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インターネット公開文化講座

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世界のとっておきグルメ

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第12回 エジプト・アラブ共和国

前シリーズでは、気軽に作れておしゃれなもてなしレシピ、盛り付けのコツ、器の選び方、テーブルセッティングなどをご紹介しました。
シリーズ19回目の今シリーズでは、「世界のとっておきグルメ」というテーマで、世界各国を食べ歩いて料理研究に余念のない伊藤華づ枝が、食べて感動した料理や店をご紹介してまいりました。
家庭で作れる現地レシピも併せてご紹介しました。

第12回目(シリーズ最終回)の今月は、「エジプト」です。

エジプト・アラブ共和国

エジプトは中東アフリカに位置する、共和国です。
北は地中海、南北に流れるナイル川がありますが、国土の9割以上が砂漠で、乾燥した厳しい気候です。
そのため、広い国土の中ほとんどの人がナイル川のほとりで暮らしています。
ナイル川はエジプトのシンボルで、「母なる川」と呼ばれています。

<基本情報>
■首都:カイロ
■人口:9,304万人(2017年)
■面積:100万km2(日本の約2.7倍)
■宗教:イスラム教・キリスト教など
■言語:アラビア語
■時差:マイナス7時間 エジプトが正午のとき、日本は同じ日付の19時(サマータイムはありません)
■通貨:エジプトポンド(EGP) 1EGP=約¥6.37(2017年9月現在)

エジプトの服装

エジプトはイスラム教が多いため、女性は頭からベールを被っている人を多く見かけます。
イスラム教の教えで「女性はみだりに肌を見せてはいけない」という意味の伝統的な服装です。

エジプトの女性
2008年3月

エジプトと言えば「ピラミッド」

ピラミッドとは、エジプトや中南米に見られる、四角錐状の巨石建造物の総称です。
ギリシャ語で三角形のパンを指す「ピューラミス」に由来するという説が有力です。
最も有名なのが、エジプトのギザの大ピラミッドです。
古代エジプトの人々は死後も現世と同じような生活をすると信じ、財産と共に生前と同じ食べ物や飲み物をピラミッドに副葬しました。
ピラミッドの壁画には、世界最初の発酵パン、世界最初のビールが作られていた様子が記されています。

ピラミッドとスフィンクス
2008年3月

ピラミッドの前で
2008年3月

スフィンクスとキスをする筆者。
スフィンクスはエジプト神話などに登場する、ライオンの身体と人間の顔をもった神聖な存在です。
2008年3月

ラクダに乗った筆者
日差しがとても強いので、ターバンを巻いています。
2008年3月

エジプトの食事情

エジプトでは、昼ごはんが1日の中で1番豪華です。
会社や役所に勤めている人は、午後1時過ぎになると仕事をやめて家に帰り、午後2時~4時くらいまで、ゆっくりと昼食をとります。
食べ終わったら、「カイルーラ」と呼ばれる昼寝の時間に入ります。

ナイル川と農業

エジプトの農業は今も昔もナイル川の水を使って行われます。
ナイル川が氾濫すると、豊作と言われています。
働いている人のおよそ30%が農業を仕事にしています。
ナイル川周辺の畑で栽培された野菜や、ナイル川の水で育てた羊や牛の肉を料理に使っています。
エジプト料理は、「ナイル川の恵みの料理」です。

代表的な作物:小麦粉・そら豆・さとうきび・ナツメヤシ・米・綿花など

熟したナツメヤシの実が、宿泊したホテルの朝食で出ました。
2008年3月

エジプトで売られているナツメヤシのお菓子

主食はパン

エジプト人は「パン食い人」と呼ばれる程、パンが大好きです。
アエーシと呼ばれる、ピタに似たパンが食べられています。
精白した小麦粉や全粒粉、コーンミールのパンなどの種類があります。

アエーシ(エジプトのパン)を頭の上に乗せて売り歩いている人
2008年3月

アエーシは丸形のパンで、中に何か挟めるようになっています。
2008年3月

石器時代から食べられている豆料理

石器時代のナイル川では8月の大洪水で川の水が氾濫したその後、8月~1月頃までの半年は、その水で農業を行い、新鮮な野菜や果物を作っていました。
そして、半年が終わると、農作物が収穫出来なくなる為、長く保存できる乾燥豆を食べていました。
その後、エジプトの人々は豆をたくさん食べるようになりました。

4600年前のピラミッドからレンズ豆が発見されています。
3300年前のツタンカーメンの墓からは、そら豆が発見されています。
現在でも、朝食のメニューに、そら豆の煮込み(フール・ミダンミス)はかかせません。

古来からエジプトで好んで食べられてきた、白いんげん豆から抽出されるファセオラミンという栄養素は、現在、美容やダイエットのサプリメントにも使用されています。
栄養が豊富なことから、「豆の王様」とも呼ばれています。

レストラン「フィッシュボード」
ナイル川を眺めながら、食べたエジプト料理
2008年3月

ホンモス(ひよこ豆のペースト)
2008年3月

伊藤華づ枝作・アエーシ(エジプトのパン)とホンモス(ひよこ豆のペースト)

ショルバド・アッツ(レンズ豆のスープ)
2008年3月

コシャリ
マカロニと短いパスタ、ご飯、レンズ豆の上にソースとオニオンフライをのせたファストフード。
2008年3月

肉料理

イスラム教の国であるエジプトでは、豚肉を食べることはご法度です。
エジプト人が食べる肉類:羊、牛、鶏、鳩など

ハマム・マシュウィ(鳩のグリル)
食べられる身の部分は少ないです。
2008年3月

ハマム・マフシー(米を詰めた鳩のグリル)
2008年3月

ワラッ・アエナブ(ブドウの葉包み)
米と香辛料、羊の肉などを混ぜ合わせ、ブドウの葉で巻いて煮込む料理。
2008年3月

コフタ(細長いミートボール)
羊のひき肉を肉団子にし、香辛料をつけて焼いたものです。
2008年3月

野菜料理

なすやズッキーニ、ピーマン、アーティチョーク、トマト、キャベツなど様々な野菜を食べます。
中でも「モロヘイヤ」はアラビア語で、エジプトの方言から呼ばれるようになりました。

モロヘイヤスープ

モロヘイヤのスープ
2006年3月

エジプトの家庭で、モロヘイヤスープの作り方を習いました。
2008年3月

伊藤華づ枝作・モロヘイヤスープ

マハシ

なすやズッキーニ、ピーマンなどをくり抜き、米と玉ねぎ、ハーブなどを詰めた料理のことです。

エジプトの家庭で、マハシを習いました。
2008年3月

伊藤華づ枝作・マハシ

エジプトの食卓の様子
手食しました。
2008年3月

市場(スーク)

カイロを始め、エジプトの都市には、多くの市場(スーク)があります。
野菜やフルーツだけでなく、肉や魚、スパイス、お菓子、洋服、日用品など、様々なものが売られています。

エジプトの市場の様子
2008年3月

ロバに乗って街を移動していました。
2008年3月

エジプトの子供たちと
2008年3月

ルクソール

中王国時代(紀元前2200年ごろ)に国内を統一する首都となり、最盛期には100万人もの人口を誇ったと言われています。
ルクソール周辺の都市は、ナイル川流域の肥えた土地に恵まれたため、古代から農耕が行われてきました。
町はナイル川を挟んで東側は「生者の都」、西側は「死者の都」と呼ばれており、今でも東側にはホテルやレストラン、商店が多く並んでいます。

ルクソール西岸にある、ハトシェプスト女王葬祭殿
2008年3月

ルクソール神殿の大列柱廊とラムセス2世の座像。
ルクソール神殿は、絶世の美女クレオパトラと、ローマの英雄シーザーが共に訪れたと言われています。
2008年3月

<再現レシピ>マハシ

※中に詰める具は米だけでなく、少しひき肉を入れるとうま味が出て、美味しいでしょう

材料 4人分
ズッキーニ 2本
なす 1本
ピーマン 4コ
トマト 1コ
オリーブ油 大さじ1・1/2
にんにく(みじん切り) 1かけ
玉ねぎ(みじん切り) 1/2コ
米(洗って30分間浸水したもの) 1/2カップ
ディル(生) 1本
 
A  
小さじ1/2
黒こしょう 少々
チリペッパー 小さじ1/4
 
牛ひき肉 50g
鶏もも肉(1枚・250g) 2枚
小さじ1/3
黒こしょう 少々
オリーブ油 大さじ1
 
B  
トマトソース 1缶
400ml
 
小さじ1弱
チリペッパー 少々

作り方

  1. ズッキーニとなすは1本をそれぞれ4等分に切り、中をくりぬきます。
  2. ピーマンはヘタの部分を切り、種を出します。
  3. トマトは角切りにします。
  4. フライパンに油を入れ、弱火でにんにくを炒め、良い香りがしたら玉ねぎも加えて炒めます。
  5. 4.に洗った米を加えて炒め、刻んだディルと3.を加え、更に炒めます。
  6. 5.を(A)で調味し、ボウルに移していったん冷まします。
  7. 6.に牛ひき肉を加えて手でこね、1.と2.に詰めます。
  8. 鶏肉は1人3切れ当てに切り、塩とこしょうで下味をつけます。
  9. フライパンに油を入れ、8.を中火でじんわり焼き、ひっくり返して焼きます。
  10. 9.のフライパンに7.も並べて(B)の調味料を入れ、20~25分間程煮ます。
  11. 最後に塩とチリペッパーで味を整えて、器に盛ります。

※写真にはディルを添えました

<再現レシピ>ホンモス

※ひよこ豆のペーストで、パンにつけて食べます

材料 4人分
ヒヨコ豆(乾) 150g
 
A  
レモン汁 大さじ2・1/2
にんにく(すりおろし) 小さじ1/4
オリーブ油 大さじ3強
ねりごま 大さじ2
白こしょう 少々
小さじ3/4
豆のゆで汁 50ml
 
オリーブ油 適宜
アエーシ(又はナン) 4枚

作り方

  1. ヒヨコ豆をひと晩、水につけておきます。
  2. 1.をザルに上げ、鍋にヒヨコ豆とたっぷりの水を入れ、沸騰するまでは強火で煮ます。沸騰したら中火で60分間程煮ます。(圧力鍋を利用しても良いでしょう)
  3. 2.の豆が柔らかくなったら、豆をザルに上げ(豆のゆで汁は使用します)、皮をむきます。
  4. 飾り用の豆を8粒取り除き、残りをフードプロセッサーにかけます。
  5. 4.に(A)を入れ、ペースト状になるまでフードプロセッサーにかけます。
  6. 5.に器に盛り、残しておいた飾り用の豆を上にのせ、オリーブ油をかけます。パンにつけて召し上がります。

※(A)には少し甘みを加えても良いでしょう(砂糖、蜂蜜など)

次シリーズは、「料理の雑学博士をめざす」というテーマです。食材の基礎知識から、専門用語までを徹底追及して、筆者と共に料理博士をめざしましょう。

引き続きのご愛読をお願い申し上げます。

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