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インターネット公開文化講座

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日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~

郷土料理研究家
栄中日文化センター提携 インターティアラ・お料理サロン 主宰
伊藤 華づ枝

第4回:関東その(2)

 前シリーズでは「発酵食品の魅力にせまる」と題し、代表的な発酵食品を毎月順番に取り上げ、その特徴や健康効果、おすすめの料理をご紹介しました。今シリーズでは、筆者が全国各地を食べ歩いて研究した郷土の味、その土地の人々から愛されてきた逸品を、作りやすいレシピにしてご紹介しています。

第4回目の今月は、関東その(2)「茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・神奈川」です。

1.関東地方

茨城県

  • 面積:6,095.72km2
  • 人口:2,933,686人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:水戸市

群馬県

  • 面積:6,362.33km2
  • 人口:1,984,710人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:前橋市

千葉県

  • 面積:5,156.61km2
  • 人口:6,192,351人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:千葉市

栃木県

  • 面積:6,408.28km2
  • 人口:1,987,072人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:宇都宮市

埼玉県

  • 面積:3,798.08km2
  • 人口:7,221,179人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:さいたま市

神奈川県

  • 面積:2,415.85km2
  • 人口:9,081,005人(2013年9月現在)
  • 県庁所在地:横浜市

2.関東地方の食文化

 東京を中心とした関東と、大阪を中心とした関西では、同じ料理でも調理法や味などが異なることは前回も記しました。特に違いが分かるのが「寿司」・「天ぷら」・「うなぎ」ですが、だしや桜餅の形状、しょうゆなどにも違いがみられます。
 特に関東では、調味料のしょうゆやみそを製造しているメーカーが多い事が知られています。

3.関東地方の名産品と郷土料理

関東地方には数多くの名産品がありますが、ここではその一部を紹介します。

☆茨城県

あんこう鍋

あんこう鍋は、「キアンコウ(ホンアンコウ)」を主な具材とする鍋料理です。
『西のふぐ鍋、東のあんこう鍋』と言われ、冬の代表的な高級鍋料理として東日本で広く食べられています。
特に茨城県の鍋料理として、多くの店で提供されています。
あんこうは深海魚で水圧に耐えられるよう、体が柔らかくできています。
その為、まな板の上で捌く事が難しく、「吊し切り」と呼ばれる独特な方法で捌かれます。
下顎に鉤状のものをかけてアンコウを吊し、アンコウを回転させながら捌く方法で、今でも大洗ホテルや一部の食事処では、吊し切りを見る事ができます。
身だけでなく、皮や水袋(胃)、キモ(肝臓)、ヌノ(卵巣)、えら、トモ(ヒレ)なども食用にされ、捨てるところがない魚といわれています。

水戸を代表する料亭「大洗 山口楼(東茨城郡大洗町磯浜町8249-4)」で筆者が食べたあんこう鍋(1990年12月)

〈愛知県名古屋市であんこう鍋を楽しむならココ!〉

★日本料理「得仙」(名古屋市中村区名駅5-25-6)

1922年(大正11年)創業、季節ごとに旬の素材の鍋が楽しめる、知る人ぞ知る名店です。
各界の名士も御用達で、いつも予約でいっぱいのため、何年もかかって予約をとりました。
一度訪問した人が翌年の予約をして帰るため、新しい予約が取りにくいことでも知られています。

日本料理「得仙」の前での筆者

得仙で筆者が食べたあんこう鍋10人分の食材(1990年3月)


☆群馬県

(1)下仁田ねぎ

群馬県下仁田町の特産品です。
他の品種のねぎに比べて太く、生のまま食べると非常に辛いのですが、加熱する事により甘みが強くなります。すき焼きや天ぷらなど、様々な料理に使われます。
筆者はバターでこんがり焼き、とろとろになったら軽くしょうゆをかけて食べるのが好きです。

下仁田ねぎ

下仁田ねぎのバターじょうゆ焼き


(2)こんにゃく

こんにゃくの原料となる国内産こんにゃくいもの約90%が、群馬県で収穫されています。
「からっ風とかかあ天下と上州こんにゃく」といわれる程、下仁田のこんにゃく料理は有名です。

☆埼玉県

うなぎ

利根川の天然うなぎは「旅うなぎ」といい、味の良さで珍重されてきました。
うなぎの蒲焼きは浦和が発祥の地とされています。
浦和には数々のうなぎの店がありますが、筆者が訪れた「川魚料理・うなぎ萬店」は1886年創業の老舗です。
初代の名が萬蔵で、萬蔵の店という事で『萬店』の名がつきました。
うなぎの他にも鯉・鯰・どじょうなどの川魚が堪能できます。

さいたま市内「川魚料理・うなぎ 萬店(さいたま市南区鹿手袋1-2-26)」の玄関前での筆者

「萬店」の料理写真(1991年5月)


☆千葉県

(1)落花生

千葉県で生産されている落花生は、国内生産の約7割を占めています。
畑でゆっくりと自然乾燥された千葉県産の落花生は、味の良さで消費者から強い支持を得ています。
落花生の名前の由来は、地上にある枝に咲いた花の基部から子房柄が伸び出して地中にもぐり、土の中で実が育つ為、「花が落ち豆が誕生する」事から付けられました。

(2)太巻き祭り寿司

太巻き祭り寿司は、千葉県の代表的な郷土料理です。
単に「太巻き寿司」と呼ぶ事もありますが、他に「房総巻き」・「飾り巻き寿司」・「花寿司」など様々な名前で呼ばれています。
冠婚葬祭などのご馳走として食べられます。
地域や家庭によって絵柄も違い、切り口が金太郎飴のように華やかで楽しめるようになっていて、もてなし料理にも使用されています。

筆者が作成した花寿司

☆神奈川県

(1)オーベルジュ・オーミラドー

1986年創業。オーベルジュとは、フランス語で「レストラン付き料理旅籠」を意味します。
食材にこだわり、春の山菜、夏野菜、秋の茸、冬のジビエと、旬の料理が楽しめます。

「オーベルジュ・オーミラドー(足柄下郡箱根町元箱根159-15)」での筆者

日本で最初のオーベルジュを開業した勝又登シェフと筆者(1994年11月)


(2)けんちん汁

大根やにんじん、ごぼう、里芋、豆腐をごま油で炒め、だし汁を加えて煮込んでしょうゆで味を調えた、すまし汁です。
元々は精進料理なので、肉などの動物性たんぱくは入れず、だし汁もかつお節や煮干ではなく、昆布と椎茸から取ったものを使っていたようですが、現在は旨みがあるかつお節を使います。
けんちん汁の名前の由来には、鎌倉にある建長寺の修行僧が作っていたため、「建長汁」がなまって「けんちん汁」になったといわれる説、普茶料理の巻繊(野菜を刻み、豆腐を混ぜて炒め、湯葉で巻いて油で揚げた料理)がアレンジされ、けんちん汁になったという説などがあります。

(3)小田原の蒲鉾

ちん里う本店(小田原市栄町1-2-1小田原駅前ビル1階)の入り口での筆者(2012年5月)

小田原で蒲鉾作りが盛んになったのは、220年くらい前の天明年間だと言われており、この頃は沿岸漁業が盛んで、たくさんの魚が獲れたところから加工されたと考えられます。
獲れた魚の保存方法として蒲鉾が生まれたのでしょう。


小田原 籠清・小田原駅前店(小田原市栄町1-2-9)の入り口での筆者(2012年5月)

鈴廣・小田原駅前店(小田原市栄町1-3-15)の店内での筆者(2012年5月)


小田原で3店舗の蒲鉾屋さんへ行き、食べ比べをしました。
それぞれの店に、その季節ならではの蒲鉾やおでん用の練り製品が販売されていました。

(4)富士屋ホテル

富士屋ホテル(足柄下郡箱根町宮ノ下359)の入り口での筆者

明治11年(1878年)7月15日、日本で初めての本格的なリゾートホテルとして開業し、一時期は外国人を対象としたホテルを目指し、外国人客専用のホテルであった時代もありました。
富士屋ホテルの名は、富士山が外国人にとっての美の象徴であることと、かつてこの地で500年もの歴史を持っていた温泉旅館「藤屋」の名前をもとに名付けられました。


ホテル内レストラン「ザ・フジヤ」の前での筆者

富士屋ホテル伝統のビーフカレー


1964年1月、今上天皇(現在の天皇が当時は皇太子殿下だった際)が訪問された際にもお召し上がりになった、贅沢にコンソメを使用して4日間かけて煮込み、さらに2日間寝かせたこだわりのカレー
(2011年1月)

1994年6月にも訪れています

(5)横浜中華街

幕末に全国に先駆けて開港された横浜は、文明開化や海外文化の流入口となりました。
パン・ビール・アイスクリームなど、日本で最初に製造されたものが横浜には多くあります。
中でも中国料理が根付いたわけは、開港以来、西洋人が未知の日本へ訪問するために、隣国の中国人を仲介者として伴ったためと言われています。

横浜中華街(横浜市中区山下町一帯)入り口前での筆者(2006年12月)

横浜中華街有名店の焼売(2013年10月)

4.関東の郷土料理レシピ

帆立シューマイ

横浜中華街のシューマイと同じくらい美味しい!

エネルギー33kcal、タンパク質2.7g、脂質1.1g、塩分0.3g(1コ分)
材料(12コ分) 分量
帆立て貝柱(缶詰) 1缶(80g・固形量)
玉ねぎ 1/2コ(80g)
片栗粉 大さじ2
 
A  
豚ひき肉 80g
おろししょうが 少々
ごま油 小さじ1
小さじ1/2
しょうゆ 小さじ1
こしょう 少々
 
シューマイの皮 12枚
レタス 適宜
しょうゆ 適宜
溶きからし 適宜

作り方

  1. 帆立て貝柱は汁気を軽く絞ってほぐし、1/3量はトッピング用に残しておきます。玉ねぎはみじん切りにし、片栗粉をまぶします。
  2. (A)をボウルに入れてよく練り混ぜ、1.の帆立てと玉ねぎを加え、さらに練り混ぜます。
  3. 2.をシューマイの皮で包み、残しておいた帆立てを上に散らします。
  4. オーブンペーパーを敷いた蒸し器のサナに3.をのせ、強火で8~10分間蒸します。
  5. レタスは太めのせん切りにして共に蒸すか、シューマイの後でサッと蒸します。
  6. 器に4.と5.を盛り、からしじょうゆを添えます。
紅白かまぼこ~結び・うさぎ~

小田原名物の蒲鉾を飾り切りで楽しむ

材料 作りやすい分量
白かまぼこ 1本
紅かまぼこ 1本
ストロー 1本

作り方

<結び・12コ>
  1. 白かまぼこは1本を12等分にし、両端に互い違いに切り目を入れ、真ん中に短い切り目を入れます。
  2. 両端の2本を下と上から真ん中の穴に通し、結ぶようにして形を整えます。
<うさぎ・8コ>
  1. 紅かまぼこは1本を8等分にし、山の部分を5mm程、7分目まで切り込みを入れます。
  2. 1.の先端を目用に1cm程切り離し、短く切ったストローで抜いて赤目を作ります。
  3. ストローで目の穴をあけ、2.の赤目をはめ込み、耳を丸めます。
日本全国食べ歩き~郷土の味を求めて~
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