文化講座
第12回:豆について学びます(豆博士になる!)
前シリーズでは「世界のとっておきグルメ」と題し、伊藤華づ枝が世界各国を食べ歩いて感動した料理や店をご紹介しました。
今シリーズでは、「お料理博士になろう!!」というテーマで、読者の皆様に食材や食卓の基礎知識をより詳しく学んで頂きます。米、小麦、野菜などの食材の栄養素や調理法についての説明を、オリジナルレシピとともにご紹介しています。
第12回目のテーマは「豆」
「豆」の栄養素、種類、調理法等について、豆の美味しいレシピとともにご紹介します。
1. 豆の栄養
豆はタンパク質が多い!!
豆類全般に豊富に含まれているタンパク質は、約20種類あるアミノ酸の組み合わせで構成されています。
中でも、豆類には精白米に不足する必須アミノ酸のリジンやスレオニンが豊富に含まれている為、積極的に摂取したい食品です。
※必須アミノ酸... | 人間の体の細胞・酵素・ホルモンなどを形成するアミノ酸の中でも、体内で作る事ができず、食事から摂取しなければならないアミノ酸のこと。 |
豆には豊富なビタミン・ミネラルが含まれています!!
豆に含まれる代表的なビタミンとミネラル
・ビタミンB1... | 糖質を分解してエネルギーに変える。 ※ご飯の約10倍含まれています |
・カリウム... | 高血圧の原因となる過剰なナトリウム(塩分)を排泄させる。 ※豆の中でも特に、大豆に多く含まれています。 |
ビタミンB1・カリウムともに日本人に不足しがちな栄養素です。
2. 大豆
大豆の名前の由来
- 小豆(あずき)に比べて大きいという意味ではありません。
- 大豆は「大いなる豆」の意味から名づけられています。
- 「大いなる豆」とは、一番目という意味で大豆は豆の中で一番ということを意味しています。
(1)大豆の栄養成分の特徴
- イソフラボン:女性ホルモンに似た作用があります。
- サポニン:血中の中性脂肪が血管壁に付着するのを予防し、血中コレステロール値を下げます。
- レシチン:頭脳を活発にし、記憶力を高め、コレステロールが血管壁に沈着するのを防ぎます。
特徴
- 生大豆には、トリプシンインヒビター(トリプシンの消化作用を阻害する物質)やヘムアグルチニン(血液凝集素)が含まれますが、加熱するとこれらの有害たんぱく質は変性し、無毒化できます。
- 粒食すると消化率が低いものの、加工すると消化率が高くなります。
- 豆腐の「すだち現象」の防止には、0.5~1%の食塩水または1%でん粉糊液で加熱するとよいです。
(2)大豆の調理機能
- 強固な外皮におおわれているため、加熱調理に先立って浸水、膨潤させて加熱します。
- 吸水した大豆を加熱煮熟すると、青臭みが抑制され、特有の好ましい香りを生じます。
- 豆類には繊維が多く、組織も硬く消化が悪いので、消化をよくするためにきな粉、豆乳、豆腐、納豆、味噌、しょうゆなどに加工して利用されています。
(3)大豆の種類
黄豆
味噌、しょうゆの原料となります。
豆腐、納豆、ゆば、きな粉などの加工用にも使用されます。
青豆
うぐいす色のきな粉に加工します。
丹波の黒豆
産地:京都
品質に優れている。
(4)大豆の調理
【黒豆の煮豆】
鉄なべまたは古クギを用いる
⇒黒豆の皮のアントシアン色素が鉄イオンと結合し、鮮やかな黒色に仕上がります。
ふっくらぶどう豆
エネルギー224kcal、タンパク質13.3g、脂質7.1g、塩分0.5g(1人分)
材料 | 作りやすい分量 | |
---|---|---|
黒豆(丹波産) | 2カップ(300g) | |
A | 塩 | 小さじ2/3 |
水 | 1400ml | |
重曹 | 小さじ1/2 | |
砂糖 | 200g | |
しょうゆ | 大さじ1/2 | |
さびくぎ(あれば) | 10本 |
作り方
- 黒豆は洗ってかたいまま(A)と共に鍋に入れ、一晩おきます。さびくぎ又は鉄玉を入れると、黒豆の色がきれいに仕上がります。
いずれもお茶パック(又はガーゼで包む)に入れ、糸で縛って鍋の手に結び付けておくと、黒豆を傷つけにくく、取り出しやすくなります。 - 1.を中火にかけ、沸騰したらアクをすくいとりながら火を弱め、コトコトと3~4時間位ゆっくり煮ます。
- 2.の煮汁が少なくなったら、くり返しさし水をしてアクを取り、豆がやわらかく煮汁がひたひたになったら火を止め、そのまま一昼夜置いて味をなじませます。
3. 大豆を原料とした加工品
(1)しょうゆ
- 中国の豆醤から我が国で発達した調味料です。
- 蒸した大豆に麦を加えて麹カビをつけた後、食塩水を加えて熟成させたもろみから分離したものです。
(2)みそ
手作り豆味噌
※東海地方で好まれる赤味噌の仕込み方です
材料 | 作りやすい分量 (出来上がり約5kg) |
|
---|---|---|
大豆(乾燥) | 1.3kg | |
大豆麹 | 500g | |
麦麹 | 500g | |
米麹 | 250g | |
粗塩 | 450~500g | |
種水(湯冷まし) | 約500ml |
作り方
- 大豆はよく洗ってたっぷりの水に一晩浸して戻し、指でつまんで潰れる位まで茹でます。
- 1.の大豆は熱い内にフードプロセッサーにかけるか、すり鉢やボウルに入れてつぶして冷まします。
- 別のボウルに麹3種を入れ、手で混ぜ合わせます。
- 大きなボウルや鍋などに2.の大豆と3.の麹、塩を混ぜて入れ、種水を混ぜながら手早く混ぜます。
※練り過ぎないように注意します
※塩は1割ほど残します - 瓶や密閉容器に残した塩の一部を振り入れ、4.をソフトボール位に丸めてたたきつけます。
※空気が入らないように隅まできちんと詰めます
※隙間があるとカビの原因になります - 表面を平らにし、上に塩を振って(ふた塩という)ラップを貼り、押しフタをして3kgほどの重石をのせます。空気にふれないようにして冷暗所で保管をします。
※ほこりが入らないように、紙をかぶせてヒモで縛ると良いでしょう
※重石をすると、上下の水分が均等になって上手に発酵し、空気にふれにくくなり、カビの発生を防ぎます
※夏頃に天地返しをする(上下を返すように全体を混ぜる)と早く熟成が進みます。その際に表面などにカビが生えていたら、その部分のみ取り除けば問題ありません
※11月頃から食べられますが、約1年間熟成させると、色・風味共によくなります
(3)納豆
- 蒸し煮した大豆に「微生物」を繁殖させ、発酵作用によって成熟させたもの。
(4)テンペ
- テンペとは、インドネシア版の納豆。ゆでた大豆を発酵させて作ります。
(5)ゆば
- 濃いめにつくった豆乳を深さ7~8cmの容器に移し、沸騰しない程度に加熱すると表面に皮膜ができます。
この皮膜を竹の棒などですくい上げたものです。
(6)豆腐
木綿豆腐
- 一晩水に浸漬した大豆を加水しながら細かく粉砕、加熱し、これをろ過して豆乳に凝固剤を加え、凝固物を型箱に移し入れ、脱水形成したもの。
絹ごし豆腐
- 木綿豆腐より濃い豆乳に凝固剤を加え、型箱にいれて豆乳全体を凝固させたもの。
豆腐の加工品
- 厚揚げ
- がんもどき
(7)豆乳
- 大豆からたんぱく質を溶出させ、繊維質を除いたもの。
豆腐を使ったおいしいレシピ
柿とほうれん草の白和え
材料 | 作りやすい分量 4~5人分 |
|
---|---|---|
木綿豆腐 | 1/2丁(230g) | |
ほうれん草 | 100g | |
にんじん | 50g | |
しめじ | 100g | |
A | 酒 | 大さじ2 |
塩 | 少々 | |
柿(又は梨) | 1/2コ(100g) | |
B | 白ねりごま | 大さじ3 |
白みそ(西京みそ又はあわせみそ) | 30g | |
砂糖 | 大さじ1 | |
しょうゆ(あれば薄口しょうゆ) | 小さじ1 |
作り方
- 豆腐は充分に水に晒し、4等分に切ってペーパータオルで包み、重しをのせて水気を取ります(30分間程冷蔵庫で)。
- ほうれん草は塩茹でして水にとって芯まで冷やし、水気を絞って3cm長さに切ります。
- にんじんは短冊切りにし、2.と同じ鍋で茹でます。
- しめじはほぐしてサッと洗い、水でぬらした鍋にしめじと(A)を入れ、ふたをして中弱火で酒蒸してザルに上げ、手早く冷やします。
- 柿は小さいいちょう切り(又は短冊切り)にします。
- 1.をボウルにくずして入れ、泡だて器でよくほぐしてから(B)を入れます。
- 6.に2.~5.を入れて和えます。
※豆腐は1丁450gのものを使用しました
豆腐の夏野菜サラダ~中華ダレ~
エネルギー189kcal、たんぱく質9.4g、脂質8.9g、塩分1.8g(1人分)
材料 | 4人分 | 2人分 | |
---|---|---|---|
豆腐(絹) | 2丁(600g) | 1丁(300g) | |
きゅうり | 1本 | 1/2本 | |
赤パプリカ | 1/2コ | 1/4コ | |
黄パプリカ | 1/2コ | 1/4コ | |
長芋 | 100g | 50g | |
A | 酢 | 大さじ5 | 大さじ2・1/2 |
しょうゆ | 大さじ4 | 大さじ2 | |
砂糖 | 大さじ4 | 大さじ2 | |
ごま油 | 大さじ2 | 大さじ1 | |
しょうが(おろし) | 1かけ分 | 小1かけ分 |
作り方
- 豆腐は水にさらし、1丁を18等分の小角に切ります。
- 野菜は7~8mm角に切ります。
- 長芋も同様に小角に切り、酢水にさらしてぬめりを取ります。
- (A)を混ぜ合わせ、中華ダレを作ります。
- 器に1.を盛り、2.と3.をのせて4.をかけ、スプーンを添えます。
※写真には香草を添えました
4. あずき 《小豆》
(1)あずきの栄養成分の特徴
- 大豆と異なりデンプンが主成分です。
- 糖質54%、たんぱく質を約20%、食物繊維を約18%含みます。またビタミンB1も豊富です。
(2)あずきの調理機能
- あずきは、水に浸漬せずそのまま加熱することが多いです。これは水浸漬による吸水が少ないためです。
小豆は水浸漬をしても吸水率が他の豆と比べて低いのがわかります。
古い小豆はさらに吸水率が低下します。
(3)あずきの種類
- 大納言 長径0.9cm
- 中納言 長径0.8cm
- 少納言 長径0.6cm
- 青豆 長径1.2cm
春雨を使ったおいしいレシピ
麻婆春雨
材料 | 4人分 | |
---|---|---|
緑豆春雨 | 120g(1袋) | |
豚ひき肉 | 120g | |
A | しょうゆ | 大さじ1/2 |
酒 | 大さじ1/2 | |
にんじん(せん切り) | 80g(1/3本) | |
玉ねぎ(短いせん切り) | 100g(1/2コ) | |
えのき茸(1/2長さに切る) | 100g | |
ニラ(3~4cm長さに切る) | 100g(1束) | |
B | サラダ油 | 大さじ1 |
ごま油 | 大さじ1 | |
しょうが(みじん切り) | 10g | |
C | 豆板醤 | 小さじ1~ |
甜麺醤 | 小さじ2 | |
D | チキンスープ | 400ml |
しょうゆ | 大さじ1・1/2~ | |
砂糖 | 大さじ1/2 | |
塩 | 適量 |
作り方
- 春雨はボウルに入れ、ぬるま湯(水道の湯)でしんなりするまで戻します。5~6cm長さに切ります。
- ひき肉をボウルに入れ、(A)で下味をつけます。
- 野菜はそれぞれ適切な長さに切ります。
- フライパンに(B)を入れて、しょうがをじんわりと炒め、2.を加えてパラパラになったら(C)を入れて香りが出るまで炒めます。
- 4.に3.を加えて炒め、(D)と1.を入れて汁気が少なくなって春雨がやわらかくなるまで煮ます。お好みで香菜を添えます。
(4)あずきの調理
あん
- デンプン質の多い豆類(アズキ、ささげ、そらまめ、いんげんまめなど)を煮て砂糖を加え、さらに練りながら煮詰めたものをいいます。
- あずきを水洗、水切りした後加熱し、沸騰したらさし水(びっくり水)をしてさらに加熱し、次に沸騰したとき渋切り(ザルで水切り)し、やわらかくなるまで煮ます。
- *ビックリ水をすることによって中まで水が吸収しやすくなります。アクや渋みを除く効果もあります。
あんの種類
- 粒あん(豆が煮崩れないように仕上げたもの)
- こしあん(豆を煮て豆皮を取り除いてデンプン質だけにし、それに砂糖を加えて練り上げたもの)
- 白あん(白いんげんでつくる)
- うぐいすあん(アオエンドウで作る)
あんを使ったおいしいレシピ
おはぎ
エネルギー277kcal、たんぱく質5.9g、脂質0.8g、塩分0.4g(12コ分としたときの1コ分)
材料 | 作りやすい分量 (10~12コ分) |
|
---|---|---|
つぶあん | ||
小豆 | 300g | |
砂糖 | 300g | |
塩 | 小さじ1/4 | |
※市販のあんこを使用する場合は、固さをみて鍋で適当な固さになるまで練り上げてください |
つぶあんの作り方
- 小豆は洗い、水に浸して30分間ぐらいおきます。
- 1.を火にかけて煮立ったらザルに上げ、冷たい水で洗います。(びっくり水)これをもう1回繰り返します。
- 2.に3倍の水を加え、煮立ったら弱火にし、小豆が柔らかくなるまで水をさしながら煮ます。
- 3.に砂糖を2~3回に分けて入れ、最後に塩を加え、しゃもじのあとが出来るまで練り上げます。
- 4.をすりこ木でつぶしながら練り、バットに広げて冷まします。(約900gのつぶあんが出来上がります)
材料 | 作りやすい分量 (10~12コ分) |
|
---|---|---|
もち米 | 2カップ | |
水 | 400ml | |
塩 | 小さじ1/3 | |
つぶあん | 900g | |
※上記の分量で作ると900gになります |
作り方
- もち米(2合ではなく、200mlの計量カップで2杯分です)はよく洗い、水加減をして30分間程浸水し、炊く直前に分量の塩を入れて普通に炊きます。10~15分間程蒸らします。
- 1.をボウルに入れ、すりこ木で突くように練ります。
- 手に塩水をつけ、2.を10~12コの団子に丸めます。
- ラップの上につぶあんをのせ、3.を包みます。
※写真はゆでたよもぎの葉を入れた「よもぎおはぎ」です
5. その他の豆類
(1)いんげんまめ
- 成熟した種子は乾燥貯蔵して加工用とします。
- 若いさやはサヤインゲンとして用いられます。
- 煮豆、煮込み料理として用いられます。
- 甘納豆、白あん、和菓子等の原料にもされます。
(2)えんどう
- 乾燥種子及びグリンピースを食用とする種類と若いさや(サヤエンドウ)を食用とする種類があります。
(3)そらまめ
- 若さやが空に向かってつくので空豆といいます。
(4)ひよこまめ
- ひよこの頭に似た形をしているのでこの名がつきました。
- 乾燥品は一晩水に戻して料理に用います。
- カレー、スープ、サラダに用いられます。
(5)金時豆
(6)ビルマまめ
- インゲンマメに似ていて、主に白こしあんに使われます。
(7)ささげ
- 未熟なものはさやごと食べます。
- 成熟したものはアズキの代用として菓子、あんの材料になります。赤飯には古くからササゲが用いられました。