギやニンジンなど) 適宜
ニンジン(細め) 1/2本
小玉ネギ 8個
カリフラワー 1/2株(正味260g)
ヤングコーン 10本
赤パプリカ 1/2個(正味70g)
カボチャ(種を取って) 1/6個
B オリーブ油 70ml
ブイヨン 200ml
純米酢 150ml
はちみつ 70ml
小さじ2・1/2
しょうゆ 小さじ1/2
砂糖 大さじ2
赤唐辛子(種を取って) 1本
ピンクペッパー 大さじ1/2
ローリエ 2~3枚
作り方
  1. 鍋にAを入れて火にかけ、沸騰したらアクを取り、20分以上中火で煮てブイヨンを取ります。
  2. ニンジンは皮をむいて7mm厚さの輪切り、小玉ネギは皮をむきます。
  3. カリフラワーは小房に分け、ヤングコーンはきれいに洗います。
  4. パプリカは種を取り、1cm幅の細切りにします。カボチャは7mm厚さのくし切りにし、500Wの電子レンジで2~3分加熱します。
  5. ボウルに(B)を混ぜ合わせます。
  6. 熱湯で2.を1分程茹で、3.を加えて更に2分をめどに再沸騰するまで茹でます。ザルに上げて水気をしっかり取り、熱いうちに5.に漬けます。
  7. 6.を保存ビンに入れて冷蔵庫で保存します。

カポナータ(イタリア風ナスのトマト煮)

カポナータ(イタリア風ナスのトマト煮)

材料 4~6人分(実習分量)
オリーブ油 大さじ5
にんにく(みじん切り) 小さじ1
ベーコン(1cm幅に切る) 3枚
玉ネギ(1cm角切り) 1コ
なす(1cm輪切り) 2本
ズッキーニ(1cm輪切り) 1本
赤パプリカ(1cm幅せん切り) 1コ
黄パプリカ(1cm幅せん切り) 1コ
白ワイン 50ml
完熟ホールトマト 1缶
バジル(粗みじん切り) 2枚
A 小さじ1・1/2~2弱
白こしょう 少々
白ワインビネガー(又は酢) 大さじ1
バジルの葉 適量
作り方
  1. フライパン又は厚手鍋にオリーブ油を入れ、にんにくをじんわりと炒めます。
  2. 1.にベーコンと玉ネギを入れて炒めます。
  3. 2.に残りの野菜を入れて、全体にオリーブ油をまぶすように炒めます。
  4. 3.に白ワインを入れ、じんわりとワインをしみこませたら、トマトを手でつぶして入れます。
  5. フタをして20分間程煮込みます。途中でバジルを加えます。
  6. 途中で(A)を加えて調味します。仕上げにワインビネガーで風味を付けます。
  7. 器に盛って、バジルの葉を添えます。

野菜たっぷりのキッシュ

エネルギー316kcal、たんぱく質10.5g、脂質22.9g、塩分1.6g(8切れ分としたとき1切れ分)

野菜たっぷりのキッシュ

材料 タンバル型18cm 1個分
ホウレン草 200g
玉ネギ 120g
マッシュルーム 8個
ベーコン(あれば塊) 50g
赤パプリカ 1/2個
黄パプリカ 1/2個
バター 15g
薄力粉 大さじ1・1/2
  固形スープの素(チキン味) 1/2個
大さじ2
小さじ1/2
白こしょう 少々
A 5個
生クリーム 150ml
牛乳 100ml
パプリカパウダー 少々
小さじ2/3
白こしょう 少々
プロセスチーズ 40g
冷凍パイ生地(20x20cm) 2枚
作り方
  1. ホウレン草は熱湯で茹で、水に晒して4~5cmに切ってから、水気をしぼります。
  2. 玉ネギは粗みじん切り、マッシュルームは4等分に切り、ベーコンは7mm角に切ります。パプリカは1cm角に切ります。
  3. フライパンにバターを敷き、玉ネギを入れてじんわりと炒めます。甘い香りがしてきたらベーコン、マッシュルームを加え、さらに炒めます。
  4. 3.にパプリカとほうれん草を加えて炒め、分量の小麦粉をまぶしてから、固形スープの素と分量の水を加えてサッと煮、塩とこしょうを加えてから味をみます。
  5. ボウルにAを入れ、塩とこしょうで味を整えます。
  6. 5.に4.を汁ごと入れてよく混ぜ、粗く刻んだチーズを加えます。
  7. 冷凍パイ生地は粉(分量外)を振ってのばして型に敷きます。表面にフォークで穴を開け、6.を入れます。
  8. 7.を180度のオーブンで40分焼き、160度に下げてさらに30分焼きます。

にんじんのオレンジマリネ

にんじんのオレンジマリネ

材料 4人分(実習分量)
にんじん 2本(300g)
小さじ1弱
オリーブ油 大さじ6
にんにく(みじん切り) 小さじ2/3
オレンジ(又ははっさくなど) 2コ
酢(穀物酢) 小さじ2
作り方
  1. にんじんはせん切りにし、分量の塩でもみます。※にんじんにふった塩は洗い流しません
  2. フライパンにオリーブ油を入れ、ごく弱火でにんにくがカリカリになるまで炒めます。
  3. オレンジは1/2コを、身を取って軽くほぐします。
  4. 残り1コ半のオレンジは、横半分に切って果汁を100mlしぼります。
  5. 1.へ熱々の2.を加え、少し冷めてから3.と4.と酢を入れて和え、手早く冷まして器に盛ります。

参考文献

  • 「第7の栄養素 ファイトケミカル~植物由来の抗酸化栄養素~」
    (著者:松田秀秋 発行所:ヘルス・凪文庫)
  • 「ガンにならない3つの食習慣ファイトケミカルで健康になる!」
    (著者:高橋弘 発行所:ソフトバンク新書)
  • 「続・野菜の色には理由がある」
    (著者:石黒幸雄、稲熊隆博、坂本秀樹発行所:毎日新聞社)
お料理博士になろう!!~食材や食卓の基礎知識を学びます~
このページの一番上へ