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インターネット公開文化講座

文化講座

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お料理博士になろう!!~食材や食卓の基礎知識を学びます~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第3回:「いも」について学びます(いも博士になる!)

前シリーズでは「世界のとっておきグルメ」と題し、伊藤華づ枝が世界各国を食べ歩いて感動した料理や店をご紹介しました。
今シリーズでは、「お料理博士になろう!!」というテーマで、読者の皆様に食材や食卓の基礎知識をより詳しく学んで頂きます。米、小麦、野菜などの食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介します。

第3回目のテーマは「いも」。
じゃがいもやさつまいもを始めとする身近な食材「いも」の栄養素、種類、調理法等について、美味しいレシピとともにご紹介します。

1. いも類の種類

日本で栽培されている主ないもは、じゃがいも、さつまいも、さといも、やまのいも、こんにゃく芋などです。
その中で生産量、消費量ともに多いのがじゃがいも、さつまいもです。

2. じゃがいも

地下茎に養分が蓄積され、肥大した塊茎を食用とします。
さつまいもに比べて糖分、繊維が少ないので甘味が少なく消化が良好。
いも類の中では貯蔵性に優れています。

じゃがいも

じゃがいもの栄養特性

  • じゃがいもの主成分はでん粉。
  • ビタミンB1とCが多い。
  • 特にビタミンCの残存率は高く、5ヵ月後も65%くらい残っています。
  • 加熱してもビタミンCの損失が少ないので、ビタミンCの供給源となります。

じゃがいもの成分(100gあたり)

じゃがいもの貯蔵

寒さに強いので貯蔵条件がよければ、かなり長期間貯蔵しても品質は変わりません。
貯蔵の最適温度は0.5~3℃。
この温度を保てば、芽が出にくく、じゃがいもの水分減少も少なくて鮮度が保たれます。

じゃがいもの性質

粉質性
特徴
でん粉含量が高い、まん丸い形
適した調理
粉ふきいも、マッシュポテト など
主な品種
男爵、農林1号
男爵
男爵
粘質性
特徴
煮崩れしにくい、粉をふきにくい、楕円形
適した調理
煮物、サラダ、炒め物、揚げ物、
煮込み料理(シチュー)
主な品種
メイクイーン、紅丸
メイクイーン
メイクイーン

じゃがいもの特殊成分

ソラニン
芽や緑色の皮の部分に含まれる有毒な配糖体。
芽の部分を除去し、皮をむくこと、または加熱することにより毒性が失われます。

褐変

切り口が空気に触れると褐変します。

チロシン(アミノ酸の一種)が細胞中に存在し、チロシナーゼ(酵素)によって酸化され、黒褐色の色素メラニンを生じるため。

<防止策>
水につける。

フライドポテトやポテトチップスを作る際の褐変
アミノ酸と糖によるアミノカルボニル反応。

<防止策>
低温貯蔵したいもは糖含量が多くなっているため、調理前2週間程室温で保存して糖を減少させるとよいです。

じゃがいもの調理のコツ

  • 粉ふきいも
    新いもは粘質のため、粉をふきにくいので粉ふきいもには適しません。
  • マッシュポテト
    熱いうちに裏ごすことがポイントです。
  • ポテトチップス
    薄切りにしたじゃがいもを2時間程食塩水につけ、190℃位の油で揚げる。

じゃがいもでんぷん(ばれいしょデンプン)

じゃがいものデンプンは、かたくり粉の代用として使われています。

<加工法>
じゃがいもを水洗いした後砕き、デンプン乳のみ取り出して精製し乾燥させる。

じゃがいもを使ったおいしいレシピ

ポテトサラダケーキ

エネルギー 272kcal、たんぱく質 7.8g、脂質 15.9g、塩分 1.7g (6人分としたときの1人分)

ポテトサラダケーキ

材料 4~6人分(実習分量)
じゃがいも
大3コ(800g)
小さじ1/2
きゅうり
1本
小さじ1/2
玉ねぎ
1/4コ
少々
スライスハム 4枚
ゆで卵 2コ
スイートコーン(粒状) 1/3カップ
A マヨネーズ 1/2カップ
小さじ1/3~
白こしょう 少々
フリルレタス 2~3枚
カリフラワー 1/2株
生ハム(又はロースハム) 6枚
きゅうり 1本
ピック 1~2本

作り方

  1. じゃがいもは皮をむき、1コを8~12等分にして水に晒し、水から茹でます。やわらかくなったらザルに上げて水気を切り、再び鍋に戻して粉をふかせ、水分をとばします。熱いうちに分量の塩を振り、すりこぎかマッシャーでつぶしてボウルに移します。
  2. きゅうりは小口切り、玉ねぎは短めのせん切りにしてそれぞれ分量の塩を振り、しんなりしたら水で洗い流して水気をしぼります。
  3. ハムは角切り、ゆで卵は1コ分の黄身を残して粗切り、コーンは水気を切ります。
  4. 1.に2.と3.、(A)を入れてさっくりと和えます。
  5. 底が抜けるケーキ型にラップを敷き、4.を詰めて形を作り、皿に取り出します。上にフリルレタスや茹でたカリフラワー、巻いた生ハム、黄身などを飾ります。
  6. きゅうりはピーラーで長い薄切りにし、ポテトサラダの周りに貼り付け、ピックで止めてリボンに見立てます。

※写真にはマイクロトマト、ベビーリーフ、食用花を添えました

3. さつまいも

歴史

日本へは16世紀に琉球に入り、種子島から薩摩(さつま)の国・鹿児島に伝えられました。
さつま芋は風水害の影響を受けにくく、荒れた土地でも良く育ったことから、その後の数々の飢餓をはじめ、戦中戦後の食糧難の時代に救荒食品として、人々の命を救いました。

特徴

さつまいも

  • 根の一部が塊根化したものを食用とします。
  • 他のいもに比べ、水分が少なく糖分が多いため甘味が強いです。
  • 貯蔵中に甘味が増します。
  • ゆっくり加熱したほうが甘味が増します。
    (電子レンジのような短時間加熱よりも、焼きいものように長時間、一定温度を持続するほうが甘くなります)
  • ビタミンC、繊維が多いです。

さつまいもの栄養特性

さつまいもの成分(100gあたり)

さつまいもの貯蔵

さつまいもは暖かい場所に適し、寒い場所では低温障害を起こします。
貯蔵は13~16℃が望ましいです。

特殊成分

ヤラピン:切り口から出る白色乳状の粘液。水に不溶で空気に触れると黒変します。

切り口の褐変現象

ポリフェノールオキシダーゼ(酸化酵素)がクロロゲン酸に作用し、キノン体を生じるため。

<防止策>
皮を厚めにむく。水につける。

さつまいもでんぷん

かんしょデンプンともいいます。
じゃがいもデンプンと同様につくられ、わらび粉の代用としても使われます。
春雨などの加工食品の原材料として使われています。

さつまいもを使ったおいしいレシピ

黒糖鬼まんじゅう

エネルギー 238kcal、たんぱく質 3.6g、脂質 0.7g、塩分 0.1g(1コ分)

黒糖鬼まんじゅう

材料 作りやすい分量
(6コ分)
さつまいも 250g
A 小麦粉 2カップ(220g)
ベーキングパウダー 小さじ1/2~2/3
少々
粉末黒砂糖 90g
230ml~

作り方

  1. さつまいもは皮をむき、1cm角位に切ります。水に晒してアクを抜き、ザルに上げます。
  2. ボウルに(A)と1.を入れてよく混ぜ合わせます。
  3. 蒸し器のサナに竹串などで穴をあけたクッキングペーパーを敷きます。2.を6等分に分けて流し入れ、15~18分間蒸します。(さつまいもに竹串が通るくらいまで蒸します)

4.さといも

さといも

短い地下茎が肥大した塊茎を食用とします。
葉は、ずいき(芋茎)と呼ばれ食用とされます。

里芋の芋茎を加工して、ずいきにする。

特徴

  • ぬめりやアクが強い。
  • アクはシュウ酸、ぬめりは糖たんぱく質。
  • 糖たんぱく質は胃の粘膜を保護する働きがあります。
  • ふきこぼれを防ぐため、湯でこぼしたり、食塩、食酢、ミョウバンなどを使用して粘性を低下させます。

手のかゆみ

針状のシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚を刺激するため、手がかゆくなります。

<防止策>
酢水につける。加熱する。

さといもの栄養特性

さといもの成分(100gあたり)ビタミンCは他のいもに比べて少ないが、水溶性の食物繊維の一種であるマンナンを含んでおり肥満、便秘予防につながる。ビタミンCは他のいもに比べて少ないが、水溶性の食物繊維の一種であるマンナンを含んでおり肥満、便秘予防につながる。

さといもを使ったおいしいレシピ

里芋と栗の煮物

エネルギー330kcal、たんぱく質13.8g、脂質11.2g、塩分1.6g※調味料(A)は80%可食で計算しました (1人分)

里芋と栗の煮物

材料 作りやすい分量
(実習分量)
鶏手羽元
(10cmぐらいの長さ)
ねぎ
しょうが
8本

適宜
適宜
しょうゆ 大さじ2
サラダ油 大さじ1
里芋 12コ(500g)
むき栗 12コ
鶏のゆで汁 600~700ml
A 大さじ2
砂糖 大さじ2
しょうゆ 大さじ1

作り方

  1. 熱湯に手羽元を入れ、ねぎとしょうがを加えて10分間程ゆでます。(ゆで汁は残しておきます)
  2. 1.の鶏肉だけをボウルに取り出し、分量のしょうゆで下味をつけ、10分間程おきます。
  3. 2.の鶏肉をペーパータオルで汁気をふき、残った汁と(A)を合わせておきます。
  4. 里芋は皮をむきます。
  5. 深めのフライパンに油を熱し、3.の鶏肉を入れて焼き付けるように炒め、1.のゆで汁と4.の里芋を加えて里芋が柔らかくなるまでフタをして煮ます。
  6. 途中で5.に栗を入れ、3.の調味料を加えて汁気がなくなるまで煮ます。
  7. 6.を器に盛ります。

5.やまのいも(長芋)

やまのいも(長芋)

山野に自生することからやまのいもと呼ばれます(さといもは里で栽培されます)。
生で食べることが出来ます。

特徴

  • 口あたりやのどごしの滑らかさなど特有の食感があり、いも類の中で唯一生食できます。
  • α-アミラーゼが消化を促進します。
  • チロシンを含むため、褐変しやすいので酢水に晒すと良いでしょう。
  • 強い粘弾性や起泡性を利用し、はんぺん、かるかん、まんじゅうなどが作られます。

褐変

チロシンを含むため、空気に触れて褐変や黒変します。

<防止策>
皮をむいたらすぐに、水または酢水につけます。

やまのいもの栄養特性

やまのいもの成分(100gあたり)

6.やまのいもの種類

自然薯

山野に自生し、長さ60cm程度。平たくよじれている肉質は緻密ですが、強く粘性が高いのが特徴です。

長薯(ながいも)

太い棒状で長いものは1m以上。水分が多く、肉質が粗いので粘りは少ないです。

捏芋(つくねいも)

捏芋(つくねいも)

形がつくねのような塊状で、肉質がしまり粘りが強く形も良いです。

銀杏芋(いちょういも)

平たく淡黄色のいちょうの葉形。肉質、粘質は長薯と捏芋の仲間。
銀杏芋(いちょういも)

やまのいもを使ったおいしいレシピ

麦めしとろろ

エネルギー 462kcal、たんぱく質 11.1g、脂質 1.2g、塩分 2.9g(1人分)

麦めしとろろ

材料 4人分(実習分量)
A 2カップ(400ml分)
押し麦 1/4カップ(50ml分)
600ml弱
大和芋 350g
B かつおだし 500ml
しょうゆ 大さじ2・1/2~3
みりん 大さじ1
小さじ1弱
糸のり 適宜

作り方

  1. (A)で麦ごはんを炊きます。
  2. 芋は皮をむいて卸し金ですり卸し、すり鉢へ入れて充分にすり混ぜます。
  3. 鍋に(B)を入れて煮立て、熱々のものを2.の芋が煮えないように少しずつ加えます。
  4. 1.に3.をかけ、お好みで糸のりを添えて召し上がります。

とろろの鉄板焼き

とろろの鉄板焼き

材料 2人分
長芋(正味) 100g
2コ
A だし汁 1/2カップ
小さじ1/3
しょうゆ 大さじ1/2
細ねぎ 2本
桜エビ 大さじ1
青のり粉 適宜
花かつお 適宜
少々

作り方

  1. 長芋はすりおろします。
  2. ボウルに卵を割りほぐし、1.を入れて(A)で溶きほぐします。
  3. 2.に小口切りのねぎと桜エビを加えます。
  4. フライパンに油を薄く敷き、3.を流し入れ、中弱火でフタをして蒸し焼きします。
  5. 焼き上がりに青のり粉と花かつおをふります。

7.その他のいも類

きくいも

きくいも

原産地は北アメリカ北東部。味は淡泊で甘味があります。
糖尿病予防などに効果があると注目されています(インシュリンと同じような働きをもつ成分が含まれています)。

菊芋のたまり漬け

菊芋のたまり漬け

材料 1本分
菊芋(正味) 700g
B たまり 100ml
みりん 50ml
赤唐辛子(種を取って) 2本

作り方

  1. 菊芋はよく洗い、汚れはスプーンなどで削ります。
  2. 1.を再度洗い、ペーパータオルで水気を取り、大きく切ります。
  3. ボウルに(B)を合わせ、2.を入れます。
  4. 密閉容器に3.を入れて冷蔵庫で保存します。
キャッサバ

いもデンプンが蓄積、肥大した地下茎部の塊根を食用とします。キャッサバから製造されたデンプンをタピオカといいます。

キャッサバ

こんにゃく

こんにゃくは、コンニャクの球茎を加工したものです。

こんにゃく

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