愛知県共済

インターネット公開文化講座

文化講座

インターネット公開文化講座

世界のとっておきグルメ

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第3回 スペイン王国(マドリード&バルセロナ&サンセバスチャン)

前シリーズでは、気軽に作れておしゃれなもてなしレシピ、盛り付けのコツ、器の選び方、テーブルセッティングなどをご紹介しました。
シリーズ19回目の今シリーズでは、「世界のとっておきグルメ」というテーマで、世界各国を食べ歩いて料理研究に余念のない伊藤華づ枝が、食べて感動した料理や店をご紹介しております。
家庭で作れる現地レシピも併せてご紹介します。

第3回目の今月は、「スペイン王国」です。

スペイン王国

スペインは、ヨーロッパ大陸の南西部に位置する立憲君主制国家です。
17の自治州に分かれており、アフリカ沿岸にも5つの領土があります。

スペイン料理は、スペイン固有の料理です。
地中海の海の幸とイベリア半島の山の幸の素材を生かした料理が多くあります。
2010年にはイタリア料理とギリシア料理、モロッコ料理と共に、地中海の食事としてユネスコの無形文化遺産に登録されました。

<基本情報>
■首都:マドリード
■人口:4,646万人(2016年)
■面積:50.6万km2(日本の約1.3倍)
■宗教:カトリック(国民の約7~8割)
■言語:スペイン語
■時差:マイナス7時間 スペインが正午のとき、日本は翌日の19時
(3~11月まではマイナス8時間、スペインの方が遅れています)

■通貨:ユーロ(€)1€=約¥130.3(2017年8月現在)

スペインの食事情

素材を生かした調理法

スペインは地方によって気候や風土の違いがあり、食材や調理法は様々です。

北西部:ガリシア・アストゥリアス・カンタブリア

カンタブリア海に面しており、豊富にとれる魚介類を使った料理が特徴です。
フランスに近いため、フランス料理に似た料理もあります。

伊藤華づ枝作 タコのガリシア
ガリシア地方のタコ料理。茹でたタコにパプリカパウダーと岩塩、オリーブオイルをかけた料理です

北東部:バスク・ナバラ・アラゴン

湿潤な気候のバスク地方は、山の幸が豊かでソースを多用する料理が多く見られます。
リオハはワインの産地で、ワインで煮込んだ料理も多くあります。

シードルハウス「アロレネア」
樽から直接シードルを飲むことが出来ます
2017年3月

中部:カスティーリャ

雨が少なく大陸性気候の地域です。
コシード(スペイン風の野菜や豆の煮物)やソパ・デ・アホ(にんにくのスープ)などが代表料理です。

伊藤華づ枝作 ソパ・デ・アホ
ソパはスープ、アホはにんにくを意味します

南部:エストゥレマドゥーラ・アンダルシア

ポルトガルに接する山岳地帯で、牧畜が盛んです。
各地でハモンセラーノ(生ハム)を作っています。

伊藤華づ枝作 ガスパチョ
「飲む野菜サラダ」と呼ばれる、トマトなどの野菜がたくさん入ったスープです

地中海沿岸:バレンシア・カタルーニャ・バレアス諸島

温暖な地中海性気候で、地中海の魚介類や野菜、果実などが豊富です。

伊藤華づ枝作 パエリア
肉や魚介と米を一緒に炊いた料理

バル料理が人気

バルとは、スペインの喫茶店や食堂、居酒屋を兼ねた飲食店のことを指します(イタリアではバールと呼ばれます)。
朝はコーヒー、昼は食事とビール・ワイン、夜はタパスやピンチョスと酒を提供します(主に夕食時に利用します)。日本では、スペイン風居酒屋を指します。

タパス

スペイン語のタパ(小皿料理・酒のつまみ)の複数形です。
タパは「フタ」という意味もあります。
その由来は飲み物を虫から守るために、パンやチーズなどの食べ物でグラスにフタをしたからと言われています。

ピンチョス

スペイン語のピンチョ(串)の複数形で、食材を串や楊枝でパンに刺して留めていたことに由来しています。
本来ピンチョスは、オープンサンドイッチ状のフィンガーフード(指でつまんで食べられる軽食)のことを指しますが、串刺しのつまみを呼ぶこともあります。

マドリード

スペインの首都で、スペインの中央に位置します。

バルの風景
下に落ちているのはペーパーナプキン
このペーパーがたくさん落ちている店ほど味が良く評判が高いのです
10~15年前

スペインを代表するフラメンコ
歌と踊り、ギターの伴奏を主体とする、民族舞踊です
手を打ち、足を踏み鳴らす激しい動きが特徴です
10~15年前

バルセロナ

マドリードに次いで、スペインで2番目に人口が多い都市です。
カタルーニャ州にある都市で、市場がいくつもあります。

サンタ・カタリーナ市場
地元の人が買い物をする市場で、新鮮でカラフルな野菜や鮮魚、最高級生ハムやチーズが並んでいました
中にはバルカフェがあり、スペイン料理を手軽に食べることが出来ます
2015年2月

伊藤華づ枝作 スペイン風ミートボールのトマト煮込み

サン・ジュセップ市場
地元の人からは「ボケリア」の愛称で呼ばれている、1836年創設のバルセロナ最大規模の市場です。現在は観光客向けの店が多くなっています
2015年2月

サグラダ・ファミリア
天才建築家アントニ・ガウディが建築を手がけ、120年以上たった今もなお建設中のバルセロナの教会です
2015年2月

レストラン「ポルチョス」
サグラダ・ファミリアの近くにあるレストラン
パエリアやブラックライス(イカスミのパエリア)を楽しむことが出来ます
2015年2月

レストラン「アルキミア」
ミシュランの星つきレストランで、斬新なアイディア料理が人気です
2015年2月

バル「セルベセリア・カタラナ」
バルセロナで1番美味しいタパスが食べられるバル(居酒屋)です。早い時間から、店の外にまで人が溢れていました
2015年2月

レストラン「カン・マジョ」
パエリアの有名店。フィデウア(パスタのパエリア)はカタルーニャ沿岸地域で人気の料理で、米を忘れた漁師さんが船の上で作ったのが始まりだという説があります
2015年2月

サンセバスチャン

スペインで近年人気の高い、著名な観光地です。
世界一の美食の街と言われています。
カンタブリア海からの豊富な海の幸と、スペイン北部の山々からの山の幸がもたらされ、食材が豊富です。
1970年代、フランスでは「ヌーベル・キュイジーヌ」というフランス料理の革命が起きました。
その立役者であるポール・ボキューズと親交を深めた、ペドロ・スビハナ(アケラーレのシェフ)と親友のファン・マリ・アルサック(アルサックのシェフ)は、スペインに食の革命を起こすことを決意し、「ヌエバ・コッシーナ・バスカ(新バスク料理)」を誕生させました。

レストラン「アルサック」
ヌエバ・コッシーナ・バスカを提唱した、ファン・マリ・アルサックのお店
1989年以降ミシュラン3つ星を守り続けています。アルサック氏と。
2017年3月

「美食倶楽部」
男性が料理の腕を振るう、会員制の料理倶楽部
スペイン料理界の父と呼ばれるルイス・イリサール氏が創業した料理学校です
アサリのパエリアやホワイトアスパラのソテー、春ポルチーニのソテーなどを習いました
2017年3月

伊藤華づ枝作 アサリのパエリア

ラ・ブレチャ市場
旧市街にあるサンセバスチャンの台所
屋内にあり、スーパーのように買い物が出来ます
2017年3月

バル「ゴリッティ」
ラ・ブレチャ市場の向かいにあるお店
タラのトルティージャが絶品です
2017年3月

伊藤華づ枝作 タラのトルティージャ

バル「ラ・ヴィーニャ」
焼き立てチーズケーキが人気のお店
2017年3月

伊藤華づ枝作 チーズケーキ(ラ・ヴィーニャのレシピをまねて)

バル「ベルナルド」
タコのガリシアやカメの手、エビなどの魚介類が得意のお店
2017年3月

伊藤華づ枝作 スペインバル料理

<再現レシピ>イカスミのクロケット

※クロケットとは、小さな丸い揚げ物料理のこと

材料 12~16コ分
ホタテ貝柱(冷凍) 5コ(150g)
玉ねぎ 1/2コ(120g)
マッシュルーム(白) 1パック(100g)
オリーブ油 大さじ2
 
A  
にんにく(みじん切り) 小さじ1/3
赤唐辛子(種を取る) 1本
 
小麦粉 70~80g
白ワイン 50ml
トマトソース 1缶(295g)
イカスミペースト 2袋(8g)
小さじ1/2~2/3
バジル(中葉) 4枚
小麦粉 適宜
 
1コ
大さじ1
 
パン粉(ドライ・細かめ) 適宜
揚げ油 適宜

作り方

  1. ホタテは1cm角に切ります。
  2. 玉ねぎとマッシュルームは粗みじん切りにします。
  3. フライパンに油を敷き、(A)をじんわりと炒めて良い香りがしたら、2.を加えて更に炒めて赤唐辛子を取り出します。
  4. 3.に1.のホタテを加えて炒め、小麦粉を入れてまぶしつけます。白ワインとトマトソースを入れます。
  5. 4.の汁の一部でイカスミペーストを溶いて入れ、しばらく煮てから塩と手でちぎったバジルを加え、フライパンごと氷水の上に浮かべて冷まします。
  6. 5.が冷えたら12~16等分にして手で丸め、小麦粉→溶き卵→パン粉の順につけ、油で揚げます。

※写真には青味を添えました

<再現レシピ>タコのガリシア

※タコを茹でて切り、パプリカパウダーと塩、オリーブ油をかけただけの簡単料理

材料 10人分
生タコ 1尾(2kg)
米ぬか 適宜
玉ねぎ 1コ
赤ワイン 200ml
じゃがいも 2kg
パプリカパウダー(あればスモーキータイプ) 適宜
岩塩(あればイビサの塩) 適宜
オリーブ油 適宜

作り方

  1. タコとぬかをビニール袋に入れ、ぬかでヌメリを落とすようにもみます。
  2. 1.のタコを水洗いし、タワシで吸盤に入ったぬかを出すように洗います。タコの頭をキッチンバサミで切って内臓を取り出します。目やかたい部分などは捨てます。足は2~3本ずつハサミで切ります。※大きな卵は一度茹でてからだし汁で煮て食べるとおいしいでしょう
  3. 圧力鍋に2.と半分に切った玉ねぎ、分量の赤ワインとひたひたの水を入れ、中強火にかけます。沸騰前にフタをして弱火で15分間加熱します。※沸騰させないように注意します
  4. 圧が下がったらフタを開けてかたさをみます。再度フタをして弱火で10分間加熱し、圧が下がるまでおきます。(タコの茹で上がり約700g)
  5. タコが冷めたら、薄切りにします。※茹で汁に浸けて一晩おくことも可能です
  6. 残った茹で汁に皮をむいたじゃがいもを丸ごと入れ、沸騰したらフタをして5分間加熱します。圧が下がったらフタを開け、粗切りにします。
  7. 器に6.のじゃがいもを敷き、5.のタコを盛ります。パプリカパウダーと岩塩を振ってオリーブ油をかけて召し上がります。
世界のとっておきグルメ
このページの一番上へ